「JAたじま公開確認会」を開催 生命あふれるコウノトリ育む田んぼを確認

2021年7月21日

パルシステム連合会は7月8日(木)、9日(金)の両日、兵庫県豊岡市で「たじま農業協同組合(JAたじま)公開確認会」を開催しました。「コア・フード兵庫こしひかり(コウノトリ育むお米)」を対象品目に、生産者と消費者の二者が確認しました。

山間に広がるコウノトリ育む田んぼ

初の開催に97名が参加

公開確認会は、生産者と消費者の二者が産地で生産状況を確認するパルシステム独自の制度で、1999年からスタートしました。2010年度からは、会員生協主催による開催も始まっています。

「JAたじま公開確認会」は、パルシステム連合会主催で、兵庫県豊岡市のコウノトリ文化館を中継会場にオンラインで開催しました。事前の講習会を修了した監査人と一般参加の組合員、生産者、生協役職員、関係者など97名が参加し、監査品目のコウノトリ育むお米の生産状況、帳票類について確認しました。

公開確認会は初の開催。JAたじま職員、コウノトリ育むお米部会のみなさん

「コウノトリ育むお米」の産直産地

JAたじまは兵庫県の北部、豊岡市を含む3市2町からなる但馬地域を管轄しています。豊岡市ではかつてコウノトリが多く生息する自然豊かな地域でしたが、経済成長に伴う劇的な環境変化によって、1971年に野生のコウノトリは絶滅しました。この反省のもと、最後の生息地だった豊岡市では半世紀以上にわたりコウノトリを育む取り組みが行われ、今では野外に200羽以上が暮らしています。

ほ場の中にあるコウノトリの人工巣塔(祥雲寺地区)。二羽のひなが親鳥を待っている

2003年に始まった減農薬と無農薬の「コウノトリ育むお米」は、安心・安全な米と、たくさんの生き物を同時に育む農法を採用しているのが特徴です。冬期間も田んぼに水を張る冬期湛水(とうきたんすい)や、田植えの1カ月前から田んぼに水を張る早期湛水(そうきたんすい)などを行うことで、ほぼ1年を通して田んぼに水があり、コウノトリの餌となる多くの生きものを育んでいます。

生産にあたっては「コウノトリ育むお米生産部会」を組織し、栽培技術の向上と地域活性化を進めています。当初、わずか5名の生産者から始まりましたが、現在では300名近くまでに広がり、日本の有機・環境保全型農業をけん引しています。市内の全学校給食には「コウノトリ育むお米」が採用されており、毎日の米飯給食が実現しています。こうした活動が評価され、2021年、JAたじまは、農林水産省が主催する「未来につながる持続可能な農業推進コンクール」で農林水産大臣賞を受賞しました。

パルシステムでは2018年産米より取引を開始し、「有機コウノトリ育むお米(兵庫こしひかり)」と名称変更する2021年産米では約120tを見込んでいます。

農薬・化学肥料に頼らない豊かな土地づくり

8日(木)は事前監査を実施し、6名の監査人が今回の監査対象となる生産者(生産団体)コウノトリの郷営農組合の理事・境敏治さんの案内のもと、ほ場や倉庫のようす、帳票の確認などを行いました。育苗はハウスではなく外で、有機JAS基準(※)で生育していることや、機械類の操作は担当のオペレーターが担うなど、栽培に工夫を凝らしつつ、作業管理も厳重になされていました。全国でもめずらしく有機JAS認証をグループで取得した理由を質問されると、JAたじま職員の木谷和喜さんは「審査費用などのコストや書類作成をJAが担うことで生産者の負担を低減する狙いがあった」と回答しました。

※有機JAS認証:種をまく2年以上(多年作の作物では最初の収穫前に3年以上経過した農産物)の栽培期間中の畑に、化学合成農薬、化学肥料を使わずに育てたことが、政府の認可を受けた第三者登録機関によって証明される制度。

翌9日(金)は、冒頭にJAたじま組合長の太田垣哲男さん、豊岡市長の関貫久仁郎さんよりあいさつがあり、農薬・化学肥料に頼らない豊かな土地づくりについて、熱い思いが語られました。事前収録した生きもの調査では、田んぼやマルチトープ(水抜きの際などに生物の避難場所になっている溝)からトノサマガエルやアキアカネ、ヌマエビといった多くの生き物が観察されました。「コウノトリ育むお米」は、栽培履歴に「生きもの調査」の記録が必須となっています。

連合会が主催する公開確認会で、オンライン開催は初の試み

コロナ禍の先を見据え、もっと深めたい交流

監査所見の発表では「田んぼの管理もきちんとなされ、産直四原則にも合致しています。今後、交流をどう深めていくか一緒に考えていきたい」「JAで定期的に講習会を開催し、情報公開に努めるなど、営農知識向上が全体的に図られていました」「高齢化する担い手と後継者の育成は課題。有機米・生産物の価値や背景を、多くの人に伝えていきたい」などの所見がありました。

監査人からは多くの質問が。資料を片手に、豊岡市の中継所から丁寧に回答

また、生産者監査人のパルシステム生産者・消費者協議会・青木等幹事(JAささかみ)は「行政、農協、生産者による三位一体の推進が特長であり、グローバルGAP認証(※)など海外へのアプロ―チにも前向きです。今後は生産者も書類作成や事務作業に強くなるなど、JA頼みではない力量が必要になる時代かと思います。有機・環境保全型農業のトップランナー『JAたじまモデル』として、支えあうから育てあう、のグループづくりに期待します」とエールを贈りました。

※グローバルGAP認証:農畜水産業における食品安全、労働環境、環境保全などに配慮した農業生産工程管理(GAP)の国際的な基準。また、それが生産団体・企業などで適正に運用されていることを認証する仕組み。欧州を中心に世界 120 カ国以上で普及している。

監査人のまとめとしてパルシステム連合会産直部長・那須豊は「オンラインでの開催となり、膨大な監査資料をずいぶん前から整えられました。学校給食への参入などを好例に、政策提言についても検討しつつ、有機米の利用普及に取り組んでいきます」と、謝辞を述べました。

JAたじま営農生産部長の小山有俊さんは「パルシステムのみなさんの、米と正面から向き合う姿勢に感銘を受けています。ご指摘の内容は部会員に共有し、知名度の向上に一層励んでいきます。農薬に頼らない、積み重ねた技術を次世代に継承し、部会全体の若返りをめざしていきます」と話し、各地の参加者からの拍手で締めくくられました。

過去の公開確認会はこちらから

未来につながる持続可能な農業とは? “達人”たちの軌跡と、次世代へのメッセージ|生協パルシステムの情報メディアKOKOCARA