新潟集中豪雨被害支援 全国の生産者をつないだパルシステムの産直事業(社会貢献活動レポート|2004年10月)
2004年10月1日
去る7月12日夜から13日にかけ集中豪雨で大きな被害を受けた新潟県に、パルシステムの産直産地の生産者59名がかけつけ、復興支援を行いました。「私たちも2年前の台風のとき助けてもらいました。今度は私たちの番」と現地へ集まった生産者たち。
そこから見えてくる生産者の思いやつながりについて取材しました。
中之島地区と新潟県内の被害状況
被害状況は?/新潟県内の被害状況
- 死者 … 15人
- 家屋全壊 … 30戸
- 家屋半壊 … 111戸
- 床上浸水 … 7,288戸
- 床下浸水 … 6,122戸 (消防庁)
- 農地 … 1,989箇所、733ha、被害総額4,168,000千円
- 農業用施設(用水路・農道など) … 3,216箇所、被害総額9,761,000千円 (新潟県農地部)
JAにいがた南蒲ご紹介
- 所在地 … 新潟県三条市興野3丁目10番7号
- 代表理事組合長 … 小川 政範氏
- 組合員数 … 27,892名、職員数781名
JAにいがた南蒲は、信濃川及び刈谷田川に囲まれた平野に位置し、豊かな自然環境を生かし、米・れんこんなど、様々な農産物を生産しています。JAにいがた南蒲(中之島支店)とパルシステム連合会は、平成10年からお米の取引をしており、平成16年産米は、こしひかり 慣行273トン、減々227トンの作付け予約をお願いしています。「JAにいがた南蒲稲作研究会」を組織しており、36名のメンバーが主力で「特別栽培米」を栽培しています。新潟県の特別栽培認証を受けており、「安全・安心と満足できる米作り」に努めている生産者です。
支援に駆けつけた全国の生産者たち
「会議している場合じゃない。新潟に行ったほうがいいんじゃないか。」7月15〜16日に山形県で開催された、首都圏コープ生産者・消費者協議会(生消協)の2004年度上半期合同ブロック会議の会場で、事務局の山森澄恵さんは複数の生産者に言われました。まだ予断を許さない天候が続いているときです。
生産者の思いを受けとめた生消協は、JAにいがた南蒲の支援を決め、近郊の生産者にボランティア支援を呼びかけました。これに賛同した59人もの生産者が、現地で復興支援にあたることになったのです。
「生産者同士、同じ仲間だから」
JAにいがた南蒲の産地は、中之島地区の被害が特に大きく、パルシステムの特別栽培米を生産している農家36戸すべてが、浸水などの被害を受けていました。第一陣として現地入りした佐原農産物供給センターの5名は、過酷な暑さの中で延々と泥の除去と袋詰作業を行いました。水を含んだ汚泥は非常に重い。しかしいったん道路が乾き始めると、今度は目を開けていられないような土埃が舞い上がります。
「第一陣」と現地入りした山森さんはこう語ります。「参加した産地の皆さんが、『パルシステム連合会の産地同士の同じ仲間という意識を強く感じた。』『他人事とは思えなかった。一日しか手伝えなかったけど来てよかった。』『産地間で、このような関係があるということは私たち自身のはげみにもなる。』って口々に言ってくれたんです。素晴らしいことですよね。」
最終的には、7月20日から7月27日の7日間に、9産地、59名の生産者達が復旧作業のボランティア支援を行いました。
人と人のつながりの大切さ
集中豪雨から約1ヵ月後の8月12日。JAにいがた南蒲の本店会議室にて、パルシステムグループからJAにいがた南蒲に義援金が手渡されました。この義援金はパルシステム連合会、会員生協、関連会社などが緊急におこなった組織カンパで、305万円が集まりました。
