食べ物がある。見守る大人がいる。高校内居場所カフェ(社会貢献活動レポート|2019年3月)

2019年4月23日

校内カフェで感じた、“子どもにとって必要なこと”

「一見、服装が派手ですごく大人びているような子も、話しかけてみたら、気さくで、純朴な素顔が見えてきました」と話すのは、パルシステム神奈川ゆめコープ理事の井上詠子さん。出産後、育児疲れで引きこもり状態だったとき、ゆめコープ主催の「塩の学習会」に参加したことが、社会へ踏み出すきっかけに。2018年9月、理事研修の一環として、「ようこそカフェ」に体験参加したときの感想です。

カフェに用意された中には、ボランティア手作りの軽食も。井上さんが参加した日のメニューは、パルシステムでおなじみ、(株)共生食品から提供された「冷やしうどん」でした。

「みんな、すごく喜んで食べていましたね。(共生食品の)社長さんからのメッセージもあって、私も感動しました。人の手を介した食べ物は、打ち解けるための材料になるんですね。カフェのある日を楽しみにしている生徒さんが多いって聞きました」

休み時間になるとどっと生徒が押し寄せ、身動きがとれないほど。食べ物やドリンクの前に行列ができる。

共生食品から届いた、冷凍うどん。この日は300食分の提供をいただきました。

大学生や社会人のボランティアが、生徒の相談相手に

「ようこそカフェ」は、青少年育成などに関わる外部団体のスタッフやボランティアが運営をサポートしていることが特徴。生徒へのキャリア支援や悩みごとの相談をする場にもなっています。

高校では、うまく友人関係がつくれずに孤立したり、経済的な困難や家庭での問題を抱えて充分に食べさせてもらえない生徒も少なくありません。そこで当時の校長先生の発案で、だれでも気軽に立ち寄れて、グチや悩みを打ち明けやすい居場所をと、「ようこそカフェ」はスタートしたのです。

「自立に向け、勉強だけでなく、人との関係づくりを学んでもらいたい。困った時にはだれかに相談するという体験を積み重ねてほしい。そんな思いがあったようです」と話すのは、パルシステム神奈川ゆめコープで若者支援に携わっている余泰順(よ・てすん)さんです。同生協からの食材提供も、校長先生との会話がきっかけだったとか。

「生徒のなかには、カフェのお菓子で空腹をまぎらせている子もいるという。できるだけ多くの人に関わってほしいと考え、共生食品にも協力をお願いしました」(余さん)

自らの学びが地域の力に。「現場体験は貴重です」

井上さんは、外国人に日本語を教えたり、保育園での読み聞かせなどにも携わっているのだとか。地域活動に力を入れるようになったきっかけは、ある先輩の「現場に出なさい、地域で汗をかきなさい。それが、自分のためにも、組織のためにも、地域のためにもなるから」という言葉。「ようこそカフェ」に参加し、その意味を改めて噛み締めたと言います。

「それまで知識でしかとらえていなかった『さまざまな困難を抱える子どもたちの様子』を、肌で感じる機会になりました。また生徒一人ひとりとの会話を大切にしているスタッフに接し、子どもたちにとって、『あなたを見ているよ』という大人の存在が大きな役割を担っていることを実感しました」

「勇気を出して声をかけてみることが第一歩だと学んだ」と井上さん。「これからもできるだけ現場に出て、この実践での気づきを生かしていきたいと思います」と、清々しい笑顔を見せました。

毎回10名ほどのスタッフが、炊き出しや生徒の悩みの相談相手として参加。手作りのメニューは、大人気。

「ようこそカフェ」

横浜市立横浜総合高校のフリースペースで、毎週水曜日の12時から17時半まで開催。2016年スタート。ボランティア手作りのメニューやお菓子、ドリンクが提供される。参加する生徒は毎回200人を超える。「(公財)よこはまユース」「NPO法人多文化共生教育ネットワークかながわ」「NPO法人横浜メンタルサービスネッワーク」の3団体が協力。パルシステム神奈川ゆめコープも食材の提供などを行っている。

*本ページの内容は2019年3月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。