重大な消費者問題となった多重債務者問題の解決に向けた全国の動き 多重債務者の自立支援、高金利社会の是正に向けて(社会貢献活動レポート|2007年1月)

2007年1月1日

現在、多重債務者の数は全国で200万人といわれています。全国の自殺者数は1998年から8年間続けて3万人台となっていますが、2005年は、その4分の1を経済問題・生活問題を理由とした自殺者が占めています。これは交通事故による死亡者並みの数字です。また、借金苦による家出や夜逃げも増加しており、2003年度の段階で1万4000人が借金を含む「事業関係問題」を理由に家出をしています。
なぜ多重債務者は増えているのでしょうか。多重債務は「本人の問題」として片付けられがちですが、一方で「格差社会の進行」「セーフティネットの欠如」「高金利」「過剰貸付と厳しい取り立て」など、社会構造的な要因が指摘されています。
いまや重大な消費者被害となった多重債務問題について、パルシステム連合会唐笠一雄専務理事にお話しを伺いました。

2006年7月9日に開催された「生活サポート生活協同組合・東京」創立総会の模様

30年も前から始まっていた取り組み

2006年11月18日(土)、19日(日)の2日間、鹿児島市で「第26回全国クレジット・サラ金・商工ローン・ヤミ金 被害者交流集会」が開催されました。この集会は1981年に第1回が開催されており、25年も前から多重債務問題に取り組んでいます。今回も全国から数多くの弁護士や実際に活動しているみなさんが集まり、講演会、シンポジウム、20にわたる分科会などが開催されました。唐笠専務理事もこの会合に参加しています。

「多重債務の問題が新聞等で騒がれ始めたのは最近ですが、じつは30年も前から弁護士たちはこの問題に取り組んでいました。全国の各地域で『被害者の会』がつくられていて、会の代表や弁護士たちが協同し、被害者の救済や国への働きかけなどの活動を進めていたのです。これらの積み重ねにより、ようやくグレーゾーンと呼ばれる金利の見直しが社会的に進み始めたといえます」(唐笠専務理事)。

多重債務は、本人の問題か、構造的問題か

多重債務者は「消費者信用取引における被害者である」という捉え方がある一方で、「本人の責任であり、周囲が救済するものではない」という意見が少なからずあります。この点について、唐笠専務は次のように説明します。

「確かに本人の問題もあるかと思いますが、構造的な問題が大きな要因であると考えています。実際には、きちんとした説明もせずに高金利で金を貸す、回収が難しいことを承知で半ば強引に金を貸すなどの事例が多いのです。そして多くの方が暴力的な取り立てなどでうつ状態になり、適切な窓口などに相談すらできない状況に追い込まれている現状があります。この状況を評して『悪魔のビジネスモデル』と呼ぶ方もいます。韓国や台湾もよく似た状況にあるようです。この状況はまさしく消費者被害だといえます」(唐笠専務理事)

では、何が問題で、どのような取り組みを進めていけばよいのでしょうか。唐笠専務理事は、この問題に対して何ら社会的なシステムがないことが大きな問題だと言います。

「例えば、車を運転するのであれば、法律によって自賠責(強制)保険への加入が義務付けられており、被害を最小限に食い止め、被害者を救済するための仕組みが成り立っています。しかし、この多重債務問題については、いわゆるセーフティネットは何もない状況といえます。よく救済という言い方をしてしまうが、救済ではなく、あくまでも自立支援なんです」(唐笠専務理事)
また具体的な取り組むべきこととして、唐笠専務は次の点を指摘します。

「金利を下げること、社会的なレベルでの消費者教育を進めること、金融業の免許取得を厳しくすることなどが挙げられますが、まず一番に必要なのは金利を下げることだと思います」

全国の生協でも取り組みの動きが

2006年7月9日、東京では「生活サポート生活協同組合・東京」の創立総会が開催されました。12月には東京都の認可が下り、正式に発足することとなりました。この「生活サポート生協・東京」は貸金業は行わず、多重債務者の相談業務を行います。ローンの取りまとめなどが必要な方には、「有限責任中間法人 生活サポート基金」を紹介し、この基金が当人の生活再生のためのプランニング、融資を行うことになります。

「岩手県や福岡県では県が認可し、生協自身が融資を行っています。しかし東京都では認可が難しく、相談は生協が、融資は基金が行うというスタイルになりました。生活サポート生協・東京は東京都生協連への加盟を予定しています。これが実現すれば、都内の生協は、多重債務に苦しむ組合員に対して生活サポート生協・東京を紹介することができます。岩手県や福岡県に続き、青森県、千葉県でも多重債務問題に取り組む生協を設立する動きがあります。ですから、このような生協が東京にできる意義は大きいと考えています。その意味でも、パルシステムとしても支援していきたいと考えています」(唐笠専務理事) 。

生協が多重債務問題に取り組む意義

これまで商品事業を中心にしてきた、いわば「金融の素人」ともいえる生協が、多重債務問題に取り組む意義はどこにあるのでしょうか。唐笠専務理事は、「食の安全と何ら変わりがない」といいます。

「生協が取り組むことの目的は『高金利社会を是正する』ことにあります。これまで私たち生協は、『食の安全』『環境』『産直』など、さまざまなことに取り組んできました。いまや『くらしの安心』として考えたとき、金融による消費者被害は、添加物の多い食品に対する取り組みと同じことだと考えています。よく被害者の救済という言い方をしてしまいますが、めざしているのは救済ではなく、あくまでも本人の自立支援と社会の是正なんです。これを生協として避けて通ることはできません」(唐笠専務理事)

私たちパルシステムは、「くらしの課題解決事業」を標榜しています。くらしの課題は、食品問題だけではなく、子育て、健康など多岐にわたります。また近年では「振り込め詐欺」など、あらたな消費者被害も発生しています。

唐笠専務理事は最後に、「食の分野だけではなく、さまざまな分野においてほかの団体や組織と連携して、くらし課題全般に取り組んでいきたい」と語りました。

グレーゾーン金利

「利息制限法」と「出資法」の間の金利の事をグレーゾーン金利といいます。金融機関は、原則としては、金銭消費貸借契約における金利を、利息制限法で定めた上限金利までとしなければなりません。ただし一定の条件を満たした場合だけ、出資法の上限金利29.2%まで認められています。しかし、消費者金融や商工ローンの多くは、条件を満たさないまま利息制限法を越えて、出資法を根拠とした金利(グレーゾーン金利)を適用しています。

*本ページの内容は2007年1月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。