水産方針策定から10年 「海の産直サミット」を開催

2019年9月11日

パルシステム連合会は9月5日(木)、東京・新宿区の本部事務所で、全国から水産産直産地・メーカーを招き、第4回「ほんもの実感!」くらしづくりアクション連続講座として「海の産直サミット」を開催しました。

水産産直産地・加工メーカー(13団体)のみなさんが参加・報告

持続可能な水産資源、“海の産直”のために

パルシステムは、一人ひとりの選択でよりよい社会や自然環境を次世代へ引き継ごうと、「ほんもの実感!」くらしづくりアクションに取り組んでいます。その一環として、海の環境保全や食品の安全性確保などに取り組む水産業・漁業者と連携した“水産(海)の産直”を行い、水産物の持続的な利用を実現する事業や運動に取り組んでいます。

水産資源の保全や回復などの課題を見据えて、パルシステムでは2009年1月に「水産方針」を策定しました。本サミットは策定から10年の節目として開催し、水産産直産地・加工メーカー(13団体)のみなさんから事業や活動の到達点、今後の展望について報告がありました。パルシステムグループの組合員や役職員など208名が参加し、パブリックビューイングも実施しました。

パルシステムの水産方針(PDF)

会に先立って行われた試食会

シーボーン昭徳の西木さんが魚をさばく実演も

開催にあたって佐々木博子産直委員長(パルシステム千葉理事長)は「水産方針の策定から10年経ち、当時とは大きく状況が変化しています。持続可能な水産資源、“海の産直”のために次の10年、私たちにできることを一緒に考えていきたい」とあいさつしました。

冒頭、水産方針の策定に関わった原秀一(株)パルブレッド代表取締役(元当会専務理事)が、経緯などについて説明し、国内漁業の衰退や水産資源の減少により「このままでは日本の魚を食べ続けられないのでは」という問題意識のもと、扱う水産品の特長として「海の環境保全に取り組む漁業者と提携し、事業と運動をともに行う」を、基本に掲げたとしました。「パルシステムが“いいとこどり”をするのではなく、よいときも悪いときも、産地やメーカーと共有することが重要と考えました。とはいえ、この10年で、主に海水温の上昇が引き金となって、想定していたよりも水産資源の減少は深刻度を増しています。漁業者と本音で語り合える関係を、さらに追及し運動を広げていく必要があります」。

当日は、産地の到達点として、野付漁業協同組合連合会(北海道)の内藤智明さん、有限会社カネモ(愛媛県)の森敬一さん、恩納村漁業協同組合(沖縄県)の仲村英樹さんより報告がありました。

持続可能な水産を「社会づくり」として位置づけ

パネルディスカッションでは「10年後のパルシステムの水産産直のあるべき姿」をテーマに討議しました。大隅地区養まん漁業協同組合(鹿児島県)、富栄海運(有)シーボーン昭徳(佐賀県)、千葉県漁業協同組合連合会、当会からは反町幸代商品委員会委員長(パルシステム群馬理事長)、産直事業・カタログ制作の担当職員が登壇し、水産課が進行を務めました。

パネルディスカッションのようす

富栄海運(有)シーボーン昭徳の西木孝明さんは「魚には個体差があるため、どうしても味にばらつきが出ますが、パルシステムの魚は全体的に水準が高く、おいしい。利用が高いのもうなずけます」と話し、カタログ担当は「水産部門は好調で、たくさん声も届きます。産地の状況を馴染ませながら、生活者のひとりとして食べた感動を伝える誌面づくりをめざしています」と返しました。千葉県漁業協同組合連合会の宮地直一さんは「まずは食べて興味を持ってもらえればと、骨取り商品の開発など、魚食文化を残していくために模索しています。かつては地元女性で充実していた工場の雇用状況も深刻です」として省人化への意欲を語り、産直担当も「人づくりは課題。次のステップのためにも、新しい体験を作り出し、盛り上げていきたい」としました。

21軒の生産者すべてに跡継ぎがいるという大隅地区養まん漁業協同組合の奥園久人さんは「パルシステムと取り引きすることで、誰にどう食べられているかがわかり、生産者の力になっています。河川環境の整備などニホンウナギの資源回復の取り組みや、産地ツアーで組合員・職員のみなさん交流できるのも、若手のやる気につながっています」と話しました。

反町商品委員長は「継続的に、諦めずに、組合員や社会に発信し続けることが大事」とし、水産課からは「おいしい」に「調理のしやすさ」「食べやすさ」といった特徴を追加するなど商品展開を工夫しつつ、生産者と消費者がともに魚食文化を学び、持続可能な水産を「社会づくり」として位置づけていくと、まとめがありました。

最後に商品開発本部長の辻正一があいさつし「『簡単に調理ができる』といった、魚食のハードルを下げた商品開発も視野に入れつつ、海と食卓をつなぐ事業と運動を模索していきます。深刻さを増している担い手問題は、生産者とともに向き合い、これからも交流を進めていきたい」と締めくくりました。

試食会は大盛況。各産地がこだわりの商品をふるまいました

参加した産直産地・メーカー

野付漁業協同組合連合会(北海道/コア・フード野付のほたてなど)

釧路市漁業協同組合(北海道/釧路の真いわしフィレ(刺身用)など)

えりも漁業協同組合(北海道/北海道えりも産日高昆布など)

宮城県漁業協同組合志津川支所(産直カットわかめ(小さめカット)など)

千葉県漁業協同組合連合会(江戸前あさり(冷凍)など)

魚津漁業協同組合(富山県/輪島丸のいなだ刺身用など)

有限会社カネモ(愛媛県/漁師がつくった釜あげしらすなど)

富栄海運有限会社シーボーン昭徳(佐賀県/昭徳の産直九州産天日干しあじひらきなど)

長崎県漁業協同組合連合会(長崎産天然ぶり切身など)

大隅地区養まん漁業協同組合(鹿児島県/大隅産うなぎ蒲焼

恩納村漁業協同組合(沖縄県/恩納もずくなど)

オルター・トレード・インドネシア社(エコシュリンプ

 

パルシステムの商品づくり|魚介