「パルシステム熊本地震支援ファンド」は、地域の復興と再生に活用されています(社会貢献活動レポート|2017年8月)

2017年8月5日

熊本県上益城郡益城町の仮設住宅。2017年6月現在、この仮設住宅に暮らす人々は約500世帯

昨年、パルシステムが呼びかけた「熊本地震緊急支援募金」。組合員から寄せられた約2億3990万円の募金の一部を活用し、「パルシステム熊本地震支援ファンド」が設立されました。

同ファンドは、熊本地震からの復興を支援する民間団体を対象に、地元で約60の団体を束ねる「一般社団法人 よか隊ネット」に加盟している14団体を助成。農業者の自立支援や避難所での居場所づくりなど、いずれも、自らの暮らす地域の再生・復興のために、気持ちや知恵を寄せ合って活動する団体です。今回はその中から3つのグループをご紹介します。

避難者たちが、安心してくつろげる場と時間を提供
〈チームおひさま〉

「熊本地震は局所的だったので、県内でも、地震は“もう終わったこと”ととらえている人が少なくありません。でも、仮設住宅に避難している人は、日を追うごとに心身の疲労が募り、消耗しているのです。本当に見守りが必要なのはこれからだと思います」と訴えるのは、助成団体のひとつ「チームおひさま」代表の浅川路子さん。

自らも被災しながら、避難所で炊き出しボランティアをしていた浅川さんは、「避難所から仮設住宅に移ってからのほうが孤立は深刻」という東日本大震災の体験者のアドバイスもあり、仮設住民を対象とするカフェ活動「和みのおひさまカフェ」を、昨年秋にスタートさせました。

6月13日、秋津中央公園仮設・みんなの家で開催された『和みのおひさまカフェ』。この日はマッサージとパステルアート教室。近隣の皆さんに好評です

「カフェの日が来るのが待ち遠しいと言われる方が大勢います。先の見通しがなかなか立たない中、今は人とつながっているという実感が何より必要。最後の一人が立ち上がるまで寄り添っているよ、という気持ちでやっています」。

ボランティアと農家をつなぎ、地域再生を
〈益城の農業をつなぐ会〉

「益城の農業をつなぐ会」も、助成が決まった団体のひとつです。同会を立ち上げたのは、益城町で90年近く続くお茶の専門店『お茶の富澤』の4代目、富澤堅仁さん。震災前から消防団や商工会青年部の役員など地域活動に積極的に携わっていた富澤さんは、農家の人手不足解消のため、ボランティアと農家をつなぐWeb上のマッチングシステムの構築をめざしています。

益城町は、お茶以外にも、さつまいも、大根、人参など露地野菜の栽培が盛んな農業地帯。ところが、震災後は高賃金の解体作業に人手がとられ、農家が求人広告を出しても、まったく人が集まらないという深刻な状況なのです。

お茶農家でもある富澤さん自身、自宅は全壊指定で、今も家族で仮設暮らし。茶畑そのものに大きな被害はなかったものの、昨年は茶摘みをあきらめかけたと言います。

「ボランティアや近所の人たちに助けられてなんとか収穫にこぎつけました。その体験から、SNS上で、依頼したい農作業を農家に登録してもらい、そこにボランティア希望者を集めることを考えたのです」。

震災の後、手伝いに来てくれた人たちと。左から3番目が「益城の農業をつなぐ会」の富澤堅仁さん

喫緊の課題は人手不足解消ですが、富澤さんが見据えているのは、さらにその先の将来像。

「行政とも連携しながら、ゆくゆくはグリーンツーリズムや農業体験などにも取り組みたい。この機会に町に興味をもってもらい、就農や移住につなげられたらいいですね」と夢を語ります。

地域に根づく米づくりと文化を継承したい
〈日本お米協会〉

富澤さん同様、「農業の復興なくして、熊本の復興はない」と、被災した米農家への支援活動を続けているのが、熊本市に拠点を置く「一般社団法人 日本お米協会」です。「地域のいとなみをつなぐしめ縄づくり事業」が、今回の助成の対象になりました。

お米の種まきは人手のいる作業。頼りにしていた親戚の家も全壊してしまい、困っていた生産者のため、人手を集めました(日本お米協会)

震災によって、田んぼや水路、機械庫などに甚大な被害を負った米農家は少なくありません。もともと米づくりの継続を迷っていた高齢者の中には、震災を機に廃業を決めた人もいます。

「使える農地が減るということは死活問題ですから。そこで農家の所得に少しでも貢献できることをと、昔このあたりで盛んだったしめ縄づくりの復活を考えたのです」と、自身米農家でもある同協会代表の森賢太さんは語ります。

しめ縄づくりの復活を知ったパルシステムの被災地支援担当者が、パルシステムのカタログでは毎年しめ縄を売っていることを伝えると、森さんは、首都圏などの都会でもしめ縄の販売ができるようになるのではないかと、ささやかな夢も抱くようになりました。

「熊本は、社会も文化も暮らしも、農業を軸に成り立ってきました。その基盤でもある農業をきちんと取り戻し強化するためには新しいチャレンジも必要です。しめ縄づくりも、パルシステムのカタログで販売させていただいたり、おしゃれなセレクトショップに並べられるようなものを作るのが目標です」(森さん)。

「熊本でも地域によって震災に対する感じ方に温度差があるなか、遠く首都圏の方が心を寄せてくださっていることが本当にありがたいです。被災者にとっては、“忘れられない”だけでも励みになります。どうかこれからも引き続き、熊本に目を向けてください」(「チームおひさま」代表・浅井さん)。

組合員から預かった大切な募金は、震災からの復興に向けて活動するみなさんの手によって、地元の人々のために有意義に活用されようとしています。

*本ページの内容は2017年8月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。