山梨で始まった協同組合連携 農業の課題にも寄り添う相互扶助のしくみ(社会貢献活動レポート|2021年5月)
2021年6月4日
めざすのは、「いいさよ~」と言い合えるお互いさまの関係
農作業の手伝いを求める人と手伝いたい人をつなげる援農事業を行ってきたJA。くらし全般に関する組合員同士の「たすけあい」のしくみをもつ生協。それぞれが培ってきたノウハウや経験を持ち寄り、幅広い地域の課題に寄り添える相互扶助の活動を展開したいーーそうした主旨から、2019年12月、パルシステム山梨、JAフルーツ山梨、ワーカーズコープ(※1)の3つの団体が協同し、同JA管内(※2)で、困ったときに誰もが利用できる有償ボランティアの助け合い組織「いいさよ~山梨」を立ち上げました。
「これまで県内には地域の協同組合同士が連携した活動はなかったのです。今回ワーカーズコープさんからの提案で初めて実現しました」と語るのは、設立準備から携わってきたパルシステム山梨の田中明雄さん。「いいさよ」というのは、何か頼まれた時に「いいですよ」と返す甲州弁。
「この言葉のように、依頼する人も応援する人も、”お互いさま”の精神で気軽に関われる活動にしたいとの願いを込めて名づけました」
※1:ワーカーズコープ東京三多摩山梨事業本部
※2:甲州市、山梨市、吹笛市春日居町の一部(応援者は同市外からの登録も可能)
「いいさよ~山梨」サービス例
・農業軽作業支援:ぶどう(房づくり、傘掛け等)や、桃(摘果、袋掛け等)の作業、出荷作業等全般
・生活支援:掃除、洗濯、食事づくり、子どもの世話、庭木のせん定など
農業軽作業では、事前の研修会が開催できずに応援者を派遣し、農家の方に作業を教えていただきながら進めたケースもありました。また大学などにも訪問し、学生から手伝いの協力を申し出てもらったケースもありました。
しくみづくりに、生協のノウハウを提供
提供するサービスは「農業軽作業支援」と「生活支援」。困りごとの解決を求める「依頼者」とその解決に協力する「応援者」を「いいさよ~山梨」がコーディネートし、利用料金の一部を運営費にあてます。
「しくみづくりにあたっては、家事支援活動を進める『くらしサポート』で私たちが培ってきたノウハウや資料を提供しました」と田中さん。たとえば家事支援の方法、食品衛生管理、マナー研修などのマニュアルは、田中さん自ら現場のニーズを洗い出しながら作り上げたものを、「いいさよ~山梨」向けにアレンジしたそうです。
「蓄積されたサポート活動のノウハウやスキルは生協の財産。それを地域に還元できる意義は大きいですね」
協同組合連携のモデルとして寄せられる期待
約2年かけて着々と準備を進め、昨年から本格的に稼働する予定だった「いいさよ~山梨」。ところがこれからというときに、新型コロナウイルスの感染が拡大。
「利用者や応援者を募る目的で計画していたイベントや講演会も中止せざるを得ませんでした」と語る田中さんの表情はなんとも悔しそうです。
それでもコロナ感染拡大の直前に開いた説明会で、パルシステム山梨の組合員も含め30名ほどが「応援者」として登録。すでにぶどうの房づくりや、桃の摘果、袋掛けなど、援農活動に取り組んでいます。
「農業に関心の高い組合員も少なくないので、今後、応援者として活躍してもらえるのではないでしょうか。地域の大きな課題である農業後継者育成につながる可能性もある。『いいさよ~山梨』がモデルとなって、県内の他のJAとの連携も広がっていくことを期待しています」
ワーカーズコープより
地域住民の助け合いでくらしの困りごとの解決をめざす「いいさよ~山梨」は、協同組合を地域に根付かせていく取り組みでもあります。パルシステム山梨からは「いいさよ~山梨」構想の具体化に多くのヒントをいただき、また協力してくれる応援者の教育にも大きな役割を担っていただきました。コロナ禍の現在、活動には多くの制約がありますが、くらしやすい地域づくりにいっしょに取り組んでいただけることを心強く思っています。
ワーカーズコープ東京三多摩山梨事業部 高橋文男さん
*ページの内容は2021年5月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。