「2018年公開確認会報告会」「第26回農法研究会」を開催 持続可能な農業を交流と技術から考える

2019年1月24日

パルシステム連合会は1月16日(水)、東京・千代田区の有楽町朝日ホールで「公開確認会報告会」および「第26回農法研究会」を開催しました。2018年に公開確認会を開催した5企画(産地)について、生産者と消費者が実際に現地で確認した産地の状況や課題を全体で共有し、理解を深め合いました。

生協らしい「二者認証」をこれからも

公開確認会は、生産者と消費者の二者が産地で生産状況を確認するパルシステム独自の制度で1999年からスタートしました。

本報告会は、各産地で開催された公開確認会を、組合員と生産者それぞれの視点から振り返り、情報共有することを目的に実施しています。今回は2018年に開催した5企画(産地)について、生産者と組合員、それぞれの立場から15名が報告しました。

パルシステム連合会地域支援本部長・網野拓男が冒頭に「独自基準での農薬削減や有機農産物の開発と同じくして、公開確認会は歩んできました。二者認証という生協ならではのしくみを採用し、もうすぐ20年になります。これまでにのべ135回、1万人以上の参加がありました。より発展的な会になるよう努力していきたい」とあいさつしました。

5企画の報告を受けパルシステム連合会産直部長・江川淳は、次年度を見据え「パルシステムの産直は、ノウハウを蓄積し先進的で高い次元にあります。温暖化による災害や高齢化など環境的な厳しさが増しているなか、20年の節目に、開催手法の一部を見直しつつ活性化します。防疫強化で立ち入りが難しくなっている畜産産地を含め、対象産地を拡大し、生産者と消費者の深い相互理解を図りたい」とまとめました。

報告の概要は次の通りです。

野付漁業協同組合(北海道)

左から野付漁協・内藤さん、パルシステム千葉・仲野さん

「国後島を目前に狭い海域で資源管理型漁業を進め、海を守るために組合員と続けた植樹は1万本を達成し、水を湧かせました。地域や自然と対話しながらの持続可能な漁業を、応援していきます」(監査人:パルシステム千葉・仲野智美さん)

「水産マーケットのグローバル化は産直提携そのものを脅かしかねないと危惧しています。有限である野付の恵みを枯渇させないよう、漁協はルールを厳守し、組合員のみなさんと交流を深めていきます」(野付漁協:内藤智明さん)

2018年5月10~11日|「野付漁協公開確認会」を開催 持続可能性への配慮と協同の精神を確認

JA山形おきたま(山形)

「大好きな『つや姫』がどう作られているのか、興味があり参加しました。豊富な地下水がとても印象的でした。パルシステムと関わる生産者のさらなる組織化と、コア・フード米への取り組みを期待します」(監査人:パルシステム東京・飯山容子さん)

「当日は35度を超える炎天下での開催でした。パルシステムと出会い、指摘を受け、それまで当たり前だった大型ヘリでの農薬空中散布を見直しました。2003年には全地域で廃止となり、今に至ります。これからも豊かな自然とともに、おいしい米づくりをめざします」(JA山形おきたま:大河原文幸さん)

2018年7月19~20日|水が育む「産直米」と「電気」 ~JA山形おきたまパルシステム米生産部会公開確認会

JA会津よつば(福島)

左からパルシステム福島・影山さん、JA会津よつば・大八木さんらで会津米をアピール

「3.11以降の風評被害対策に尽力されてきたことがよくわかりました。検査体制の充実は今後も希望します。JAと生産者が寄り添い進める、安心安全な米づくりをこれからも応援します」(監査人:パルシステム福島・影山祐子さん)

「100名以上の立会いのなか、会津農家の“忍耐強い”米づくりを見ていただきました。2011年以降もパルシステムの組合員のみなさんからは数量を落とすことなく注文があり、感謝に堪えません。会津の米を日本一にする覚悟です」(JA会津よつば:大八木孝さん、十二村秀孝さん、辰野博幸さん)

2018年8月20~21日|「「JA会津よつば公開確認会」を開催 安全でおいしい米を食卓へ

JAふくおか八女(福岡)

左からJAふくおか八女・松崎さん、パルシステム埼玉・久保田さん

「長年、お茶を通して交流してきましたが、今回は『みかん』を監査品目としました。標高差が大きい産地の将来のためにも、機器導入による作業軽減を引き続き進めてください。エコ・みかんの生産者の拡大に期待します」(監査人:パルシステム埼玉・久保田眞理子さん、石尾優子さん、山水磨留美さん)

「指摘を受けた内容については、改善していきます。急傾斜地での農業ということもあり、労働者不足、後継者の育成は引き続きの課題です。農地の基盤整備を進め、安心して食べてもらえるみかん産地となるよう努力していきます」(JAふくおか八女:松崎智明さん)

2018年9月21~22日|JAふくおか八女 公開確認会

鹿児島くみあいチキンフーズ(鹿児島)

「抗生物質・合成抗菌剤無添加の飼料で鶏を飼育するなど“アニマルウェルフェア”な環境であり、それは経済性からも重要な観点でした。産直においては、産地ばかりでなく、加工・流通など中間行程への視点も必要とわかりました」(監査人:パルシステム神奈川・荒川美作保さん)

「県内に点在する産地や加工場の視察は、150キロの移動を伴う慌しいものでした。そのようななか、資源の再利用など循環型農業を確認してもらえたかと思います。関係者用の帳票はトレーサビリティの視点から見やすく改善し、アピールポイントとしても生かしていきたいです。」(鹿児島くみあいチキンフーズ:大久保藤夫さん、小濱竜司さん)

2018年10月12~13日|「鹿児島くみあいチキンフーズ」公開確認会を開催しました

さまざまな防除手段をバランスよく

午後からは「第26回農法研究会」を開催し、農薬メーカーであるアリスタライフサイエンス(株)の光畑雅宏さんより「IPM(Integrated Pest Management:総合的 病害虫 管理)」技術をテーマとする講演がありました。また沃土会(埼玉)の倉林永さん、八千代産直(茨城)の坂入清史さんが生産者の立場からIPM技術の導入事例について報告しました。

IPM技術について説明する光畑さん

光畑さんは、害虫の抵抗性発達などにより化学合成農薬が効きづらくなるなど、その使用量が世界的なトレンドとして減少していることを示しつつ、生物農薬、すなわち天敵となる昆虫の活用なども組み入れた総合的な対策を提唱しています。「除草や粘着トラップ、防虫ネット、労務者の衛生管理などさまざまな防除手段をバランスよく用いることが肝要です。害虫を低密度に抑えながら、作業者の農薬による被ばくを減らすなど、生物農薬の活用は持続可能な技術といえます」と力説しました。質疑応答では、自然環境の影響を受けやすい有機農産物の生産者からも多く手が挙がるなど、関心の高さがうかがえました。

最後に生産者運営委員長である矢内克志さん(沃土会)は、「農法研究会らしい内容となりました。農薬については、生産者だけでなく、消費者とともにほ場への影響や削減方法を学び、協議し、持続可能な農業の技術について考えていければ」とまとめました。

パルシステム生産者・消費者協議会