「選ぶ」で変わる食の未来 「ゲノム編集」規制と表示の実態

2019年8月13日

パルシステム連合会は8月1日(木)、東京・新宿の本部事務所にて、北海道大学教授で日本学術会議・遺伝子組み換え作物分科会幹事でもある石井哲也さんを招き、第3回「ほんもの実感!」くらしづくりアクション連続講座を開催しました。

パルシステムは、一人ひとりの選択でよりよい社会や自然環境を次世代へ引き継ごうと、「ほんもの実感!」くらしづくりアクションに取り組んでいます。今回は当会の産直委員会と共同開催で、近年注目されているゲノム編集について、遺伝子組換えの実態と対比しながら問題点や今後の課題などを学びました。会場参加者は産直産地生産者を含め110名、動画配信システム視聴参加70名、計180名が参加しました。

産直委員会の佐々木博子委員長(パルシステム千葉理事長)は開会にあたり、「ゲノム編集についてグループ全体で取り組みを検討中で、今日の学びをもとに今後の動きを作っていきたい」とあいさつしました。

石井さんはまず、「今日は立場と関係なく、事実関係に即しての情報提供、また一研究者としての意見も含めお話したい」と前置きしました。石井さんは、ゲノム編集食品がもう間もなく輸入されるであろう状況に、国のゲノム編集への対応にも疑問を呈しており、規制と表示義務の観点から問題点を指摘しました。

健康や環境への影響は

同じ遺伝子操作である遺伝子組換えと対比させながら、ゲノム編集の問題点を掘り起こしました。2003年に発効、現在171か国が参画するカルタヘナ議定書は、環境及び開発に関するリオ宣言の原則15の予防原則が根幹で、生物多様性や自然環境の保全や保護を規定しています。一方ゲノム編集は配列が類似した部分を誤って操作する可能性もあり(オフターゲット変異)、安全性に不確かさがありますが、日本はそれを評価せず、一部の規制を緩め、研究助成を行う姿勢です。

2018年6月の閣議決定では、国民理解のために国民の“便益”に関する情報提供を強化するとしていますが、石井さんは「リスク・コミュニケーションと謳いながら“便益”だけで、健康リスクや環境問題に触れていない」と指摘します。また、それを具現化する環境省、厚労省、消費者庁の検討結果に一貫性がないのも問題です。「リスク・コミュニケーションとは、『対話・共考・協働』で説得ではありません。みなさんも認識されているとは思いますが、国の進め方はかなり拙速だと思います」と述べました。

北海道大学教授の石井哲也さん。日本学術会議・遺伝子組み換え作物分科会幹事を務める。

表示のあり方

7月5日の3省主催意見交換会はゲノム編集食品の取り扱いを前提に行われ、国は表示違反食品の科学的検証の困難を主な理由に表示義務化は難しいとしています。また“国際整合性”の考慮が必要としていますが、「ゲノム編集食品の日本への輸入も意識しているはず」と石井さん。石井さんは「表示の必要性から考えるべき」と主張し、遺伝子組換え食品は表示を義務化しているが、ゲノム編集は困難としていることに、「選べないことは問題。国は消費者にゲノム編集食品は安全で、表示不要と説得しているようにみえます。私たちはそれに向き合い、意向や意見を主張していくべきでは」と話しました。

当会常務の髙橋宏通は、「“選ぶ”ということに言及されていたが、国が表示義務化しなければ、消費者に選べるようなしくみを考えていく必要を感じます。またゲノム編集は生産者にも深刻な影響があり、生産者と消費者がともに取り組む課題との認識です」とまとめました。

商品委員会の反町幸代委員長(パルシステム群馬理事長)は、「ゲノム編集を自分が判断するうえで今日の講演はとても意味がありました。『ほんもの実感!』の『選ぶ』でよりよい未来を創るためにも、署名等で組合員や消費者に問題点を訴え、多くの賛同を積み上げていきたい」と締めくくりました。

「ゲノム編集食品」が食卓に上る日。本当に規制は必要ないのか? 北海道大学教授・石井哲也さんに聞く|生協パルシステムの情報メディアKOKOCARA
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