「花見糖」の原料糖が生まれる島 パルシステム環境委員会が訪問しました

2019年3月13日

パルシステムオリジナル商品「花見糖」は、鹿児島県奄美群島の喜界島・沖永良部島と沖縄県の宮古島で栽培された国産さとうきび100%の原料糖で作った砂糖です。日本で消費される砂糖の原料は輸入やてんさい糖が大半であり、さとうきびを原料とする砂糖は消費量全体の1割にも達していません。この希少な国産さとうきびの原料糖を第一糖業(株)(宮崎県)で精製し、さとうきびの素朴なコクや風味を残すように独自の製法で作り上げたのがパルシステムの「花見糖」です。

2019年3月1日(金)~2日(土)にかけて、パルシステム連合会・環境委員会(高野祐子委員長・パルシステム福島理事長)は原料糖の産地・沖永良部島を訪問・視察し、さとうきび生産者をはじめ関係者と交流しました。

生産者の福井さん(左端)のほ場で記念撮影

島のくらしに「なくてはならない作物」

沖永良部島は沖縄島の北約60キロの位置に浮かぶ人口1万3千人ほどの小さな島です。島のほとんどが隆起サンゴ礁の石灰岩からなる痩せた土壌で、台風も頻繁に襲来するなど、昔から農業生産に苦労が多かった土地でした。この島の人々にとって、江戸時代に伝来したさとうきびは台風にも強く現金収入を得られる作物としてくらしを支える大切な存在になっています。

現在、島では約1,600haのさとうきびが栽培されており、うち2%が手刈り、98%が大型機械(ハーベスタ)で収穫されています。今回の視察では、三原利昭さんと福井源乃介さんのさとうきび畑を視察し、最盛期を迎えている収穫のようすを見学しました。

三原さんは昔ながらの手刈り収穫を続けている数少ない生産者の一人です。収穫したさとうきびの青葉を牛に与えて、牛のふんを堆肥にして畑に還元する「耕畜連携」に取り組んでいます。「忙しいのは収穫のときですが、家族で協力すれば大丈夫。さとうきびを作っていれば収入も安定します。こんなにいい作物はありません」(三原さん)。

収穫したさとうきびを手にする生産者の三原さん

福井さんは自らも大規模にさとうきびを栽培する傍ら、ハーベスタを運転して他の生産者の収穫作業を受託しています。最も手間のかかる収穫作業を担っている福井さんのような生産者は、高齢化しつつある島のさとうきび生産にとって欠かすことのできない存在です。収穫したばかりのさとうきびを試食させていただくと、どこか懐かしい風味とやさしい甘みが口の中に広がりました。

ゼロ・エミッションでの原料糖生産

沖永良部島でさとうきびから原料糖への加工を一手に担っているのが南栄糖業(株)です。さとうきび収穫期の12月から4月まで24時間体制で稼働し、運び込まれたさとうきびの裁断、圧搾、清浄・濃縮、煎糖(結晶)、分離(分蜜)の各工程を経て原料糖が完成します。

工場ではさとうきびの絞りかす(バガス)をボイラーで燃やしてバイオマス発電を行い、製糖設備で使用する電力と蒸気を生み出しています。「外から買った燃料を使うのは毎年最初の試運転の時だけです。いったん工場が動きだすと、製糖工程に必要な全てのエネルギーをまかなうことができます。さとうきびは、砂糖を作るのに必要なエネルギー全てを自分自身の中に持っている、すごい作物なのです」(常務取締役の前田和義さん)。

さとうきびの枯葉や製糖工程で発生した不純物、バガスの燃えかすなどは有機堆肥にして島内の農地に還元しており、「さとうきびはひとつも捨てるところがありません」(前田さん)。資源とエネルギーを見事に循環させている原料糖生産のシステムに、参加した組合員からも感嘆の声があがりました。

バイオマス発電設備の説明をする前田さん

沖永良部島の周囲は白い砂浜やサンゴ礁に囲まれ、真っ青な海ではウミガメやクジラを見ることができます。美しい海が農地などからの赤土で汚れてしまうのを防ぐために、赤土を沈殿させる「浸透池」も島のあちこちに設けられていました。

「花見糖」の原料糖が生まれる島の自然の素晴らしさと、その自然環境を守り続けるための生産者たちの取り組みを参加者全員で実感した視察となりました。