消費者はどう選択するか ゲノム編集技術応用食品の現状と課題

2022年9月21日

パルシステム連合会は8月4日(木)、東京・東新宿本部で、北海道大学教授・石井哲也氏を招きゲノム編集技術応用食品に関する学習会をオンラインにて開催し、組合員や役職員など約510名が参加しました。

パルシステムはゲノム編集技術応用食品に対する方針策定を進めており、国内外の現状や課題に加え、消費者としてどう向き合っていくか、また、いろいろな議論や行政や企業への働きかけなども重要であることを学びました。

パルシステム連合会商品委員会・樋口民子委員長(パルシステム埼玉理事長)は、「国内でゲノム編集食品が流通し始めているが、2019年にも講演いただいた石井先生から最新の状況も伺い、方針策定への議論を深めていきたい」とあいさつしました。

ゲノム編集技術の問題点と日本の状況

石井教授は、遺伝子組換え食品はカルタヘナ法で一定の規制や管理されているが、現在届け出されているゲノム編集食品は合意された評価体系や法律での規制がなく、リスク評価や管理の確立が不十分と指摘します。事業を行う場合の申請手続きも、安全性や環境リスクなどのデータは法に基づく命令でなく要請に近いこと、データは事業者の検査に依存、遺伝子組換えは動物の組換えがほとんどないが、ゲノム編集は届け出というやわらかい対応で動物についても推進の方向性であることなども懸念します。

「日本は遺伝子組換え輸入国で、国産品を選べばそれを回避できると言えるが、ゲノム編集され届け出されたものはすべて国産なので回避が難しい状況が生まれている。また、ゲノム編集で害虫抵抗性などを付与した有機農産品が登場する可能性もある」と話しました。

 

北海道大学・石井哲也教授

消費者はどう向き合うか

ゲノム編集食品は表示されないため、現状では様子見するか食べるかを自分で判断するしかないと石井教授は言います。

「令和2年に厚労省が作成したゲノム編集食品啓発パンフレットには、オフターゲットについて健康への悪影響が問題になる可能性は低いとしているが、低い根拠やデータが示されていない。こういうものを作って配布しているのは信じがたい」と疑問を呈しました。

さらに、「ニュージーランドやEUは社会問題として議論が沸騰した。リスク評価や管理の確立などは徹底的に大事だと思うので、日本でも行政や議員などに働きかけ国会の場で議論してもらい、法制化されるように働きかけていく必要があると思う。消費者のみなさんから声を上げていただくことも大事なのではないか」と投げかけました。

「ゲノム編集食品」が食卓に上る日。本当に規制は必要ないのか? 北海道大学教授・石井哲也さんに聞く|生協パルシステムの情報メディアKOKOCARA

現在ゲノム編集食品は表示義務のないまま一般流通やふるさと納税の返礼品、小学校や福祉施設などへの無償配布などメデイア報道がされています。パルシステムはゲノム編集食品について、組合員の選ぶ権利を守るために、すべての食品に表示や届け出の義務化を求めていくことを方針に据えています。

パルシステム連合会常務執行役員・商品開発本部長・辻正一は、「ゲノム編集食品を判断して選ぶのは組合員で、表示があればそれが可能となる。パルシステムは引き続き表示や安全性の審査や情報の公開などを求めていく。また、原料確認は困難を極めるが、産地や取引先にも理解を求めて協力して進めて行きたい」と述べました。

 

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