地元の飼料米で育つ『パルシステム千葉のこめ豚』 広がる耕畜連携の取り組み(社会貢献活動レポート|2012年3月)
2012年3月1日
パルシステムでは資源循環型農業をめざし、耕作と畜産の連携―「耕畜連携」に取り組んでいます。この取り組みのひとつである、飼料用に栽培した米を豚に与えて育てた『日本のこめ豚』は2008年に発売して以来、組合員からも支持を得て利用を広げてきました。さらには、こめ鶏やこめたまごなど、産地や品目も拡大しています。
パルシステム千葉でも2010年から、『パルシステム千葉のこめ豚』を発売しました。注文数は年々増加しており、2012年度は一千頭規模を計画しています。この取り組みについて取材しました。
都市近郊型養豚を模索し
出会った飼料用米
「人間だって、うどんと思って食べたものがそばだったら『えっ』となるでしょう。豚も同じですよ」と、北見畜産の北見則弘さんは切り出しました。豚もこれまで食べていた飼料に米が入っていたら、違和感を感じるのではないだろうか。この取り組みでは、配合した米を「豚が食べるか」という心配がつきまとったのです。
今回取材した北見畜産は、パルシステムの豚肉の産直産地。千葉、神奈川両県の産直産地で「首都圏とんトン協議会」を組織し、協力しながら豚肉を生産しています。以前から協議会では、都市近郊型養豚の可能性を探ってきました。北見さんが行き着いたのが、地元で作った米(飼料用米)を食べた豚肉の生産。「豚が食べてくれるか」というのは重要な問題でした。
豚は生まれてから出荷するまでおよそ180日かかります。『パルシステム千葉のこめ豚』は、パルシステムの『日本のこめ豚』と同様、出荷前の約60日間、飼料全体のうち10%を米に代えて給餌、飼育したもの。「10%だと、豚にとってそれほど違和感はないのでしょう。ほっとしました」と、北見さんは豚を見る目を細めながら言いました。 そうして2010年から、パルシステム千葉の限定商品『パルシステム千葉のこめ豚』の生産が開始されました。
地元の米を食べた豚を
地元の人が食べる
首都圏とんトン協議会の生産者のみなさんは20年ほど前から、都市近郊型養豚のあり方について研究していました。そのひとつが、食品工場で生まれる食品残さを飼料に活用した「エコフィード」です。その一環として、豆腐工場で発生するおからの有効利用に着目。乳酸発酵させた「おからかす」を豚に与える実験を行ったことがありました。
「人間からするとおいしそうなにおいなんだけれど、豚にとっては腐ったにおいに感じるのでしょう。小さいころから与えた豚は比較的食べましたが、成長した豚はより分けて食べるくらいでした」。食べる豚と食べない豚がいると、当然個体差が出てきます。それは肉の味が変化することにもつながります。ほかにも事情が重なり、エコフィードの実現はいったん棚上げとなりました。
そんなときに舞い込んできた話が、飼料用米の活用です。地元、市原市の若手生産者から提案があり、導入を決意しました。「当時、飼料用米は使う人がいなければ作ることができませんでした。地元で作った飼料を地元の豚が食べ、そこで生産される豚肉を地元の人が食べれば、余計なエネルギーを使わない一種の資源循環になります。当面は赤字を覚悟して、協力することにしました」(北見さん)。現在は、地元市原市の生産者「さんわ担い手組合」とパルシステムの産直産地「サンドファーム旭」で収穫された米を使用して育てています。
〝地元同士〟のつながり
共感が利用へ
この試みは、パルシステム千葉と連携することで『パルシステム千葉のこめ豚』として商品化されました。生産規模は、1年目の2010年が250頭だったのに対し、2年目の11年は500頭へと倍増。3年目の12年はさらに倍の1千頭を計画しています。「2年目の11年は注文受付期間が東日本大震災と重なったことから影響を受けましたが、最終的には計画を超える注文がありました」と、パルシステム千葉で商品を担当する北出幸弘さんは語ります。
パルシステム千葉では現在、春と秋の2回、商品を企画し、1回の注文で6回(隔週)にわたって商品を供給する受注登録制をとっています。注文受付に際しては、各配送センターで学習会を実施し、全職員が商品の特性を学んでいます。「職員が直接説明することで、組合員のみなさんに共感してもらっているようです。地元同士がつながっているという分かりやすさも、利用に結びついているのではないでしょうか」と北出さんは推測します。
パルシステム千葉では10年度、組合員によるサポーターグループも立ち上げ、産地の視察や体験などを実施しました。サンドファーム旭での稲刈りなどにも参加し、今では熱心なファンになってくれた方もいるといいます。配送センターなどで実施する組合員向け学習会では、講師として活躍している組合員もいるそうです。
学習会などでの試食も好評で、子どもからおとなまで、「甘みがある」「あと味がすっきりしている」など、高い評価をもらっているとのことでした。
共感の輪を広げるために次の課題は
これまで順調に推移している『パルシステム千葉のこめ豚』ですが、今後の課題として「いかに取り組みを広げられるか」がありそうです。北見さんは「現在の生産体制では年間1千頭が限界」といいます。
その理由のひとつは米の保管です。北見畜産で使用する飼料用の米は、約26t。そのすべてを農場内の倉庫で保管します。人が食べる米は温度管理された低温庫で貯蔵されますが、そこまでの設備を導入するわけにはいきません。そのため、米に虫が発生しやすい夏場までには米を使いきらなければならないのです。
給餌用の設備も、そのひとつです。北見畜産では自前の製粉機を使用しているため、毎日3時間かけて米を粉末状にしています。1日に使用する米の量は、880kgにもおよび、作業量は小さくありません。
さらに豚の飼育は成長にあわせて豚舎を移動しなければなりませんが、通常飼育の豚と米を与えた豚を同時に育てると、その管理が複雑化し、豚にストレスを与えることにもなりかねません。先述のとおり、豚はデリケートな生きものです。ストレスは肉質に影響しやすく、せっかく育てても「健康でおいしい豚肉」にならなければ報われません。
千葉で広がる共感の輪を、さらに広めるためにはどうしたらいいか。「いかにして次のステップへ進むか」は、北見さん、北出さんとも口をそろえる課題です。
パルシステム神奈川ゆめコープ限定
パン豚の商品化も間近!
首都圏とんトン協議会の神奈川県の産地とパルシステム神奈川ゆめコープでは、『藤沢のすくすくパン豚』(仮名)の商品開発を行っています。パルシステムのパン製造子会社パルブレッド(東京都八王子市)で発生するパンの切りくずや、型崩れなどで商品として供給できないものを豚に与える企画です
現在、商品化へ向けた検討が続いています。早ければ秋にも、パルシステム神奈川ゆめコープ限定商品として発売予定です。
*本ページの内容は2012年3月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。