パルシステムの橋渡しで実現 軽米町とJAつくば市谷田部との「しいたけ原木取引」(社会貢献活動レポート|2009年7月)

2009年7月1日

パルシステムの産直産地である茨城県つくば市のJAつくば市谷田部の原木しいたけ生産者と岩手県軽米町は、今年から、しいたけの原木取引を始めました。しいたけ生産者のみなさんは、しいたけ栽培に使用する原木が不足、軽米町は管理する里山で産出される木材の活用先を探しているところでした。今回の取引実現に際して橋渡しを果たしたのが、パルシステムとジーピーエスです。しいたけ生産者が使用する原木の数は、およそ46万本。初年となる今年はそのうち1万本を使用します。来年は3万本へ増やす予定で、今後も増やしていきたいとしています。また、しいたけに続き、ヒノキを使用したなめこ作りも試験的に開始。
里山と生産者をつなぐこの産直と環境の取り組みに、パルシステムは貢献しています。

原木しいたけを栽培する生産者のみなさん(左から2人目が飯泉さん)。「木の力がほんとうにわかるのは4年後です」(飯泉さん)

JAつくば市谷田部のしいたけ生産者なかのきのこ園
飯泉 孝司(いいずみ たかし)さん

木が持つ力で育てる
原木栽培

「まずは原木栽培と菌床栽培の違いについて知ってください」。JAつくば市谷田部のしいたけ生産者である「なかのきのこ園」飯泉孝司さんは話します。

原木栽培はその名のとおり、山林から切り出した木に穴を開け、そこに菌を植え付けてしいたけを栽培します。育つのに必要なのは、木が持つ力だけです。それに対し菌床栽培は、菌床と呼ばれる栽培キットで育てます。菌床にはあらかじめ栄養体とともに菌が植えつけてあり、そのキットを買えば、手間をかけずそのまま栽培することができます。

菌を植え付けた軽米町の原木。しいたけの菌が切り口を真っ白に。鼻を近づけるとしいたけの香りがほんのり

原木栽培は、原木と菌を別々に仕入れなければならず、あわせると菌床栽培の1・5倍程度コストがかかります。さらに、きのこができる期間、栽培に使用するスペースが違うとのことです。「それらを総合すると、原木栽培は菌床栽培に比べて生産コストが3倍くらいかかります。けれども、販売価格はそれほど差がありません」と飯泉さんは話します。それでも原木栽培にこだわる理由は「パルシステムをはじめ、そのよさを知ろうとする人が集まってくれたからです。『意地でもやってやろう』という気になりますね」。

パルシステムで供給している生しいたけは、原木栽培です。組合員にとっては当たり前ですが、じつは原木栽培の国産しいたけは引く手あまた。「もしかしたら組合員のみなさんのほうが、原木栽培しいたけの価値に気づかれていないかもしれませんよ」と、飯泉さんは笑います。

2009年1月
軽米町から茨城県つくば市へ原木が到着

到着から3カ月あまり
すでにしいたけの香りが

飯泉さんに、軽米町の原木で育てているしいたけの様子を見せてもらいました。原木が茨城県に届いてから3カ月あまり。菌を植え、しいたけが本格的に収穫できるようになるまで1年半ほどかかるため、しいたけは見えませんが、木の断面は白くなっていました。顔を近づけると、ほんのりしいたけの香り。「この白いのがしいたけの菌です。穴を開けた側面から菌が伝わってきています」。

しいたけ栽培に使用する原木は、中心部の「芯材」と呼ばれる硬い部分が小さいほうがよいとされています。芯材のまわりにある「片材」に、木の栄養が多く含まれているからです。片材を多く含む原木にするには、南向きの斜面で育てるのがよいとされます。西北向きの斜面の木は、日当たりが悪いため、しいたけ栽培に不向きなものも少なくないようです。「今回届いた軽米町の原木は、片材が多く、いまのところ順調です」と飯泉さんは期待します。ただ、実際に原木のもつ「力」がわかるには、4年ほどかかるのだそうです。

原木取引が地域経済の活性化に

一方、軽米町は、総面積のおよそ8割近くを森林が占めています。その半分にあたる約8千ヘクタールがコナラやクヌギなど広葉樹の生える里山で、一時は日本一の木炭生産地として栄えました。しかし、戦後のエネルギー転換や、里山を維持する後継者不足もあり、手付かずの林が増加していました。里山を保全するため、紙の原料としても利用されていますが、新たな活用法を模索しているところでした。

そんななか軽米町からパルシステムに提案があり、JAつくば市谷田部のしいたけ生産者も原木を探していたことから、今回の取引が実現しました。

しいたけの栽培に必要な1万本の原木を伐採するには、2~3ヘクタールの里山が必要になります。1本の木がしいたけ栽培に使用できるようになるまでかかる年月が、20年~25年。1万本の原木を25年間供給するためには、最大75ヘクタールが必要となります。来年の取引量、3万本になると225ヘクタール。これだけの広さの里山を管理することになれば、軽米町には応分の雇用が生まれます。また、取引量が増えれば、それだけ地域経済が活性化することにもなるのです。

軽米町の原木しいたけ
年末には味わえるかも?

軽米町とJAつくば市谷田部の間では、双方の関係者が訪れあうなど人的交流も始まっているそうです。「顔を知る間柄であれば、お互いの事情をわかりあいながら意見を言いあえます。みんなが『よかったね』と言える関係にしたいですね」(飯泉さん)。

さらにJAつくば市谷田部では、埼玉県ときがわ町で伐採されるヒノキの間伐材を利用した、なめこの栽培にも乗り出しました。「なめこには、本来ヤマザクラを使用するため試験栽培の段階ですが、里山の再生に役立つのなら、少しでも力になりたいです」と、飯泉さんは話します。

なめこは早ければ10月、しいたけは11月ごろから収穫がはじまるそうです。「なめこは実験段階なので供給はむずかしいかもしれませんが、原木しいたけは年末ごろから出荷できるようになるのではないでしょうか。来年のおせち料理に使っていただけるように間に合えばいいですね」(飯泉さん)。

話しは変わりますが、おせちのしいたけは開運の縁起を担ぎ、亀甲型にかたどられます。JAつくば市谷田部のしいたけ生産者と軽米町との取引も、亀のように末永く続くことを期待します。

岩手県軽米町とは

原木を供給する岩手県軽米町をエリアとするJA新いわては、ほうれん草や人参、りんごなどの産直産地。パルシステムの鶏肉「までっこチキン」の産地の近隣にあるため、農業と畜産の連携に積極的に取り組んでいることでも有名です。2007年からは飼料米の栽培にも取り組み、軽米町で収穫された飼料米が、パルシステムの「日本のこめ豚」や「こめ鶏」の飼料として活用されています。

*本ページの内容は2009年7月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。