食料自給率向上の取り組みを評価 フードアクションニッポンアワードで最優秀賞を受賞(社会貢献活動レポート|2010年4月)

2010年4月1日

パルシステムが食料自給率向上に取り組んでいる「100万人の食づくり」運動。この取り組みが今年1月「フードアクションニッポンアワード2009」の「製造・流通・システム部門」で最優秀賞を受賞しました。同賞は、食料自給率向上をめざす国民運動「フードアクションニッポン」の一環として制定されています。1204件の応募があり、審査の結果、「100万人の食づくり」運動とフードマイレージキャンペーンを展開するパルシステムが選ばれました。フードアクションニッポン推進事務局の芳野忠司事務局長は「食料自給率向上という方向性がぴったり一致していました。今後はパートナーどうしがつながり、ビジネスベースでも広がってほしいですね」と期待しています。

2009年10月4日、さいたまスーパーアリーナにて開催された「100万人の食づくり」フェスティバルにて

フードアクションニッポン推進事務局
芳野忠司事務局長

幅広い参加を呼びかける
国民運動フードアクションニッポン

「フードアクションニッポン」は、食料自給率が40%を割り込んだことが分かった2008年11月、農林水産省を中心に立ち上げられた国民運動の名称です。「自給率向上のためには生産者だけでなく、加工、販売、消費などが広く連携しなければ実現しない」という考えから広くパートナーを募り、現在では2500を超える企業、団体が登録しています。なかには農機メーカーや旅館・ホテル、自治体なども名を連ねます。

「運動の狙いのひとつは『気づき』です」と、芳野さんは説明します。「たとえば、町にあるパン店で『国産小麦粉使用』がウリだったとします。味や品質、安全性などから『国産小麦粉』をアピールしながらも、売り手も買い手も食料自給率の貢献に気づいていないことがあります。『おいしいから食べている』『安心だから食べている』ことが、実は食料自給率向上に寄与することを気づいてほしいのです」。

フードアクションニッポンでは、ホームページやテレビCM、ポスター掲示などで食料自給率の向上への行動を消費者へ呼びかけています。しかし近年、デフレという言葉に象徴されるように低価格を重視する消費行動が優先されているとも言われています。これに対し芳野さんは「消費者がすべて価格だけで商品を選んでいるわけではありません」と反論します。

「ある調査では、多くの消費者がおいしさや健康はもちろん、『日本を元気にしたい』『社会に貢献したい』という願望も持っており、価値さえあればある程度高くても『買う』と回答しています。背景をみなければ当然安いほうを選びますが、ストーリーをしっかり打ち出せば、支持を得られるのではないでしょうか」。そのためには、生産者と消費者をつなぐ地道な活動がもっとも重要だと芳野さんは力強く語ります。

産直たまごの産地トキワ養鶏が
大賞と農林水産大臣賞を受賞

フードアクションニッポンアワードは、こうした活動の一環として制定されました。応募要項の趣旨にはこう書かれています。

「食料自給率向上に寄与する事業者・団体等の取組みを一般から広く募集し、優れた取組みを表彰することにより、食料自給率に向けた活動を広く社会に浸透させ、私たちや未来の子供たちが安心しておいしく食べていける社会の実現を目指すものです」(原文まま)。

募集は「プロダクト部門」「製造・流通・システム部門」「コミュニケーション・啓発部門」「研究開発・新技術部門」の4部門に分かれ、それぞれの部門から最優秀賞と優秀賞が、全体から大賞と農林水産大臣賞が選ばれました。そのなかでパルシステムは「製造・流通・システム部門」の最優秀賞を受賞しました。

ちなみに大賞と農林水産大臣賞には、パルシステムのたまごの産直産地である常盤村養鶏農業協同組合が、飼料用米の活用が評価されて受賞しています。また、パルシステム連合会茗荷谷本部の隣に出店している「おとうふ工房いしかわ」もプロダクト部門で優秀賞を受賞しました。

フードアクションニッポンアワード受賞者の記念撮影(前列右から2番目がパルシステム連合会若森資朗理事長)

これまでの歴史と実績
メッセージ力が評価を受けました

パルシステムの受賞について芳野さんは「優劣をつける目的ではありませんし、実際応募されたどの取り組みも甲乙つけがたいものでした」と前置きしながら、「パルシステムの『100万人の食づくり』運動と『フードマイレージ・キャンペーン』は、食料自給率向上という方向性がぴったり一致していましたし、パワーが突出していました」と評価しました。

とくに評価が高かった点について、社会へのメッセージ力を挙げました。「『100万人の食づくり』フェスティバルやカタログ、チラシなどを通して、メッセージに一貫性がありました。応募のなかにはまだ取り組みが浅く『これから』という印象があるものもありましたが、パルシステムの取り組みには歴史も実績もあり安定感がありました。ある意味『実り』を感じます」。

パルシステムでは、産地との交流を30年間にわたって続けています。交流だけでなく産地と産直協議会を組織し、産直原料を使用した加工品の開発といった地域を活性化する活動にも積極的に取り組んでいます。『うめてば豆腐(ブロー豆腐)』に代表されるように、すでに組合員にとってなくてはならなくなった商品も少なくありません。こうした商品一つひとつを利用することが、食料自給率を高めることにもつながり、今回の受賞となりました。

運動をさらに実りあるものへ
今後はビジネスベースでの連携を

最後に芳野さんに、今後パルシステムへ期待したいことを挙げてもらいました。「パートナーどうしの結びつきが強まってくると、うれしいですね」。先日行われたパートナーの集まりでは、メーカー2社が「提携していこう」という話になったそうです。「食料自給率向上という志を持ってせっかく集まってもらっているのに、ただそれだけでは長続きしません。足りないもの補い合い、互いにビジネスベースでも伸びるような“WINWIN”の関係を築ければ、フードアクションニッポン運動も盛り上がると思います」(芳野さん)。

また「フードアクションニッポンという運動の認知は、まだまだ足りないと感じています。一方、パルシステムには『100万人の食づくり』運動をはじめ、多くの実績と歴史があります。受賞を広くピーアールしてもらい、フードアクションニッポンが真の国民運動となるための協力をお願いします」と強調しました。

食料自給率が向上することは、担い手不足といわれる生産者の増加につながります。増産された生産物が国内で加工、販売されれば、それに携わる雇用が生まれます。こうした考えから、パルシステムでは2010年度も「100万人の食づくり」運動を継続していきます。生協だけでなく、日本を元気にするという意味でも、パルシステムの活動は注目を集めています。

 

フードマイレージ・プロジェクト

「100万人の食づくり」運動と同様、評価の対象となった「フードマイレージ・プロジェクト」は、輸送にかかるエネルギー量を考えようという取り組みです。原料を輸入する場合、運び込むために消費する石油などの量は国産に比べてケタ違い。それを分かりやすくするために、海外から輸入した場合と国産を使用した場合にかかるエネルギー量の差を独自単位「ポコ」で示しました。国産原料を食べるということは、それだけで環境にやさしいのです。

*本ページの内容は2010年4月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。