贈呈式で、JAにいがた南蒲の小林政範組合長は「物心両面から多大なご支援をいただき大変感謝しています。あの水害から一ヶ月がたちましたが、いまだに自分の家に帰れない方がいます。やっと、避難所から仮設住宅に入居できる体制がとれたのが実情です。支援物資やボランティア支援を多く頂いた上に、今回の義援金まで頂き、心より深く感謝申し上げます。今年のお米は残念ながら収穫量は多くは望めませんが、今後の品質管理を徹底して、良食味で安心・安全なお米をお届けいたします。今後ともご支援のほどお願い致します。」と述べられました。
贈呈式に参加したパルシステム連合会の太田理事長は「産直産地からもボランティアの対応があり、これを機会に産直の意義を新たに感じているところです。単に商品の取引だけではなく、産直の『人のつながり』が大事であることを、しみじみと感じています。」と、生産者と消費者のつながり、生産者同士のつながりの強さに触れました。
全国の生産者をつないだパルシステムの産直事業
「2年前の台風被害のときは皆さんに助けてもらいました。今度は私たちが!と思って現地に行きました。」
関東近郊産地への呼びかけ役をかって出た佐原農産物供給センターの香取政典さん(生消協幹事)が、後日開催された生消協の青年農業者交流会で語った言葉です。
パルシステムを通した関係だった生産者が、全国レベルのネットワークを広げ、「たすけあい」「仲間」といった「心の通い合う関係」をも築き始めています。JAにいがた南蒲での生産者同士の支援の背景として、パルシステムの産直事業や生消協の果たした役割は見逃せません。
「一単協と一産地」という関係からスタートしたパルシステムの産直事業は、会員生協の成長とともに「同一作物の複数産地化」に移行し、1989年、産地との取り引きはパルシステム連合会に一本化されました。「生協とそれぞれの産地」という関係性は変わりませんでしたが、1990年に発足した「首都圏コープ生産者・消費者協議会(生消協)」によって、それが大きく変わることとなりました。生消協では、生産者同士の生産者部会、地域ごとのブロック会議や女性生産者交流会、青年農業者の集まりなど、生産者と消費者との交流だけでなく、「生産者と生産者」という関係づくりに力を入れてきました。現在、各産地でおこなわれている公開確認会にも多くの生産者が参加し、お互いの栽培や組織について学びあっています。
今回の「新潟水害支援」は、パルシステムの産直が築いてきた商品の取り引きという枠を超え、人のつながりや物と心とがつながる全国レベルのネットワークをあらためて感じさせてくれることとなりました。
日本の農業は農業政策の転換、後継者問題などたくさんの課題を抱えています。現在、パルシステムグループと生消協では、「産直政策」や、5年先、10年先を展望する「産地ビジョンづくり」の論議が進んでいます。私たちは、これらの論議を通じて、生産者と消費者、生産者と生産者、そして生協の役割を、さらに手応えのある信頼関係に高めていく必要があります。
職員もがんばった!
パルシステム連合会が最初におこなったことは被災地への災害支援物資輸送。7月16日(金)に4tトラック1台、7月17日(土)に10tトラック1台の災害支援物資(食品とトイレットペーパー・紙おむつ・バスタオルなど)を中之島文化センターに届けました。まだ天候は安定せず、横殴りの雨の中での搬送作業となりました。
その後、会員生協では、被災地支援として、職員を次々に派遣しました。
会員生協、パルシステム連合会、(株)ジーピーエスからの職員派遣は、20名以上に上りました。
支援に参加した団体
生産者団体
- 佐原農産物供給センター
- ジョイファーム小田原
- 旭村悟空
- JAちばみどり海上
- サンドファーム旭
- JAささかみ
- 茨城産直センター
- JAつくば市谷田部
- 有機農法ギルド
- JA魚沼みなみ
- 全農パールライス東日本
会員生協、その他
- 東京マイコープ
- エルコープ
- コープやまなし
- パルシステム連合会
- (株)ジーピーエス
- 生消協事務局
*本ページの内容は2004年10月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。