環境委員会が山形の発電産地を視察 物語のある電気を届けたい

2017年12月12日

パルシステム連合会環境委員会は11月10日(金)、11日(土)、山形県内の2つの発電産地「やまがたグリーンパワー(木質バイオマス発電)」「野川土地改良区(小水力発電)」を訪問しました。発電事業の基礎知識とともに、直接相対しないと知りえない発電への思いなど、貴重な物語にもふれました。

パルシステムは全国40カ所(2017年12月1日現在)の発電産地と連携し、FIT電気(再生可能エネルギー)中心の電力を組合員に提供すべく、「パルシステムでんき」を推進しています。今回は山形県内の2産地を環境委員会の24名で訪問し、発電方式は違っても地元の恵みを大切に活用し、環境負荷の少ないエネルギー生産を進める取り組みを学びました。

長井ダムにて集合写真

木質バイオマス発電施設「やまがたグリーンパワー」 パワーと地域愛に感動!

初日は村山市にある「やまがたグリーンパワー」木質バイオマス発電所を訪問し、業務係の鈴木崇之さんに施設の概要や意義、木質バイオマス発電の知識や特徴を解説いただきました。最大の特長は、生木を材料に可燃性のガスを作り、エンジンを動かして発電する「ガス化発電」であること。これは世界的にも非常に珍しい方法で、デンマークの設備をもとに国内で開発されました。

「詳しい人ほど“ガス化”と聞くと困惑します。弊社も最初の2~3年は『動くのか???』という状態で試行錯誤し、10年たった今ようやく軌道に乗るようになりました。ガス化しない一般的な発電は木のエネルギーの約10~15%を電気に変えますが、弊社は約30%で燃費がよいのも特長です」。

その一方で、生木をガス化して使うゆえにタール水が大量に出る、という悩みもありました。「木酢液みたいなもので、毎日60トンの木質チップから30~40トン出ます。そのためタール処理装置を開発。発電装置同様欠かせないものです」。タール水は2層に分離させ、重い部分は重油の代替燃料として販売し、軽い部分は濃縮し場内で燃料として使うなどして、マイナスを解消しました。

タールとチップ

左の2つがタール水

原料にも特徴があります。原料を直接燃焼し、水を沸騰させて発生する蒸気によってタービン(羽)を回して発電する一般的な木質バイオマス発電では、原料を十分に乾燥させる必要があるほか、輸入材を使うことも多いですが、ここでは県内産の生木を使っています。

「『採算がとれない』と今までは山に放置されていた間伐材や未利用材、製材には向かないような木や『山形ならでは』ですが、さくらんぼなどの果樹の剪定枝、河川の流木、伸びた街路樹の枝など使っています。ガス化という手法は原料を乾燥させる時間が短くてすみ、手間がかからないんです」(鈴木さん)。

原料はすべて、この発電所の燃料を作る施設であるやまがたグリーンリサイクルから購入しています。丸太や枝は県内の林業者、地元農家、自治体などから購入し、それを発電所で使えるようにチップにします。「丸太はすべて、いつ、どこの山で、だれが切ったのか、など証明書をもらいます。丸太を山から搬出するには多くのコストがかかりますが、パルシステム電力の発電産地応援金を活用して、少しでも原料生産者に利益を還元できるようにしています。これまで使い道がなく野焼きをしたり、間伐しても林内に放置したりしていた木を有効利用でき、地域や自治体にも喜ばれています」。

木材の山(松本)

「でも、まだまだこれから」と鈴木さん。「書類を整えるのは難しいという林業者を地道にサポートしながら、あくまでも地域材で賄える規模にこだわり、地域に貢献していきたい。それはお金を地元に還元し、地域経済にいくばくかでも寄与したいからです」。東日本大震災当時には、津波で壊れた気仙沼市の家屋のがれきなども「各市と協定を結び、反対の方の理解も得ながら引き受けていた」とのこと。地元に対する思いが事業に貫かれています。

野川土地改良区「のがわデンデン」 産直の信頼と絆の賜物

翌11日は長井市にある長井ダム、野川土地改良区の小水力発電所「のがわデンデン」(愛称/公募により決定)を視察しました。野川土地改良区は長井ダムから農業用水を供給しており、農業用水路の水流を活用して発電しています。農業用水を利用する権利は地域によっては期間が限定されていて小水力発電導入のネックになっていますが、野川土地改良区では年間を通じて農業用水を利用することができ、通年で発電することができるそうです。長井ダムは東北で2番目に落差があり、自然や環境に配慮し、山の形をできるだけ崩さず作ったそうです。

★のがわでんでん小

「のがわデンデン」の年間発電量は、約350世帯分に相当する1,081メガワット時となっています。収益の一部を組合員費に充当し喜ばれている他、約600トンのCO₂排出量を削減し、地球環境にも貢献しています。「東日本大震災の原発事故で山形県がエネルギー戦略を立ち上げ、最初に白羽の矢が立ったのがうちでした」と野川土地改良区理事長の工藤誠一さんは口を切りました。「完成まであと半年、地元の大手電力との話が進み、売買契約する直前でした。そこにパルシステム東京の職員から電話があり、『土地改良区の工藤さんって、あのときの産直部会の工藤さんですか?』と。私はパルシステムの創成期から米の産直でかかわっていました。『よし』と決めて、パルシステム東京の総代会議案書を持って県に説明し、大議論の末、取引きが決まったんです、そのたった1本の電話で。これが私とパルシステムとの生協運動の最後の仕事かなと思っています」。

また続けて、「太陽、風、バイオマス、そして小水力発電など再生可能エネルギーが分散していくことで、一気に原発がなくなっても何も心配ないと思います。原発事故の悲劇を二度と起こさないためにも、再生可能エネルギーの取り組みを支援していただくみなさんと同じ場に居られることはうれしいです。これからも産直の信頼と絆で、この取り組みを進めて行きたいと思います」。

パルシステムでんきには物語があります

今回の視察では、それぞれの発電産地の特徴や地域でのありようなどを学んだだけでなく、事業への思い、パルシステムとのつながりや歴史なども伺い、読み物や話では得られない貴重な体験もできました。商品だけでなく、「パルシステムでんき」も産地ごとにすばらしい物語があります。これを広く伝え、これからも脱原子力発電や再生可能エネルギーの普及を推進し、持続可能な環境保全・資源循環型の社会づくりに貢献します。

パルシステムでんき