日本の保存食を次世代へつなげる取り組み(社会貢献活動レポート|2016年1月)
2016年1月1日
10年を迎えた「手作り梅干し」
梅干し、みそ、漬け物――。日本では昔、各家庭で作られ“わが家の味”だった食べ物があります。それが高度経済成長期、集合住宅をはじめとする建築設計の変化などもあって、保存食の貯蔵スペースは家から消えました。保存食文化は隅に追いやられつつあります。
こうした手作り保存食を「次世代につなげたい」という想いから、パルシステムではカタログやホームページを通じて、改めて家庭でのチャレンジを呼びかけています。「梅しごと」をめぐっては、収穫期である初夏に梅干しや梅シロップ、梅酒などのレシピを紹介。電話相談や体験会なども実施し、初めてでも上手に作れるようにサポートしています。そうしたなか、組合員から手作り梅干しを募集し、生産者など「梅のプロ」がアドバイスする「手作り梅干し交流品評会」(2015年名称変更)は、2015年で10周年を迎えました。
この10周年目企画「産直ごはんがおいしい!みんなの梅干し交流会」が、2015年11月、パルシステム連合会の東新宿本部で開催されました。参加したのは、梅干し作りに関心のある組合員54人のほか、産直産地の梅生産者、梅干しに欠かせないごはんを提供する米生産者など、総勢103人。抽選にもれて参加できなかった組合員も多くいます。パルシステムからは、配送センターなどで業務終了後の時間を使ってチャレンジした委託会社社員や会員生協の職員たちも参加しました。
初挑戦で10kg漬ける人も
生産者も組合員も互いを知る
交流会では、参加者が自宅で漬け込んだ自作を持ち寄り、それぞれの「自信作」を味見しながら語り合います。
参加した組合員のひとりは「今年初めて挑戦しました。たくさん漬けてしまったので土用干しのスペースがなく、車の屋根で干しました」とエピソードを語り、座を盛り上げていました。パルシステムでは、気軽に始められるように1kgでのレシピを紹介していますが、「赤梅干しと白梅干しを5kgずつ、合計10kg漬けました」と話すと、会場からは驚きの声が上がっていました。
また、別の組合員は「傷ひとつない果実を収穫することの大変さを知ってほしい」と訴えます。「葉が擦れただけで、果実は傷がついてしまいます。産地では、きれいなものだけを届けてくれるのです。ほかの果物でも、酸味が立ちすぎていたり、甘みが足りなかったりすることがあります。それを“旬の味”として楽しむ気持ちを持ってください」との言葉には、生産者のみなさんも大きくうなずいていました。
生産者も組合員が独自の工夫を凝らしていることに感心していて、「産地での梅干し作りは100kg単位が普通で、1kg単位だと逆に難しく感じます。それでも、みなさんこれだけおいしく漬けられるなんて勉強になりました」。生産者にとっても、栽培した梅がいかに大切にされているのかを知る機会になっています。
梅干し交流会の感想
配送委託会社から
パルシステム埼玉 草加センター
(株)ロジカル草加事業所 水澤 敏男所長
毎年カタログの作り方に沿って作っていましたが、交流会で組合員や産地の方々のいろいろな作り方を教わり、勉強になりました。次年度の梅干し作りに役立てたいと思います。(株)ロジカルでは、梅干しやみそ作り以外にも、横浜北事業所近隣の畑(ロジカルファーム)にて野菜作りをしています。生産者の想いを組合員にお届けできるよう、産地へも訪問しています。今後も、パルシステムの商品を安全・安心にお届けしていきます。
会員生協から
パルシステム東京 商品・産直政策推進室
渡辺 茂雄さん
今回手作り梅干しに挑戦した理由は、手作りを実感することで組合員との関係(接遇)を向上させるため。任意ながら多くのセンターが挑戦してくれました。交流会には「おいしい梅干しを作る」という共通の想いを持った組合員が参加されていて、そういう集まりは盛り上がって楽しく、苦労もありますが、これからも続けていこうと励まされます。梅干しだけでなく、みそなどでも開催し、「パルでよかった」を実感してもらえたらと思いました。
「実は簡単」でじわり広がる
申年は梅干し作りの吉年!
パルシステムでは、梅干し以外にも、みそやぬか漬け、干し野菜などの日本の食に欠かせない手作り保存食を提案しています。そのおかげか、手作り保存食の輪はじわじわと広がっています。
みそ作りでは、原発事故で居住できなくなった福島県飯舘村で作り続けられてきたみそを「種みそ」として活用し、作り続けることで次世代へ受け継ぐ「みその里親」プロジェクトに参加する組合員が増えています。
ぬか漬けも、整腸作用や代謝促進、免疫強化といった機能性があると言われる発酵食品を手軽に作れるとして、改めて社会の注目を集めています。
こうした手作り保存食が、交流会では“わが家の味”として語られていました。「わが家では、漬けた翌日に子どもが『もうできたかな』ってふたを開けようとして」「最近は、漬けたことのない母が興味を示すようになりました」――それぞれの家庭で忘れられない思い出が作られています。
「申梅(さるうめ)」という言葉をご存知でしょうか。申年に漬ける梅は、縁起がいいという言い伝えです。その起源は古く、平安時代にまでさかのぼります。村上天皇が病にかかった際、申年に漬けた梅干しと昆布茶によって回復したことによるそうです。2016年の申年。みなさんも、今年こそ、梅干し作りに挑戦してみてはいかがでしょう。
*本ページの内容は2016年1月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。