月に1度の農業体験 「いなぎめぐみの里山」の取り組み(社会貢献活動レポート|2019年5月)
2019年7月18日
生活に困難を抱えた人たちが、社会へ踏み出すきっかけづくりを
何かしらの事情で、生活に困難を抱えている人たちが、もう一度社会とのつながりをもつための第一歩にしてもらえたら――。そのような思いから、パルシステム東京は認定NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」(以下、もやい)と連携し、毎月一度、東京都稲城市に所有する「いなぎめぐみの里山」を提供しています。これまでも組合員によって、野菜の植え付けや収穫作業、竹林の整備などが行われてきた「いなぎめぐみの里山」。「もやい」との取り組みが始まったのは、2018年5月のことでした。
「通ってくる利用者は、30代から70代までと年代はさまざまですが、多くが生活保護を受給している人たちです。月に1度だけの活動なので慣れるのも大変だったと思いますが、寒い時も暑い時もていねいに作業をしていたのが印象的でした」
そう話すのは、パルシステム東京地域支援課の松長乃生さん。作業日に必ず顔を出し、利用者といっしょに草取りをしたり、マルチシート(農業用資材)をはがしたりと、スムーズに作業が進むように見守ってきました。
「気持ちがいいね」「風が強いね」――会話も自然に
作業の内容は、じゃがいもや大根の畑の草取りやかぼちゃの棚の撤去など。もやい事務局・松下さんは、「共同作業が多いので、いつもひとりでパソコンに向かっているような人も、自然に他の利用者と協力し合っていました」と話します。
「土に触ると気持ちが落ち着くようですね。気持ちいいねとか、風が強いねとか会話も生まれます。ふだんなかなか外出することがない人も、皆でわいわい作業することはリフレッシュになったようです」
「いなぎめぐみの里山」に通うようになってから、もやいの運営するサロンでも利用者同士が畑の話で盛り上がったり、「おもしろいからやろうよ」と他の利用者を誘ったりする光景も見られ、ゆるやかなコミュニケーションがとれるようになっていることも感じるそうです。
社会復帰の準備を支援する“場”として
市民活動助成基金の事務局も務める松長さんが日ごろ模索しているのは、もやいのような市民団体に対して、どうすれば支援を継続していけるかということ。「助成期間が終わっても、地域に密着して課題解決に取り組む彼らとのつながりは大切にしたい」と松長さん。
その意味でも、自立支援が必要な人たちの就労準備や、社会復帰に向けてのひとつのステップとなり得る“場”として「いなぎめぐみの里山」を活用することは、生協としても意義が大きい、と話します。「将来的には、農作業のスキルを身につけたもやいの利用者に、グリーンワークのスタッフに加わってもらえるようなしくみづくりも考えたい。ここでの体験によって、『自分は必要とされている』ということを感じてもらえたらうれしいですね」
「いなぎめぐみの里山」
パルシステム東京が稲城市に所有。組合員が身近に自然と関わり農業を体験できる場として、稲城市民との協働で2004年から開墾。2018年3月には、土地のうち約21haの山林が稲城市の「自然環境保全地域」に指定されました。NPO法人「いなぎ里山グリーンワーク」が管理。現在、子ども連れの家族をはじめ年間のべ約3000人もの組合員が、収穫体験や里山づくりなどのイベントに参加しています。
*本ページの内容は2019年5月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。