「ほんもの実感!」連続講座  ゲノム編集食品のいま

2021年7月26日

パルシステム連合会は7月1日(木)、東京・東新宿本部で、第2回「ほんもの実感!」くらしづくりアクション連続講座「ゲノム編集に関するオンライン学習会」を開催しました。基礎知識、科学的な見地からの問題点、現在の状況、およびパルシステムの考え方などを学びました。

パルシステムでは「私たちの“選ぶ”が社会を変える力に」と「ほんもの実感!」くらしづくりアクションに取り組み、商品や作り手、その背景を知って無駄なく使うことを進めています。

現在ゲノム編集食品は表示義務のないまま流通の段階にまで来ています。2019年の組合員アンケートでは「食べたくない」が70%という懸念や不安に応えるため、安全性の審査と表示を求め取り組みを進めています。今回「ゲノム編集食品と食の安全」について食政策センター・ビジョン21代表の安田節子さんが講演し、組合員、産直産地6団体の生産者など約150名が学びを深めました。

開会にあたり商品委員会・樋口民子委員長(パルシステム埼玉理事長)は、「ゲノム編集は遺伝子組換え技術の一つであり、食の安全や環境影響への懸念などからパルシステムは「NO!」の姿勢。その技術を利用したトマトが流通の段階に入るということで危機感があります。この間、情報収集を進めてきましたが、さらに取り組みをステップアップするための学びとしたい」とあいさつをしました。

パルシステム連合会商品委員会・樋口民子委員長

パルシステム連合会商品開発本部長の辻正一は「遺伝子組換えは表示制度があることで、パルシステムでは『マーク』で案内し、組合員は注文時に選べるようにしています。安全・安心を判断して最終的に購入するしないを決めるのは組合員自身。選ぶ権利を保障することが最重要です。ゲノム食品について国は表示不要としていますが、2020年には安全性の審査と表示を求めグループ全体で署名を行い、9万筆以上を関係省庁に提出しました。今後は産地や取引先とも協力し、運動や取り組みをさらに発展させていきたい」としました。

遺伝子と環境への影響

ゲノムとは細胞に含まれるDNAの全塩基配列。このなかの遺伝子の情報がタンパク質を作り、それが生命現象を制御しています。ゲノム編集とは、狙った遺伝子の塩基配列を切断し、役割を壊したり新たな配列を組み込むなどして、思い通りの変異を可能にする遺伝子操作技術です。「安全を表明する人々は、自然界の突然変異と同じだから安全審査も表示もいらないと言いますが、自然界では突然変異はごくまれにしか起きず、また生命体にとり大切なところには起こりにくい仕組みがあると考えられています。ところがゲノム編集はものすごい頻度で変異を起こし、人間の都合でどこでもやってしまう」と安田さんは反論します。

切断時に標的以外の類似の遺伝子も壊してしまう「オフターゲット」、また最近になってわかった「オンターゲット」という標的箇所でも切断後に意図しない事態が起きてあらたな毒性やアレルゲンの創生など、予想外の変異も指摘されており、安田さんは「改変痕跡の探索や全DNAの塩基配列をくまなく調べるなど変異の検証が必要」だと話します。

食政策センター・ビジョン21代表 安田節子さん

遺伝子組換え技術として規制し、表示の義務化を

ゲノム編集は動物に食べさせての安全性評価はされておらず、統一された評価法もまだありません。EU、ニュージーランド、ドイツでは遺伝子組換え同様の規制と表示の義務化が行われています。日本は2018年にゲノム編集技術を成長戦略の中心とし、2019年厚労省は任意の届け出で流通・販売可能、消費者庁は表示の義務化は困難と発表し、翌年「規制不要」「表示不要」を決定しました。今年の冬からゲノム編集GABA高蓄積トマトがピューレなど加工品として販売開始予定となっています。

安田さんは「ゲノム編集食品は食品安全の予防原則にたてば禁止すべき。応用化するなら、安全性や環境、長期的な影響の評価、評価の公開、表示などの規制が必要」と指摘します。「遺伝子組換え表示の時は地域の消費者の声が自治体を動かし、政府の検討会立ち上げにつながり、5年がかりで実現しました。個人は決して無力ではなく、一人ひとりが連帯して行動を積み重ね粘り強く取り組んでいけば大きな力になると思います」と呼びかけました。

安田さんの話を受けて、商品開発本部長の辻は「意図しない影響も怖いが、それが食の安全・安心とはまた別に豊かな地域社会や生産現場がどうなっていくかという環境リスクにつながる。環境規制も表示とあわせて大きな問題と認識させてもらった。安全性評価や統一の評価方法もないということで、表示して選べるようにすることは重要」と述べ「パルシステムは“選ぶことが社会を変える力に”と取り組んできたが、遺伝子組換え同様『選ばない』『支持しない』ことも社会を変えられると思っています。引き続き粘り強く取り組みます」とまとめました。

 

「ゲノム編集食品・作物の規制と表示」を求める署名提出集会 届け出を義務化し、表示を厳格に

「選ぶ」で変わる食の未来 「ゲノム編集」規制と表示の実態