地域で活動する草の根の市民団体を剰余金で支援(社会貢献活動レポート|2018年2月)

2018年2月8日

誰もが安心してくらせる社会をつくるために、自らできることを持ち寄って、地域やコミュニティのために活動する人々がいます。そうした市民団体を資金面からサポートするしくみが、各種の助成制度です。パルシステムグループでも、8つの組織で10の助成制度を運営(※)し、2016年度は224団体へ5147万円を助成。助成金は組合員が商品やサービスを利用することで生まれた剰余金から拠出し、広く社会に還元しています。

※パルシステム東京(市民活動助成金基金、震災復興支援基金)
パルシステム神奈川ゆめコープ(市民活動応援プログラム)
パルシステム千葉(コミュニティ活動助成基金)
パルシステム埼玉(市民活動支援金、東日本大震災復興支援助成金)
パルシステム茨城(くらし活動助成基金)
パルシステム山梨(市民活動助成金)
パルシステム共済連(たすけあい活動助成金)
パルシステム連合会(地域づくり基金)

市販の絵本をいったんばらし、透明シートに本文を点字してはさみ込んで作る、ユニバーサル絵本。

申請内容には社会の課題が凝縮。
団体への支援が組合員の益にも。

今年で誕生20周年を迎えたパルシステム東京の「市民活動助成金基金」。スタート時は、パルシステム東京の組合員がメンバーに含まれていることが申請条件のひとつでしたが、2008年にその条件が廃止され、組合員がひとりも含まれていない団体も助成対象になりました。

「自立生活サポートセンターもやい」では、電話やメールのふくめ、年間約4000件の生活相談があります。

「組合員の直接の関わりいかんを問わず、広く社会の課題に向き合っている市民団体を助成することは、俯瞰して見れば、組合員にとってのくらしやすさ、生きやすさにもつながるはず、という考え方が背景にあります」(同生協組織部地域支援課・松長乃生さん)

提出された申請書類を、社会貢献性、独自性、遂行能力、継続性・発展性、提案内容の妥当性の観点で、同生協理事や有識者、組合員から成る運営委員会が評価し、選考。年間助成総額500万円を上限に、評価点の高い団体から助成金を授与します。

企業などの助成金制度にあまり見られないのは、授与後に運営委員が助成団体を訪問する機会が設けられていること。

「組合員さんからいただいた大切なお金なので、適切に使われているか、申請通りに運営できているのかの確認は欠かせません」(松長さん)。現場に足を運び、実際に活動している人たちと話をすることで、パルシステム東京との連携の可能性を模索する意味もあります。

「毎年、申請内容を見ると、まるで社会の縮図のように感じます。リアルな社会の課題を敏感にとらえ解決に向けて努力している団体に、資金面だけでなく、生協のもっているインフラやネットワークでも支援できないかという視点も大事にしています」

2014年度、パルシステム東京の助成金で『貧困問題レクチャーマニュアル』を作成したNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」に対しては、マニュアルを広めるための講座や中高生向けセミナーの広報などをサポート。

「助成期間終了後も、継続して関わり続けてもらったり、ほかの団体との橋渡しをしてくださるのがありがたいです」(同NPO事務局長・加藤歩さん)

応援の意思がストレートに伝わる
神奈川ゆめコープ「賛助金カンパ」

一方、パルシステム神奈川ゆめコープの「市民活動応援プログラム」は2000年にスタート。同プログラムで特徴的なのは、事業の剰余金から拠出される市民活動支援金とは別に、組合員が直接団体を応援できる「賛助金カンパ」のしくみがあることです。

同プログラムは2次選考まで実施していますが、1次選考を通過した団体を組合員に配布するチラシで紹介。組合員は、「応援したい」団体へのカンパを、商品の注文といっしょに申し込めるようになっています。

「じつは、賛助金カンパは年々減少していたのですが、17年からポイントカンパを導入し、回復しました。カンパをしてくださった組合員さんには、団体からメッセージを届けたり、5月の報告交流会のご案内をしたりと、団体の存在をより身近に感じていただける工夫もしています」(パルシステム神奈川ゆめコープ機関運営部広報課課長・海野満さん)

2015・16年度の助成団体で、目の見える子と見えない子がいっしょに楽しめる絵本の普及に取り組む「ユニバーサル絵本ライブラリーUniLeaf」代表の大下利栄子さんも、「賛助金カンパは、私たちの活動の中身を知って応援しようと思ってくださった組合員さんからの直接のエールですから、より嬉しかったですね」とその意義を語ります。

現在、市民活動への助成制度をもつ単協は6つ。立ち上げから3年以内の団体に限り、通常30万円の一団体への上限額を50万円まで引き上げているパルシステム千葉、「公開選考会」という形で組合員も選考に加わるしくみをもつパルシステム埼玉など、それぞれの助成制度には、実践のなかで改善を積み重ねてきた歴史があります。

(2017年12月時点。震災復興に関する助成金を除く)

共通するのは、報告会や交流会など取り組みを広く共有する場を設け、パルシステムとだけでなく、団体間の情報交換や連携をうながす環境も整えていること。

「今年の助成団体が、『前年の助成団体から、パルシステム東京の助成金っていいわよと教えてもらった』と言っていました。市民活動の団体のなかで認知度が上がるのはうれしいですね。これからも、各団体が少しでも活動しやすいように、プラットホームの役割を果たしていきたいですね」(松長さん)

格差が広がり、生きづらさを抱えた人が増えている社会の中で、市民の手による草の根の地域活動の位置づけはますます重要になっています。商品やサービスを提供することで得た剰余金で、パルシステムの事業・運動では手が届かない活動を支援する。これこそ、温かいお金の流れといえるのではないでしょうか。

*本ページの内容は2018年2月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。