パルシステムのエネルギー政策 「減らす・止める・切り替える」ためにできること(社会貢献活動レポート|2013年3月)

2013年3月1日

パルシステムは2012年1月、パルシステムエネルギー政策を制定しました。エネルギーの使用を「減らす」、原子力発電を「止める」、エネルギーをすみやかに再生可能エネルギーへ「切り替える」の3つを進め、生活者が自らの意思でエネルギーを選択できる社会をめざします。その代表例が、3月に杉戸センターで完成を予定している大型太陽光発電施設の導入です。さらに、再生可能エネルギーを活用する可能性を探るため、パルシステムでは昨年10~11月の7日間、環境先進国といわれるドイツとデンマークへ視察団20名を派遣しました。
日本で、生活者が運営する生活協同組合として、私たちはエネルギーを「減らす・止める・切り替える」ため、何ができるのでしょうか。

昨年の欧州視察の様子。地域で運用される再生可能エネルギー施設の事例を学びました。

環境エネルギー政策研究所
船津 寛和さん

風車が林立する環境先進国
再生可能エネルギーは「当たり前」

昨年の10月28日から11月3日にかけ、パルシステムが視察団を派遣したドイツとデンマーク。環境先進国とも呼ばれる両国では、風力や太陽光、バイオマスなど自然の資源を活用した再生可能エネルギーの普及が進んでいます。

「視察団のメンバーはみな、時間の許す限り質問していました。両国ではそれだけ、再生可能エネルギーの活用が当たり前になっているのです」と、視察に同行した環境エネルギー政策研究所の船津寛和さんはふり返ります。

視察団は、ドイツのフェルトハイム村とデンマークのサムソ島、コペンハーゲンの3カ所を訪問。首都のコペンハーゲンをのぞく2カ所は、人口は少ないながらも消費エネルギーのすべてを再生可能エネルギーでまかなっており、欧州のなかでもモデル地域となっています。

これらの視察を通じて見えてきたのは、「コミュニケーション」「コスト」「熱利用」の3つのキーワード。「このなかには、パルシステムが大きな役割を果たせる可能性も含まれているのではないでしょうか」と、船津さんは期待します。

地元が出資・運営が原則
じっくり議論し、みんなが幸せに

視察団がもっとも重要だと認識したのは「コミュニティ」でした。風車をはじめとするエネルギー施設を建設する際、視察した地域ではまず地元住民から出資を募ります。そうすれば、出資金を回収するためにも、生活に悪影響を与えないためにも、住民は施設に対して関心を抱かざるを得ません。一人ひとりが議論に参加し、納得したうえで建設を開始します。これは、建設時だけに限ったことではなく、稼働が開始されてからも、議論の場は継続して設けられます。

この3点は「コミュニティ・パワーの3原則」と呼ばれ、「この3原則が守られれば、稼働後の騒音などが大きな問題になりません。そうなる前に話し合われているからです」(船津さん)。そのかわり、地域の合意は時間を惜しまず、じっくり話し合うそうです。

ただし、こうしたしくみが機能するのも、出資したお金が安定して運用される制度があるからにほかなりません。ドイツやデンマークの電気料金は日本より安価ですが、税金を上乗せすることで日本と同等かやや高い程度になっています。再生可能エネルギーを導入すれば、固定価格買取制度によって経済的なメリットが生まれるようになっているのです。出資したお金が利子によって還元され、さらに地球環境にも有益となれば、再生可能エネルギーの普及が進むのもおかしくありません。

使わないことがいちばんのエコ
エネルギー効率を全体で考える

もうひとつ、船津さんが注目したのが「熱利用」です。電気は多くの場合、熱を発生させて作られます。熱を電気に転換し、その電気を使用して暖房や給湯に使用するより、熱をそのまま使用した方がエネルギー効率は高まります。フェルトハイム村やサムソ島では、耕作や畜産で発生する副産物などを発酵させてメタンガスを作り、それによって温められたお湯を循環させ、暖房や入浴などに使用しているそうです。

「都市なら太陽熱を中心に、農村部では農畜産業の副産物を農業用の暖房などに使用することは現状でも導入可能です。たとえば、産直産地の生産者のみなさんへの導入を支援してはどうでしょうか」と、船津さんは提案します。

そのほか、住居などの建設物に断熱性の高い資材を使用することで、エネルギーの使用量を削減する対策も積極的に取り入れています。「実は、これがもっとも大事なことです。そもそもエネルギーを使用しないことが、もっとも環境負荷が少ないし、コストもまったくかからないのですから」。視察先では、エネルギー使用削減についての教育も徹底しています。

パルシステムに期待される
相談窓口と「組合員の力」

では、これらの視察の内容をパルシステムではどう生かせるのでしょうか。

「まずは事例を共有し、その情報を提供するような相談窓口になることです」と、船津さん。やりたくても「お金の集め方や分配のしくみが分からない」「どういった方法があるか分からない」という人や団体をサポートする体制は、日本にはあまりありません。欧州では、サムソ島にある「エネルギーアカデミー」が、その役割を果たしています。地域とつながる生協だからこそ、情報拠点としての期待が高まります。

次に期待されるのが「組合員の力」です。「再生可能エネルギーの建設に組合員から出資を募り、生み出された利益を還元する『コミュニティ・ファイナンス市民出資』のしくみは、国内でもすでに始まっています。現状でも、出資金は普通預金の金利より有利に運用されており、しかも『自分のお金を有意義に活用できる』と好評です。パルシステムが、産地などと共同して発電施設を設置し、組合員が出資する枠組みを確立できれば、社会に対する大きなうねりになると思います」。

原子力発電に代わるエネルギー創出の動きは、急速に進んでいます。パルシステムのエネルギー政策には、将来、再生可能エネルギーによる「エネルギーの産直」を実現する可能性が秘められています。

パルシステムグループの再生可能エネルギーをめぐる取り組み

*本ページの内容は2013年3月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。