NPO支援センターちばのプラットフォーム・プロジェクト 多様な人々が手を結んだコミュニティーづくり(社会貢献活動レポート|2005年4月)

2005年4月1日

台風や地震など、自然災害による被害が多かった2004年、多くの人が義援金やボランティアなどで被害を受けた人々を支えました。地域社会の中にあっても、福祉や自然環境保護など、多くの市民の活動が、人々の生活を支えています。しかし、こうした市民活動をしているNPOの多くは資金的にも人的にも、参加する個々人のボランタリーな活動に多く依存しています。エルコープが関わって2001年に設立した「特定非営利活動法人・NPO支援センターちば」は、地域のNPOの活動を支援し、地域の中に市民参加の新たなコミュニティーを作ることを目指しています。活動3年目を迎えた同センターについて、事務局長の岡田哲郎さんに話を伺いました。

事務局長 岡田哲郎さん

エルコープの地域支援政策が具体化

「エルビジョン21」の中で地域貢献をあげているエルコープは2000年、どんな地域貢献をするのかを委員会で検討していく中で、NPOを支援するセンターを作ろう、ということになりました。地域の江戸川大学、エルコープ、(特活)NPOサポートセンターで話し合い、シンポジウムなどを開催しながら構想を固めていきました。支援センターは「地域資源(人材・資金・モノ・情報)の発掘とマッチング」「行政・企業・非営利セクターのパートナーシップの構築」「コミュニティービジネスのための、NPOサポート事業」をその役割としてやっていくこととしました。2001年5月には常磐線柏駅の近くに「NPO支援センターちば」の事務所がオープンしました。

インターン制度に参加し、地域のNPOで活動に取り組む学生たち

NPO支援センターちばが取り組むプロジェクト

市民が新たなコミュニティーを作り出していくための「出会いの場」として考えられたのが「常磐線NPOプラットホーム・プロジェクト」です。4つのプロジェクトがあります。

  1. 人づくりでまちづくりプラットフォーム・プロジェクト
  2. NPO福祉プラットフォーム・プロジェクト
  3. 男女共同参画社会プラットフォーム・プロジェクト
  4. 循環型スローライフプラットフォーム・プロジェクト

そして、これらのプラットフォームプロジェクトを支える基盤整備事業が[人材の育成][資金調達の支援][情報/調査研究機能の構築]の3つです。

[人材の育成]では、NPOについて知りたい学生やNPOに就職したいと考えている学生に、地域のNPOで学んでもらう「NPOインターン・コラボ・プロジェクト」を実施。2003年は11大学33名の学生が参加しました。

ガイドヘルパー養成講座の実習風景

[資金調達]では、支援センターがエルコープのNPO助成基金の事務局を担っているほか、資金調達に関するキャンペーンやシンポジウムを開催しています。

インターン制度に参加した学生の皆さん

※プラットフォーム型の事業
地域の課題やニーズ、そしてそれに対して解決策をもっている人材や情報は地域に点在しています。プラットフォーム型事業とは、これらの課題・ニーズと地域資源(人・物・金・情報)を一つに集めて上手にマッチングさせ、市民・NPO・行政・企業・大学などと連携しながら、地域課題の解決や共通利益を追求していくしくみです。

異なる課題に取り組む団体が出会うことで地域の課題が明らかに

常磐線プラットフォームの運営を福祉プラットフォームを例に見てみましょう。ここでは、「介護の担い手研修」を実施しました。同プロジェクトは、認知症専門ディサービス、福祉移送、障害児の放課後活動、配食サービス、グループホームなど、異なるジャンルに取り組む5つの団体が運営団体です。こうした異なる課題に取り組む地域のNPOが、地域福祉について話し合うことで、共通の課題が浮かび上がってきます。

2003年に課題となったのは移送の問題。これまで緑ナンバー(業務車両)でしか認められなかった移送が、行政区ごとの運営協議会で認可されることで、白ナンバーの福祉車両も道路運送法上認められることになりました。神奈川県のように県が運営協議会を設置すれば県内で行政区をまたいだ利用も可能となるため、できれば全県一区かあるいは県を三つくらいの区域に分けて運営協議会ができるように働きかけていきたいと考えているそうです。2005年4月には移送に関わる団体に呼びかけ、フォーラムを開催します。

コミュニティービジネスへの取り組み

NPOにとって最大の課題は資金調達ですが、「自立のためには『コミュニティービジネス』を作っていくことが大事」と岡田さんは言います。米国やヨーロッパのようなキリスト教社会であれば、NPO活動に市民の寄付が寄せられます。しかし、日常的に寄付などから財源を得ることが日本では難しいため、支援センターでは企業や行政による助成金の情報を流したり、資金調達の相談にのったりしています。

福祉移送サロンの様子

支援センター自体、「独自運営していくためにはコミュニティービジネスもやっていく必要がある」と岡田さん。これまで実施してきた「介護の担い手研修」「ガイドヘルパー研修」、インターンシップのやり方など、ノウハウの蓄積があります。また、移送問題を考えると、運営協議会ができ、NPOによる移送が広がっていけば、利用者と団体を結ぶセンター機能が必要になってきます。こうしたことを考えると、「プラットフォーム・プロジェクトの延長線上に、コミュニティービジネスを考えていくこと」が、NPOの自立につながっていくと岡田さんは考えています。

特定非営利活動法人NPO支援センターちばの概要

■使命
NPO・市民の参加により、行政・企業・非営利セクターが、対等な立場で協力・連携し、新しいコミュニティーを構築することを目的としています。

■役割

  1. 地域資源(人材・資金・モノ・情報)の発掘とマッチング
    地域資源(人材・資金・モノ・情報)の発掘を行いながら、NPO・行政・企業・大学のゆるやかなネットワークを築き、プラットフォームへの参加を呼びかけます。
  2. 行政・企業・非営利セクターのパートナーシップの構築
    地域の共通の課題や目的のために、市民・NPO・行政・企業・大学の
    それぞれがお互いに尊重し合い、対等な立場で協力しながら事業を
    推進していくパートナーシップの構築をめざします。
  3. NPOコミュニティービジネスのためのNPOサポート
    市民・NPO活動の基盤整備のために、人材・資金・モノ・情報・機会を総合的・継続的に提供し、コミュニティビジネスの起業をサポートします。

*本ページの内容は2005年4月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。