パルシステム生消協「第7回青果フォーラム」を開催 環境保全型農業の可能性と課題

2018年11月22日

10月12日(金)、東京千代田区TKPガーデンシティにて「第7回青果フォーラム」が開催されました。産直生産者、組合員、パルシステム関係者など116名が、約1年半かけ検討されたパルシステム独自の農産物基準「エコ・チャレンジ」について意見交換しました。

エコ・チャレンジ基準を再確認

パルシステム生産者・消費者協議会(生消協)は、パルシステムに農畜産物を供給する生産者と消費者である組合員が、対等な立場で協議や活動する場として1990年に設立。青果フォーラムは野菜と果樹部会主催で毎年開催しており、今年はエコ・チャレンジ基準見直し検討委員会の経過報告、ならびに昨年の青年農業者交流会でも大変好評だった、宮崎大学の大野和朗先生による土着天敵の有効活用の講演会が行われました。

開会にあたり生消協代表幹事の大津清次さん(無茶々園・愛媛県)は、今年4月の豪雨や連続する台風被害にふれ、「近年、災害に遭遇しない産地はないのでは。たいへんさに押しつぶされそうですが、ここであらためて苦労して取り組んできたエコ栽培の意義や義務を問い直し、基準について積極的に意見交換しましょう」とあいさつしました。

生消の相互理解

組合員からは「私たち組合員の思いに応えようと、リスクも負ってのエコ栽培ですが、受注は厳しく、利用の広がりに結びつけるにはどうしたらいいか。ほ場に行って生産者に直接会って話しをする産地体験は有効と思うが、みんなができるわけではない。しかしここをどうにかしないと道は開けないと思うのです」と述べました。

生産者からは組合員の産直へのあり方について問う意見が多数出されました。このままでは今後エコ・チャレンジに挑戦する農家は減ると予測します。「安全・安心で、病気や虫食いや虫がいない『きれいな青果』を求める組合員の増加に対して、エコ栽培に取り組む生産者の実態をどれだけ理解してもらえているか。多少の被害を受けたものも納得して買っていただけるのなら、エコをやろうと思う農家もしっかり出てくると思います」とサンファーム(長野県)の堀口貞夫さん。また、災害や異常気象で収量が減るなか、品質の基準見直しを求める声も。「今年は猛暑でエコを続けていけるかすごく不安になりました。収量が落ち込むなか、腐れ等は論外ですが、形や大きさなど多少不揃いでも組合員さんに利用いただけたらという思いです」と富良野青果センター(北海道)の村上洋巨さんは訴えます。

土着天敵の有効活用~大野先生の講演

午後からは宮崎大学農学部の大野和朗先生による講演がありました。「農薬を減らそうと思うなら周辺環境を整えていかないと。天敵利用の考え方は、『その地域に生息する良い虫』をどれだけ畑に呼び込むかです。除草剤をまくと害虫しかいなくなり、農薬は減らせなくなる。まず天敵を殺さないよう優しい農薬を使うなど『天敵の保護』が重要。これだけでも農薬を3~4分の1くらいは減らせますよ。なので、みなさんの意見交換をそわそわしながら聞いてました」と述べると笑いが起こりました。

また、「畑のまわりをきれいにしすぎていませんか?」とも。「雑草に住処を獲得し、花があればその花粉や蜜をなめて天敵が増える。有機栽培では無農薬だから天敵はよく働くというのは大きな間違いで、天敵の居場所がなければ畑には来ない。有機栽培でも空いたスペースに花を植えておけば、天敵が花の蜜や花粉にやってきて力を発揮するんです」。そしてこう背中を押しました。「みなさんは慣行栽培の人から『おまえのとこが害虫の発生源になってるやないか』と言われたことがありませんか? 違うんです。慣行が害虫の発生源であって、有機は天敵の発生源なんです。これから自信を持ってやってください」。

最後に生消協幹事・生産者運営委員長の矢内克志さん(沃土会・埼玉県)は、「基準に関してはまだまだ課題がありますが、我々生産者はエコ基準に基づき生産をきっちりやっていくこと、そして基準はがんばりの評価と考え、みんなで足並みそろえ、エコ・チャレンジ栽培が未来に続いていくよう組合員のみなさんの理解を獲得しましょう。私は早く畑に行き、花の種をいっしょうけんめいまこうと思います」と結びました。