生活困窮世帯支援団体と連携 ぬいぐるみと絵本の寄付で、つながるきっかけに(社会貢献活動レポート|2022年5月)
2022年5月31日
地域密着型の組合員活動施設から呼びかけ
パルシステム埼玉・地域活動室室長の石川誠さんが月2回ほど足を運ぶのは、埼玉県下で生活困窮世帯の子どもを対象に、学習支援活動を行っている「(一社)彩の国・子ども若者支援ネットワーク(以下、アスポート(通称))」。訪問する目的は、石川さんの職場でもある同生協の組合員活動施設「ぱる★てらす」に集まったぬいぐるみや絵本を届けることです。
「アスポートとは、給付型奨学金(※1)の伴走支援団体として、また予備青果(※2)の提供先としても以前から協力関係にありましたが、家庭で使われなくなったぬいぐるみや絵本を集めて寄付が始まったのは昨年の秋です」と石川さん。
発端は、アスポートの山浦健二さんとの何気ない会話だったと振り返ります。
「家庭訪問支援で、ぬいぐるみや絵本があると助かると聞いたんです。これは何とかしたいと。さっそくポスターを作成し、ぱる★てらすのカウンターに貼って募集しました」(石川さん)
※1:パルシステム給付型奨学金
家庭環境や経済的な理由で大学への進学や就学の継続が困難な若者を対象とする給付型の奨学金制度。組合員からの募金が原資となっている。
※2:予備青果
配達仕分け後に発生する余剰の青果。各生協で、子ども食堂やフードバンク、生活困窮者の食料支援活動に役立てている。
寄付は組合員以外からも
さまざまな困難を抱える世帯への訪問支援を活動の柱のひとつに掲げるアスポート。大事にしているのは、保護者や子どもとの信頼関係をていねいに紡いでいくことです。
「初めての訪問はともすれば警戒されがち。あるときぬいぐるみを持参したところ子どもも保護者も笑顔になり、次にスムーズに結びつけることができたのです」と山浦さん。その経験が、石川さんへの相談の背景にあったと言います。
「ぬいぐるみはプレゼントします。私たちが来るのを子どもがすごく楽しみにしてくれて、窓から手を振ってくれたりするんです。ぬいぐるみも絵本も、訪問家庭との関係を深めるうえでとても貴重なツールになっています」(山浦さん)
これまでにぬいぐるみ約200個、絵本約300冊が集まりました。組合員に限らず、近隣住民の協力も少なくなかったそうです。
他団体との連携のカギは、「考えるより動くこと」
これまで数多くの他団体との連携を、積極的に進めてきた石川さん。連携においてモットーとしているのは、「考えるより先に動くこと」と言います。
「関われそうだと直感すれば、まず関わってみる。大きなお金が必要でない限り、まず私が始めてみる。そうすればおのずと情報も集まってくるし、次のステップも見えてきますから。失敗してもいい。やりながらよりよい道を探っていけばいいんじゃないでしょうか」。
飄々と話す石川さんですが、その言葉の奥に見えるのは、「動けば、必ず求めている人に届く」という揺るぎない信念。今後も、「住宅街で駅近」という人の交流にはもってこいの立地のぱる★てらすを拠点に、広く地域に開かれた活動を展開していきたいと抱負を語ります。
「薄く浅くても、無理なく持続できる関係を培い、より多くの人たちのくらしに貢献することをめざしています」。
<寄付先の団体より>
石川さんは折りに触れて「次は何が必要ですか?」と声をかけてくれます。そのひと言がうれしいですね。タイムリーなお願いもしやすいです。貧困や虐待は特別な世帯の話と思われがちですが、私から見るとどの家庭でも起こりうること。多くの社会資源が協働て、ひとりでも多くの人に関心を寄せてもらうことが、次の社会を担う子どもたちを支え、貧困の連鎖を断つ道と考えます。今後は、子どもたちの就労体験支援などでも連携できることを期待しています。
彩の国・子ども若者支援ネットワーク(アスポート)副統括責任者 山浦健二さん
*ページの内容は2022年5月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。