「放流モニタリング活動報告会」開催 “うなぎの都合”に寄り添う対策をすすめます

2017年4月17日

パルシステムも参加している大隅うなぎ資源回復協議会は、4月6日(木)、パルシステム連合会の東新宿本部にて、2015年より開始した「放流モニタリング活動」の報告会を開催しました。

専門家を交えて資源回復策を議論

専門家を交えて資源回復策を議論

2016年度は組合員より約283万円のカンパ

パルシステムは2013年4月、産直産地の鹿児島県・大隅地区養まん漁協とともに「大隅うなぎ資源回復協議会」を立ち上げ、石倉かごを利用した生育環境改善や増殖対策として放流等に取り組んできました。この活動資金にはパルシステム組合員のうなぎ商品利用やポイントカンパも含まれ、組合員の参加がうなぎの資源回復を支えています。2016年度は組合員より282万8,584円のカンパが寄せられました。ご協力ありがとうございました。

6日は、この間の放流の取り組みについて報告会を開催しました。組合員、役職員など50人が参加し、九州大学の望岡典隆先生から、活動の経過や2016年度の結果、今後の展望など報告がありました。

開会のあいさつで渋澤温之常務執行役員は、組合員の「レッドリストに載るものをなぜ販促するのか」という声から始まったこの取り組みは、2015年には水産白書に先進的な事例として掲載されました。現在は他の生協にも広がり、全国的な運動になっています。今後さらに発展するよう、今日みなさんと学びたい」と述べました。

うなぎの定量的なデータを蓄積

望岡先生からはモニタリング報告に先立ち、まず河川沿岸環境の保全、再生の取り組みについての報告がありました。「私たちがなんとか手を差し伸べられるのは、うなぎが一番長い時間を過ごす成長期の手助け、産卵所に向かう下り(銀)うなぎの保護」と先生。

近年の圃場整備や護岸整備などでうなぎが暮らす環境が悪化しており、その対策として2013年からパルシステムと、石倉かごを設置し下り(銀)うなぎのモニタリングを開始。2016年には鹿児島県枕崎市・花渡川河口域に設置し、7月~11月まで出現個体数を調査しました。結果、見事な下り(銀)うなぎも見つかったそうです。

「石倉かごは、下り(銀)うなぎを何個体も育て上げ、春になるとシラスうなぎも一時期ですが利用してくれることがわかりました。IUCN(国際自然保護連合)からは資源の継続調査を提言されているので、この取り組みで定量的なデータを蓄積し提示できるのは大事なことだと考えています」(望岡先生)。

産卵場へ向かう下り(銀)うなぎを増やしたい

報告に耳を傾ける参加者

報告に耳を傾ける参加者

次に、2015年9月から放流効果を検証するため、鹿児島県・肝付町の河川で放流実験と定点観測を続けている「放流モニタリング事業」の報告がありました。望岡先生は「単に放流するのではなく、産卵場に到達する親うなぎの増加を目指した放流の確立」が必要と述べました。「養殖うなぎの放流は今まで連綿と行われてきたのですが、検討すべき課題多いことがわかってきました。また、天然に比べ再補率が低く、冬を越すのが困難で、秋の大型養殖うなぎの海上放流についても疑問が出ています。早くから効果検証できなかったことを研究者として反省しています」と語りました。

パルシステムとの放流モニタリングでは2015年9月、放流前に汽水域で、冷凍筋エビ(天然うなぎが食べているえさ)を食べさせ、自然の環境で慣らした個体をピットタグをつけて放流したところ、昨年再補。これを教訓に昨年は、石倉のかごの中にいったん放流し、川の生活に慣れるまでしばらくおいたものを放流したら、10月に下り(銀)うなぎも見つかったそうです。「私は性分化する前のうなぎを、汽水域に放流するのがいいと考えています。いきなり淡水域や海に放流するのはうなぎの都合に寄り添っていない。みなさんのカンパの一部で福岡県立伝習館高校・生物部の学生たちとうなぎ復活の試みもしています。種子島のような路地池養殖場での放流うなぎ育成の可能性、鹿児島ではサンクチュアリ(自然保護区)の川を作る構想も出ていますが、いろいろなやり方を探りながら、これからもみなさんといっしょにうなぎを守っていきたいと思います。今年も6月、8月にモニタリングするので、現地でお会いできることを楽しみにしています」と結びました。

パルシステムでは2017年度も「ニホンウナギの資源回復のためのポイントカンパ」(商品番号:190969)に取り組みます。引き続きご協力をお願いします。