「2019年公開確認会報告会」「第27回農法研究会」を開催 生産の努力を確かめ信頼を深める
2020年1月24日
パルシステム連合会は1月15日(水)、東京・千代田区の有楽町朝日ホールで「公開確認会報告会」および「第27回農法研究会」を開催しました。2019年に公開確認会を開催した6企画(産地)について、生産者と消費者が実際に現地で確認した産地の状況や課題を全体で共有し、理解を深め合いました。
地道に取り組んで20年。のべ155産地に
公開確認会は、生産者と消費者の二者が産地で生産状況を確認するパルシステム独自の制度で1999年からスタートしました。
本報告会は、各産地で開催された公開確認会を、組合員と生産者それぞれの視点から振り返り、情報共有することを目的に実施しています。今回は2019年に開催した6企画(産地)について、生産者と組合員、それぞれの立場から16名が報告しました。
6企画の報告を受けパルシステム連合会産直部長・那須豊は「二者認証という生協ならではのしくみを採用した公開確認会は、20年目を迎え、述べ155産地での開催となりました。信頼関係を深めていくための地道な取り組みが、ジャパンSDGsアワードの受賞として認められたと考えています。各産地における地域とのかかわりにも目配せしつつ、広く社会へパルシステムの産直を広報していきたい」とまとめました。
報告の概要は次の通りです。
株式会社ファーマン(山梨)
監査品目:コア・フードにんにく コア・フード玉ねぎ
「生産にかける思いが詰まっており、感銘を受けました。食と農をつなぐパルシステムの産直になくてはならない、手を組んでよかったと思える産地でした」(監査人:パルシステム山梨・坡場真知子さん、望月理恵子さん)
「農業をあこがれの職業にしたい、と有機農業に取り組んできました。書類の整備は大変でしたが、よい学びとなりました」(ファーマン:井上能孝さん)
2019年5月14日|「株式会社ファーマン 公開確認会」を開催しました
士別農園・士別市多寄有機農業研究会(北海道)
監査品目:エコ・たまねぎ
「農薬の使用や保管、温度管理などが適切になされていました。広大なほ場で、除草剤を使わない手作業の草取りは想像を絶するたいへんさでした」(監査人:パルシステム千葉・榎本裕美子さん)
「人手不足などの課題はありますが、減農薬栽培はもちろん、これからも農業を続けていけるよう、生産者同士で協力していきます」(士別農園:古市光敬さん)
2019年7月4~5日|産直産地「士別農園」「士別市多寄有機農業研究会」で公開確認会を開催しました
JA佐渡(新潟)
監査品目:トキを育むお米 エコ・佐渡こしひかり
「オリジナルカレンダーを作成し、生産者が栽培履歴を記録しやすいように工夫されていました。環境保全型の米づくりをこれからも応援します」(監査人:パルシステム神奈川ゆめコープ・益田真紀子さん)
「あたりまえに行っている農作業を評価していただけたことはとてもうれしいです。私たちの思いや地域の魅力を、米の味にのせて伝えていきます」(JA佐渡:佃直樹さん)
2019年7月29~30日|環境にやさしい佐渡の米作り「JA佐渡公開確認会」を開催しました
有限会社なかむら農園(大阪)
監査品目:デラウェア
「100年以上の歴史があり、約10㏊におよぶ農地のうち1/4をパルシステムに出荷しているとのこと。農薬の管理がとても計画的で、生産体制も整っていました」(監査人:パルシステム埼玉・工藤幸代さん、長妻さよ子さん、里見好美さん)
「果樹は1回の失敗が取り返しのつかない事態を生むので、緊張の連続です。人手不足やコスト増に苦慮していますが、スマート農業を探求していきます」(なかむら農園:仲村知也さん)
2019年8月23~24日|「なかむら農園 公開確認会」を開催
士幌町肉牛産直会(北海道)
監査品目:北海道産直牛
「生産のこだわり、責任を強く感じました。輸入牛肉にはない『価値』を多くの人に伝え、もっとファンを増やしたいと思います」(監査人:パルシステム山梨・甘利順子さん)
「国内の畜産情勢を知ってもらえるよい機会となりました。地球環境に思いを巡らせた生産の在り方を追求していきたいです」(士幌町肉牛産直会:奥秋博己さん)
2019年9月12~13日|「士幌町肉牛産直会公開確認会」を開催 酪農と密接な乳用種の生産を確認
株式会社野菜くらぶ青森支部(青森)
監査品目:レタス
「開拓の苦労、味の品質向上、収穫の工夫など、ひとつひとつていねいに対応してくれました。就農には地元の方々の理解と支えが欠かせない、と知りました」(監査人:パルシステム東京・井上睦子さん、吉藤友美さん)
「苦労して耕してきた畑を前に、みなさんに話ができたことはありがたかったです。作り手、届け手、食べ手が一堂に会する貴重な機会でした」(野菜くらぶ青森支部:山田広治さん)
2019年10月10~11日|㈱野菜くらぶ青森支部 公開確認会を開催 年間を通じてレタスを届けるための生産者の苦労と歴史を学びました
「おいしく楽しく医食同源」が食の基軸に
午後からは第27回農法研究会を開催し、パルシステムで有機栽培に位置付けている「コア・フード」作物の利用を広げるため、日本有機農業普及協会代表理事の小祝政明さんをお迎えし、経営の成り立つ有機農業の技術や実践について講演いただきました。
講演の前に産直産地から取り組み報告があり、水俣不知火ネットワーク(熊本)の澤村輝彦さんは、「40年、資材や肥料を裏山や畑、川など100%周辺のものを利用し自ら作ってきた。一筋縄ではいかない深い作業だが愛情がわき、技術をこじあけることがおもしろくやりがいがあります」。JAささかみ(新潟)の青木等さんは「小さい我が子の応援を背に、妻と有機の米作りをがんばっている。だれかが先に立たないと有機は進まない。たいへんですが地域のモデルになります」。JA紀南田辺印の会(和歌山)の前田謙さんからは、来年2月に初めて開催する公開確認会の告知と案内がありました。
小祝さんは「認証にこだわらず、おいしさや栄養価が主流にならないと価値がないのでは」と投げかけ、20年間で形成した技術、BLOF理論(ブロフ バイオロジカル ファーミング)は、有機農業の弱みとなっている収量や品質、価格の問題を解決できることを、科学的に説明しました。また1950年代以降、旬であっても栄養価が慣行栽培と差がないという欧米のデータを提示し、「ショックでした。しかし日本古来の『地力』技術を利用すれば栄養価は保障できるので、みなさんにやってもらいたい」と期待しました。
農家の役割は「おいしくて栄養があり、安全なものを食べたいなど消費者の思いを農業技術で解決すること」とし、「食べ物こそが運動エネルギーや薬」という考えに立ち返り、「有機農業で環境問題解決に積極的にかかわっていく。それができない農業は、世界を壊す側の産業になってしまう」と訴えました。