ちば緑耕舎で公開確認会を開催 「誠実さの結晶」「非効率の価値」を確認
2017年6月30日
パルシステム連合会は6月7日(水)、8日(木)の両日、千葉県印旛郡栄町で「(有)ちば緑耕舎公開確認会」を開催しました。行政や地域を巻き込み栽培法やこだわりを根付かせてきた産地の取り組みを、生産者と消費者の二者が確認しました。
パルシステム千葉主催で120名参加
公開確認会は、生産者と消費者の二者が産地で生産状況を確認するパルシステム独自の制度で、1999年からスタート。2010年度からは、会員生協主催による開催も始まり、今回はパルシステム千葉が主催しました。
17年ぶり2回目の「(有)ちば緑耕舎公開確認会」は、2日間にわたり、栄町のふれあいプラザさかえ・ふれあいセンターで開催。事前の講習会を修了した監査人と一般参加の組合員、生産者、JA役職員、生協役職員、関係者など120名が参加し、コア・フードとエコ・チャレンジ米の栽培状況や帳票などを確認しました。栄町の岡田正市町長、湯原国夫産業課長、印旛郡農業事務所の岩井幹主任上席普及指導員も来賓として出席がありました。
近隣農家の意識も変えた「あたりまえのことを、あたりまえに。」
開会にあたりパルシステム千葉の佐々木博子理事長が、「公開確認会は産地交流では知りえないことを知る機会、また理解を深め合う貴重な場。生産者と消費者で立場は違うが、めざす先は同じだと思います。思いを共有しのぞみたい」とあいさつしました。
岡田町長からは「人口減少が深刻な栄町で、農業を始め地域のリーダーとして活動いただき感謝します。特別栽培米をふるさと納税返礼品にしたら大人気で、半年で完売でした」。岩井普及指導員も「平成25年度千葉米の消費拡大推進功労者選出、農地中間管理事業への協力、地域農業の維持、発展に大変活躍してもらっている」と評価がありました。
これらに対しちば緑耕舎の大野久男代表は「ただただまじめに安全・安心を追求し、毎日稲と対話しています。この姿勢を帳票や現場で確認いただき、安心と思っていただけるとうれしい」と応えました。
続いて生産者で生産部長の杉田勉さんが、理念や作業内容、栽培のこだわり、ビジョンなどを報告しました。「農作物は自然界から奪いとるものではなく、与えられて感謝する恵み。水田のある景観を次世代に残すことも使命」として、ちば緑耕舎はこれらの思いをパルシステムとともにコツコツ実践してきました。農薬を空中散布する有人ヘリコプターを行政に働きかけて廃止。ラジコンヘリコプターによる散布も、地域の農家はちば緑耕舎の米作りに影響され、4分の1くらいに減ったということです。
今でこそ「生きもの調査」の取り組みが有名なちば緑耕舎ですが、パルシステムとかかわるまでは「興味がなかった」と杉田さん。20年近く、産地交流を通し組合員と継続するなか、「生きものが育める農法で農地を維持継承していくことが使命」と思うようになったそうです。「環境のことも勉強もさせてもらい、すごく得している感じ。生きがいみたいになってきています。めだかが全国的に少ないといわれますが、うちはどこの水路でも見られますよ」(杉田さん)。
田んぼの生きものがずらり
地域にあり続けること
高齢化や米の価格低迷のなか離農する人が増加し、ここ栄町も例外でありません。「農業の担い手をつくること、これからはその責務が私たちにも必然となる。町の存続にもつながる」と大野さんは危機感を持っています。そのために今後「離農者の農地を引き取り栽培面積の拡大。担い手となる若者を見出し、育成し地域の力になってもらう」ことを目指します。2年前には後継者0が現在2人に。昨年は1名加入。「少しずつですが希望かな。まわりの農業者から栽培法を聞かれたら、丁寧に答え、提案もしています。地域の興味ある人が加わってくれることも期待しています」。
「誠実さの結晶」「非効率の価値」
ほ場視察後、監査所見の発表が行われました。栄町在住の組合員監査人は、「ヘリが飛ぶときは外に出ない、窓を閉め洗濯物も干さないなど不安な日々だった。最近飛ばないと思ったら、ちば緑耕舎さんの尽力と知った。少しでも農薬使用が減るのはありがたい」と述べました。別の監査人は「となりの田んぼがラジコンヘリで農薬散布をするとき、自分の田んぼにかからないようお願いし、当日立会いもされ、お詫びに周辺の草刈りもされると聞き、目に見えないご苦労がたくさんあることが今回わかった」と報告しました。
生きもの調査について、パルシステム千葉理事の高橋由美子さんや㈱ジーピーエス事業本部長の工藤友明さんは、「継続しデータをしっかり残しているのは非常にすばらしい。世代を超え夢中になる生きもの調査が、社会やその問題を考える入り口になると思う。パルシステムの産直政策でも再考し、それを軸にコア・フードの米などをもっと身近なものにしていきたい」と評価しました。
工藤本部長はさらに監査人のまとめとして「千葉は消費地なので、有機とか手のかかることをして作らなくても売れると思うが、今日はみなさんも“非効率の価値”を考えさえられたのではないかと思います。岡田町長がちば緑耕舎の特裁米をふるさと納税の返礼品にしていると話されたが、その栽培は有機認証がとれるよう印旛沼の用水の浄化を大野さんが行政に働きかけたことでできた。このようなリーダー的存在のちば緑耕舎が、これからもっと地域の人たちと手を組んでいけばすばらしい町になるのでは」と期待を込めました。
監査所見を受けてちば緑耕舎の大野代表は、「今回、そんなこともやってたっけ、そんなことも評価してもらえるんだと、あらためて発見がありました。これからも組合員のみなさんやパルシステムの産直産地の仲間のみなさんに支えていただきながら、またステップアップしていきたいと思います」と結びました。
杉田勉さんのほ場を視察