元気なシニア層にも好評 安否確認もできる千葉の「夕食宅配」(社会貢献活動レポート|2012年8月)

2012年8月1日

パルシステム千葉が2011年6月から本格的にスタートさせた夕食宅配は、開始後1年で1日あたり、約1700食を届ける規模に成長しました。今年度は、3500食を目標に利用者を拡大中です。買い物に出ることが難しい高齢者用のサービスと思われがちですが、利用者の中心は観劇や運動などの時間を楽しむ「元気な高齢世帯」なのだそうです。もちろん、買い物に出にくい高齢者や、時間や手間を節約したい単身、もしくは共働きの家庭からの登録も順調です。産直品をはじめとする食品を届ける事業を行ってきた生協にとって、夕食宅配はどのような役割を地域や個人に果たすことができるのでしょうか。パルシステム千葉市川センターを訪問し、その可能性について取材しました。

夕食を受け取る組合員の武内美代子さん

配達スタッフもシニア層の力を借りています

パルシステム千葉
夕食宅配事業課
課長 田中 聡さん

ひとりぐらしは準備が面倒
おっくうな食事が楽しみに

市川市に住む武内美代子さんは、市川センターで夕食宅配を開始した2011年10月から利用している組合員です。「以前は大人数の家族だったので、買い物に行くとつい余計に買ってしまっていました。今はひとりですから、品数を作っても余ってしまいますし、とても助かっています」と話します。

パルシステム千葉の夕食宅配は月曜日から金曜日まで、毎日午後に届けます。品ぞろえは、6種類の惣菜が入った「生協の健康おかず」と、5種類の惣菜にごはんが入っている「生協の健康和膳弁当」の2コース。食材は15品目以上を使用し、魚や肉、野菜をバランスよく、日替わりで届けています。弁当に使用している米は、パルシステムの産直米です。

不在の場合は、個配と同じく軒先など決められた場所に置いていきます。シッパーには保冷材が入っており、食事のときは電子レンジであたためて食べてもらいます。

献立は事前に決まっていますが「どんな料理が届けられているかが楽しみで、ふたを開けたときは毎日『わあ』ってなります」(武内さん)。

旅行が好きという武内さんですが、それ以外にも観劇や運動など趣味も多彩。外出する機会も多いそうです。「そんなときは、家に帰ってからの食事が悩みの種でした。その心配をしなくていいので、時間を忘れて楽しむことができます」と話します。今では友人にも夕食宅配を紹介し、会ったときには「昨日のごはんは―」と、話題の種にもなっているそうです。

想定しなかった多様な利用層
「血液検査の結果がよくなった」

「夕食宅配と聞くと利用者は『買い物に行けないお年寄り』を想像しがちですが、実態は異なります。むしろ元気な人が多いですね」と、宅配事業を担当するパルシステム千葉夕食宅配事業課長の田中聡さんは説明します。

少人数の世帯では、5種類ものおかずを作るとどうしても余ってしまいます。とはいえ毎日の食事は、日常の楽しみのひとつ。栄養バランスが考えられ、なおかつ彩りや味わいが楽しめる夕食宅配は、多様な需要がありそうです。「ほかにも出産直後の世帯や若い夫婦ふたりぐらし、単身世帯などにも、もっと受け入れられる余地はあるのではないかと検証しています」(田中さん)。

武内さんも「栄養バランスがいいからか、量を食べ過ぎないですむからか、3カ月に1回行っている血液検査の結果がよくなりました。お医者さんから『何かしましたか』と聞かれたくらいです。でも『夕飯を作るのをやめた』なんて言えません」と笑います。

ほかにも会社の職員寮から「調理する人が急きょ退職してしまったので、手配できないか」などの問い合わせもあるそうです。田中さんは「できるかぎり多様な要望に応えられるよう、きめ細かく対応しています」と話してくれました。

地域にも貢献―
安否確認や定年退職者雇用

夕食宅配には、独居の高齢者とその家族を対象にした安否確認制度も設けられています。容器を回収した際に料理に手がつけられていなかったときはただちにセンターへ連絡し、あらかじめ登録された緊急連絡先へ知らせるという仕組みです。

食事がそのままだったケースは今までもありましたが、それらはすべて「食欲がなかった」「外出していた」などの理由で、大事に至ったケースはありません。「しかし、毎日訪問するサービスなので、安否確認は必要だと考えています」と田中さんは話します。

宅配サービスの利用者は、65歳以上が8割を占めます。活発な人が多いとはいえ、現在は元気でも、10年後、20年後を踏まえれば、安否確認の役割もこれから重要になっていくでしょう。

配達する職員も、定年退職した地元住民のみなさんへお願いするなど、地域に根ざした活動としています。「配達時間が昼過ぎから夕方となり、フルタイムではないこともありますが、都心に勤めていた方が『地元に貢献したい』との理由で希望する人も少なくありません」(田中さん)。

山積の課題もひとつずつ改善
「生協らしさ」かなえるため

夕食宅配サービスを利用しだした当初は、「今だから言えますが『これはどうかな』と思うこともありました」(組合員 武内さん)。しかし、改善が重ねられ、今では近隣の友人にも自信をもってすすめられると言います。

今後の課題は、いかにパルシステムらしさを出せるか。「『生協だから信頼できる』と申し込んでくれる人もいます。だからこそ、できるだけ加工品でなく手作りの惣菜に切り替えていくなど、製造の委託先とは絶えず改善へ向け話し合っていますが、まだ『パルシステムだからできる』というアピールポイントにはなっていません」(田中さん)。

夕食宅配をめぐっては、複数のサービスを申し込み、一定期間ごとに注文先を替える利用者も少なくないそうです。そうなると必然的に競合先と比べられます。「献立の多彩さや盛り付けのいろどりなど、改善しなければならない点を挙げればきりがありません。それを一つひとつクリアして、利用するみなさんが楽しみに待ってくれる内容にしていきたいですね」。

パルシステム千葉では今秋、夕食宅配の大きな改善も計画しています。商品の品質を向上させるほか、月曜日から金曜日までの5日間を通して受け取らなければならない現状から曜日を選択できる仕組みへの変更なども検討しています。「ある雑誌を見ていたら、もやしを使用したレシピだけでも100種類以上ありました。まずは味のバリエーションを広げ、飽きのこないメニュー作りを進めます。さらに、旅行などで一時的に留守となることに対応できる仕組みができないか、検討しています」と、田中さんは説明します。

産直品をはじめとする食材の配達と、完成された食事の配達では、利用者が持つ食への関心も異なるかもしれません。これらをいかにつなげ、いかに地域で貢献していくか。パルシステム千葉の挑戦は、始まったばかりです。

 

「夕食宅配」を利用した安否確認

高齢者自身や、高齢者のご家族と離れてくらしているという人を対象にサービスを提供しています。ご家族からも好評を得ています。

◆独居の高齢者宅の場合
・箱を開けた形跡がない
・料理に手がつけられていない
回収時に、このような状態を確認。

ただちにセンターに連絡し、あらかじめ登録された緊急連絡先へ知らせます。

*本ページの内容は2012年8月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。