大切なのは声を上げ続けること ブラジルCOP30から世界の気候危機を知る
2025年12月19日
現地イベントリポートも
パルシステム連合会(本部:新宿区大久保、理事長:渋澤温之)は2025年12月5日(金)、オンラインで世界の気候変動問題を考えるイベントを開催しました。ブラジルで開催された気候変動対策を議論する国際会議COP30に合わせ現地入りした2人が登壇しました。会議に合わせ開催されたイベントのようすを報告し、地球規模で求められる環境問題への対応を参加者とともに考えました。
化石燃料からの脱却に課題
イベントでは、環境NGOのFoEJapan(本部:板橋区小茂根、ランダル・ヘルテン代表理事)で開発金融・環境問題を担当する長田大輝さんと、気候変動対策団体のクライメート・リアリティ・プロジェクト(CPR)ジャパンの豊吉里菜さんが、COP30への見解や脱炭素社会実現のため私たちができることを語りました。
COP(Conference of the Parties:締約国会議)30は、2025年11月10日から22日までブラジル・ベレンで開催されました。国連が1992年に採択した気候変動枠組み条約の最高意思決定機関で、およそ200の国と地域の締約国が、地球温暖化対策の国際ルールを話し合います。
会議の結果、気候変動による途上国の災害対策支援金を2035年までに3倍に増やし、温室効果ガスの排出削減を加速させることで合意しました。期待されていた化石燃料からの脱却は合意に至らず、課題が残る結果となりました。

▲長田さん(環境NGO FoEJapan)

▲豊吉さん(CRPジャパン)
化石燃料は人権や健康をも脅かす
長田さんは、温暖化の進行状況やCOPで議論されたテーマ、日本の課題などを報告しました。
「温暖化は2000年以降に前例のないほど進行し、異常気象の発生リスクがさらに高まります」と長田さんは警鐘を鳴らします。温室効果ガス排出量の73%は、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料に由来します。化石燃料からの脱却には、気候変動対応や損害補償の資金調達が重要です。先進国に拠出義務がありますが、化石燃料への巨額投資やインフラ開発・保有で利益を生み出す国内企業の問題点を指摘します。「富裕層が大多数の温室効果ガスを排出し、気候変動の被害を最も受けるのは貧困層です」と、先進国の歴史的責任に言及しました。
COP30では、議長国ブラジルやコロンビアによる脱化石燃料ロードマップ採択の機運が高まりましたが、具体的道筋の合意に至りませんでした。長田さんは、途上国の反対が影響するとの見解に対し、「気候正義」の観点から信ぴょう性を疑います。
化石燃料への依存が不平等を生む経済構造から、人権や健康の保護を目指す「公正な移行」では、新たな仕組みの設置が決定しました。長田さんは「誤った気候変動対策を入れず、市民社会の参加を確保し各国が責任を持ち実施することが求められます」と今後を語りました。
気候変動による災害を回避・軽減する「適応」は、進捗の評価指標が定められましたが、具体的な資金目標がなく不十分です。適応資金3倍への引き上げは、先進国の強い反対により、2035年までに実行されるか不透明です。気候変動対策全般への「気候資金」は2年間の作業計画が設けられ、「公的資金不足などを話し合う場ができ前進しました」と振り返りました。
COP30の結果を踏まえ、日本には「野心的な削減目標の設定」「化石燃料への資金支援の終了」「再生可能エネルギーへの資金支援」の責任があると主張します。日本によるガス事業への資金支援に対する現地での抗議活動を紹介し「気候変動対策は待ったなしです。日本は多くの人権侵害や健康被害を引き起こす事業への支援を今すぐやめるべきです」と訴えました。

©︎FFNPT
声を上げる先住民
豊吉さんは、COPにおける市民社会の役割や現地のようすを報告しました。
豊吉さんが所属するCRPジャパンは、気候変動に関するトレーニングを受けたボランティアと共に、世界中で啓発活動をしています。COP30に対して交渉団を通じ「石炭・石油・ガスからの卒業」「温室効果ガス削減のより高い目標設定」「地域と自然を守る持続可能な資金」「誰ひとり取り残さないルールづくり」の4つを要求しました。現地では、カード配布やイベント開催などで気候変動対策アクションへの参加を呼びかけました。
市民社会はCOPにおいて、交渉プロセスを監視し、政府への働きかけや教育活動を推進する役割があるといいます。会場内外のアクションの例として、気候変動交渉で最も足を引っ張った国に贈られる不名誉な「本日の化石賞」を紹介し、化石燃料の延命技術やガス事業への巨額投資などを理由とする日本の受賞を報告しました。
COP30は、過去最多の先住民コミュニティが参加しました。会場には先住民パビリオンが設置され、連帯アクションが実施されました。ブラジルはアマゾン地域を中心に、数百の先住民コミュニティが存在します。深刻化する石油開発や森林伐採の被害に直面する先住民たちは、自分たちの暮らしを守るため声を上げ、COPへの参加を求めましたが、運営側が会場に入れないなどの摩擦が見られたそうです。
豊吉さんは「言語の壁を超え、自分たちの声を必死に届けようとする姿勢に胸を打たれました。世界中から集まった人々が、気候変動への思いを共有して行進する姿に、国境を超えた連帯を強く感じました」と市民の力を実感したと語りました。
豊吉さんは、COP30を「前進と失望が混ざった結果」と評価しました。日本国内のアクションを考えるフェーズに入ったと述べ「私たちに求められるのは、一緒に声を上げ続けることです。皆さんが一歩を踏み出す後押しになれば嬉しいです」と報告を締めくくりました。

©︎Bianka Csenki@8iank4, The Artivist Network @artivistnet
報告の後、国際交流NGOピースボート(本部:新宿区高田馬場、川崎哲、野平晋作、畠山澄子、吉岡達也共同代表)の動画メッセージを上映しました。
動画では、USディレクターのエミリー・マグローンさんと国際コーディネーターのカレン・ハロウズさんが、団体概要とCOPでの活動を紹介しました。ピースボートは、温暖化に伴う海面上昇、異常気象の大型化などの影響に直面する地域に暮らす若者たちと船旅で世界一周し、状況を伝える活動を支援しています。
COP30では、危機に瀕する人々の声を世界に広めるイベントを企画しました。「ユースアンバサダープログラム」経験者がフィジー気候変動省に勤務し、小島嶼国連合(AOSIS)のコーディネーターとして国際交渉の最前線に立った事例を紹介しました。卒業生の国際的活躍を踏まえ、若者への投資の長期的価値をアピールします。「若者たちは、国際社会や日本に明確な期待を示しています。国際会議における若者のリーダーシップで、持続可能な未来へのビジョンを支え続けます。これからも海と気候のためにともに行動していきましょう」と呼びかけました。
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地球の未来を守る環境保全活動
パルシステムグループは2023年、環境・エネルギー政策を策定し、「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現を目指しています。2025年4月には、地球温暖化の防止と生物多様性の保全に向けて「パルシステム ネイチャーポジティブ宣言」を発表しました。自然の恵みを将来にわたり受け取れるよう、環境への配慮を大切にする多様な活動を利用者とともに実践します。
2025年度は「Thanks Earth!~地球のために今できるアクション」をキャッチフレーズに、各組織で清掃活動や食品ロス削減の呼びかけなどを展開しています。
パルシステムグループはこれからも、多様な世代とともにより良い未来に向けて行動するきっかけを作り、持続可能な社会を目指します。
