「ほんもの実感!」連続講座 うなぎの資源回復のいまを語る
2021年6月25日
パルシステム連合会は6月3日(木)、東京・東新宿本部で、第1回「ほんもの実感!」くらしづくりアクション連続講座――「うなぎ資源回復に関するオンライン学習会」を開催。資源回復の取り組みや成果、現在の状況などを学びました。
パルシステムでは「私たちの“選ぶ”が社会を変える力に」と「ほんもの実感!」くらしづくりアクションに取り組み、商品や作り手、その背景を知って無駄なく使うことを進めています。
今回、九州大学特任教授・望岡典隆先生にうなぎの生態や資源回復についての紹介、産直産地の鹿児島県・大隅地区養まん漁協の奥園久人さんには現地からメッセージをいただきました。また、当会水産担当がパルシステムのうなぎ資源回復を目指した取り組みや今後の進め方について報告し、組合員や関係者120名以上が参加しました。
開会にあたり商品委員会・反町幸代委員長(パルシステム群馬理事長)は、「『食べながら守る』については組合員からさまざまなご意見をいただき、ともに考える学習会や交流など毎年取り組んできましたが、昨年はコロナ禍の影響で開催できませんでした。今日はたくさんの参加をいただき、関心の高さを感じています。さらなる取り組みが広がる機会になればうれしいです」とあいさつしました。
資源回復に向けた活動を展開
ニホンウナギが絶滅危惧IB類(※)に指定された2013年4月、パルシステムは大隅地区養まん漁協と、「大隅うなぎ資源回復協議会」を設立、また「鹿児島県ウナギ資源増殖対策協議会」に準会員として参加しています。
パルシステムはこれまで産地交流や放流モニタリング調査、ポイントカンパや支援金による応援、「大きく育てたうなぎ」の供給など、さまざまな活動を展開してきました。吉江健一水産課長は「今年はオンライン産地交流の他、組合員から要望が多いパルシステムエリア内での資源回復の取り組みも検討しています。5月28日には、放流モニタリング調査事業の一環で鹿児島県の河川に石倉かごを設置してきました」と報告しました。
(※)ⅠB類:IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの。
成果が認められた「石倉かご」
望岡先生は2015年より、学習会や産地交流会、放流モニタリング調査を当会と実施しています。
2013年に設立された「鹿児島県ウナギ資源増殖対策協議会」にて県内河川で実験が開始され、石倉かごはうなぎの隠れ家(鳥類からの被食を軽減)、餌生物(えさせいぶつ)のすみかなどの効果があることが認められました。現在は水産庁の事業として全国展開され60か所に設置されています。望岡先生は「石倉かごのモニタリングに関わることで、地域の川にうなぎをはじめ様々な魚類、エビ・カニ類などが生息していることを知り、その価値に気づき、守りたい思いが生まれることを期待しています」と話します。
福岡県柳川市の掘割には大隅うなぎ資源回復協議会寄贈の石倉かごが設置され、地元・県立伝習館高校の自然科学部のみなさんが柳川うなぎ復活に取り組んでいます。2019年にはアース・ウオッチジャパンによる市民参加型調査も行われ、石倉かごを通した資源回復活動が地域に広がっています。
おいしいうなぎとその豊かな文化を次の世代へ
「うなぎ漁業には彼らの習性を利用したさまざまな伝統漁法があります。このような漁撈(ぎょろう)文化を守っていきたいし、食文化はもちろんのこと、信仰、伝承、絵画、文学などうなぎにまつわる文化を守っていくことも大事。おいしいうなぎとその豊かな文化を次の世代に末永く残していきたい」(望岡先生)とまとめました。
組合員からの「食べ続けていいのかと声を上げた一人です。当初原因は取り過ぎとしか考えていなかったが、他にも要因があることを知りました。もっと国や行政にも働きかけることが重要では」という質問に望岡先生は、「県の土木部署等から、うなぎが棲みやすい川作りへの相談を受けており、広がりを期待しています」と答えました。
最後に大隅地区養まん漁協の奥園久人さんから「うなぎ資源が危惧され、世の中が『食べなければいい』という感じになったとき、我々生産者は途方にくれたのですが、パルシステムが共に立ち上がってくれ、石倉かごや放流モニタリングなど試行錯誤で資源回復に取り組んできました。現地でまた組合員のみなさんとともに活動できるのを待ち望んでいます」と熱いメッセージが届けられました。
パルシステムでは今後も、オンラインなどを活用した「ほんもの実感!」くらしづくりアクション連続講座を開催し、「ほんもの」をつくる生産者・メーカーとかかわりながら、その価値を知り「選ぶ」力を育てていきたいと考えています。