大隅うなぎ資源回復協議会記念学習会を開催 「うなぎは川の力を取り戻す砦」次の世代につなぐ活動を これからも

2023年6月28日

パルシステム連合会は6月3日(木)、東京・東新宿本部で、大隅うなぎ資源回復協議会設立10周年記念学習会を開催。10年の取り組みを振り返り、未来へさらにつなげる思いを新たにしました。

ニホンウナギが絶滅危惧1B類に指定された2013 年、パルシステムは産直産地と「大隅うなぎ資源回復協議会」を設立し、うなぎ資源回復のための取り組みを続けてきました。今回、10年目の節目に、九州大学特任教授望岡典隆先生、大隅地区養まん漁業協同組合の奥園久人さんを迎え、大隅の若手生産者とオンラインで繋ぎ、記念学習会を開催。当日はオンラインも含めて、組合員、生産者、グループ会社社員、役職員など約100名が参加しました。

学習会会場のようす

パルシステムでは、生産者や組合員とさまざまな思いや意見を出し合いながら、うなぎや生息環境、日本の食文化、産地を守るための資源回復の取り組みを開始しました。専門家や行政と連携し、放流やウナギの住処づくり、調査など行ってきました。商品利用やポイントカンパで生まれた支援金を積み立て、この協議会を通して資源回復活動に活用しています。

開会にあたり当会商品委員会・樋口民子委員長(パルシステム埼玉理事長)は、「パルシステムはうなぎを食べながら資源や食文化、産地を守る持続可能な社会づくりに取り組んできましたが、今後も長い年月をかけ継続する必要があります。今日の記念学習会をあらたな一歩としていきたい」とあいさつしました。

「良かれと思うことはやる」で進んだ活動

望岡先生は、レプトセファルス(ウナギの幼生)の標本とシラスウナギの貴重な実物を見せながら世界のうなぎの種類や生態を説明。2008年に水産庁開洋丸のウナギ航海でマリアナ海嶺南部水域において世界初の成熟した親ウナギの捕獲に成功し、興奮したそうです。そのウナギの耳石を分析したところ、汽水域を含むすべての水域で息の長い保全活動が必要なことがわかりました。

コンクリート護岸化でウナギの隠れ家が失われた場所の生息地保全で有効なのが、伝統漁法の石倉漁と伝統土木工法の蛇篭を組み合わせた石倉かごの設置。シラスからクロコ、もっとも守るべき銀ウナギまで全ての発育期の個体が利用し、保護できるということです。

標本などを見せて説明する 九州大学特任教授 望岡典隆先生

「パルシステムはとにかく良かれと思われることはやってみるという姿勢で、石倉かごや日本初10gの養殖ウナギの放流試験にも協力いただいた。非常に貴重なデータが積みあがりました」と望岡先生。

組合員からの自分たちにできる保護活動についての質問に先生は「川の流域住民が市町村の河川や護岸工事実施の情報に目を配り、『ウナギにやさしい川にして』と声をあげてみてください。絶滅危惧種のウナギの力で動かせるかもしれません」と答えました。

未来に夢をつなぐ

奥園さんは「危機に何をしていいかわからなかったが、みなさんとやっていくなかで生産者たちの顔が明るくなっていきうれしかった。10年、またその後もみなさんとがんばっていきたい」。

朝の4時から餌やりし、オンライン参加の生産者からは「本来なら生産者がまずやらないといけないのだが、大隅養まんやパルシステム、大学などでいち早く取り組んでもらい、自分たち生産者もやることがわかっていった。石倉かごを通した交流などで、販売者と消費者(組合員)の顔や反応などを知ることができ、ストーリーがつながった。このつながりを大切にしていきたい」。

オンライン参加のうなぎ生産者

閉会あいさつで弊会商品開発本部本部長の野津秀男は「10年前に私たちは、食べながら資源回復という選択をした。食べない選択もあったかもしれないが、そうしたらみなさんといっしょにこの10年を過ごせなかったのではないかと思う。産地交流で川に入る組合員の子どもたちを見ると、『将来、うなぎの研究者になるかも』と夢見てしまう。私たちは次の世代に、ひいては未来につながる活動をやっているのでは。これからも一人ひとりが発信源となり、つながりを伝え、つなぎ続けていってもらえたらうれしい」とまとめました。

 

▼生協パルシステムの情報メディア KOKOKARA

うなぎのために、できることを探し続けて10年。日本一のうなぎ産地、鹿児島県大隅地区が見据える未来とは