“共済”は組合員同士の助け合い 竜巻被害に真価を探る(社会貢献活動レポート|2012年7月)
2012年7月1日
2012年5月6日、茨城、栃木両県で強い竜巻が発生し、2千棟以上の建物が被害にあいました。パルシステム茨城では、パルシステム共済連と連携して組合員宅への訪問活動を実施。組合員やその家族の安否を確認すると同時に、共済に加入している組合員へ共済金の請求を案内しました。パルシステムが取り扱うCO・OP共済《たすけあい》では、今回の竜巻をはじめとした住宅災害にも見舞金をお支払いできる場合があります。組合員からは「知らなかったからうれしい」「対応が早くて助かります」といった声が寄せられました。訪問活動に同行し、CO・OP共済《たすけあい》の真価について取材しました。
むなしく響く呼び出し音
電話まで吹き飛ばされた
竜巻でもっとも大きな被害を受けた茨城県つくば市の北条地区。竜巻は地域の中心街を通り抜けていきました。
「この地区は筑波山参拝の門前町として、江戸時代から栄えた歴史ある土地。旧家も多くてきれいな街並みだったのに、こんなになってしまうなんて」。訪問活動に参加したあるパルシステム茨城の職員は、訪問先で聞いたという組合員の言葉を教えてくれました。
被害を受けた建物は、青いビニールシートに覆われ、建物によってはその面影すらありません。以前から廃屋だったのではと勘違いするほどでした。壁や塀には、スプレーで吹き付けられたかのように土砂が付着し、高圧洗浄機で水洗いしてもなかなか汚れが落ちず、頭を抱える作業員の姿が見えました。しかし、その建物から数十メートル離れた家屋では、軒先に洗濯物が干してあり、ふだんどおりの生活が営まれています。ほんのわずかの距離が、被害の明暗を分けました。
パルシステム茨城では竜巻発生の翌日から、被害にあった地域に住む組合員に対して電話による安否確認を実施。たいていは連絡がついたのですが、何度呼び出してもまったく電話に出ない組合員もいました。「電話線があっても電話が吹き飛ばされていたそうです。呼び出し音が鳴ったから留守だと勘違いしました」と、担当職員は話します。
訪問活動は心のケアにも
訪問活動は竜巻発生から1週間後に実施しました。「直後に訪問しても被害にあった家の片付けなどでお忙しいと判断し、1週間後に設定しました」と、パルシステム茨城で共済業務を担当する古谷廂子さんは説明します。
訪問当日は、茨城県生協連などの団体がボランティアを派遣したことで、飛ばされた家財道具や屋根、壁の一部などは一定片付き、道路も車が通れる状態となっていました。「竜巻が通過した直後は道路も通れなかった状態だったそうです」(古谷さん)。パルシステム茨城とパルシステム共済連で構成する訪問職員4名、および10名の安否確認チームは、2人1組となり、100戸あまりの組合員宅を徒歩で訪問しました。
「ひょうがパラパラ降ってきたと思ったら、2階にいた主人が『竜巻が来る、ものかげに隠れろ』と降りてきたの。そしたら飛行機が飛んできたかと思うほどのごう音に囲まれて、それからは柱につかまるのが精一杯。必死だったわ」。訪問した組合員のひとりは、そう振り返りました。家は柱と内壁が残っている状態ですが、ビニールシートで覆ってなんとか寝泊りしています。雨が降ったら、夜も交代で雨漏りしないようにビニールシートにたまった水を流さなければなりません。「窓も割れて台所にしまっていたものまでみんな吹き飛んじゃった。もうしょうがないって割り切るしかないわね」。
話をするうちに、被災した組合員の顔がやわらぎました。訪問活動は、単なる安否確認ではなく、被災した組合員に寄り添い、話を聞くことが心のケアにもつながっています。
《たすけあい》加入でも
住宅災害の見舞金お支払い
こうした災害の際、CO・OP共済の《たすけあい》や《あいあい》では、見舞金(住宅災害共済金)をお支払いできる場合があります(ジュニア18コースは対象外)。金額はコースや被害程度により3万円から60万円(募集停止コース除く)。「修理や建て直し費用を考えれば、決して大きな額ではないのですが、加入している組合員からは『ありがたい』『助かった』との声を多くもらっています」(古谷さん)。
《たすけあい》《あいあい》は、けがによる通院、けがや病気による入院、手術などの場合に共済金が支払われる「生命共済」です。それなのになぜ、竜巻や火災などによる住宅災害にも支払われるのでしょうか。「共済は、組合員同士の助け合いとして生まれた制度です。『掛金を困った人に役立てる』という精神が根底にあるからではないでしょうか。」と、古谷さんは説明しました。
実際、訪問活動で説明を受けた組合員のなかには、住宅災害の見舞金を受け取れることを知らなかった人も少なくありませんでした。未加入だった組合員のなかにも、さっそく加入の資料請求を希望される方もいました。古谷さんは助け合いの輪が広がる手応えを感じています。
見舞金を「義援金として寄付」
共済が育むお役立ちの心
加入者1軒1軒を訪ねて被害状況を確認する作業は、生協の共済が大切にしている活動のひとつ。職員が被害にあった組合員宅を訪ね、その場で状況を確認し判定します。今回の竜巻ではまず、1回目の訪問で被害にあった組合員の全体像を把握し、翌日に再訪問し共済金の請求を受け付けました。そうすることで、共済金をスピーディに支払うことができます。
東日本大震災では、被災した組合員へ「異常災害見舞金」が支払われました(※)。そのときも各地の生協から職員が派遣され、組合員宅や避難所を訪問し、共済金の請求を受け付けました。つくば市北条地区は、東日本大震災でも少なくない被害を受けました。訪問先では「竜巻が来た前日に、ようやく屋根を張り替えたところでした。おかげで、竜巻の被害は少なくてすみました」という組合員や、震災で家を建て替えた組合員からは「生協からもらった見舞金は、建て替えが無事終わったときに震災の義援金として寄付させてもらいました」という組合員もいました。
支払った掛金を困った人に役立てるのが、生協の共済です。訪問活動では、訪問した職員が「わざわざ来てくれてありがとう」と声をかけられることもあり、「逆に元気をもらっちゃいますよね」と古谷さんからも笑顔がこぼれます。困った人に会いにいく、会いに来てくれた人に感謝する、そんな心遣いのつながりが、共済という制度に込められ、組合員の支えや力となっています。
※配送担当者の「声かけ」が役立つきっかけに
パルシステムグループの東日本大震災におけるCO・OP共済支払い実績は、異常災害見舞金/2823件・6147万円、震災による支払共済金/56件・346万円(2012年4月27日時点)。”配送担当者の声かけ”が共済に加入のきっかけになり、今、未曾有の災害で困っている組合員に役立っています。「伝える」「呼びかける」行動は生協に携わる者としての役割であり責任です。これからも「助け合い」の輪を広げていきましょう。
*本ページの内容は2012年7月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。