「野付漁協公開確認会」を開催 持続可能性への配慮と協同の精神を確認
2018年5月22日
パルシステム連合会は5月10日(木)、11日(金)の両日、北海道野付郡別海町で「野付漁業協同組合公開確認会」を開催しました。コア・フード野付のほたてを対象品目に、育成方法や製造現場生産者と消費者の二者が確認しました。
水産産地初の開催に23名が参加
公開確認会は、生産者と消費者の二者が産地で生産状況を確認するパルシステム独自の制度で1999年からスタートしました。2010年度からは、会員生協主催による開催も始まっています。これまで農産品の産地を中心に延べ130回にわたって催されており、今回は国内初の水産産地での開催となります。
「野付漁業協同組合(以下、野付漁協)公開確認会」は、パルシステム生活協同組合連合会(以下、パルシステム連合会)主催で2日間にわたり、漁協事務所で開催しました。事前の講習会を修了した監査人と組合員、生協役職員、関係者など23名が参加し、監査品目の「コア・フード野付のほたて」の育成状況などについて確認しました。
「コア・フード野付のほたて」の産直産地
開会にあたっては、野付漁協の山本国男専務理事から「当組合ではパルシステムの水産方針でも掲げられているとおり『海の環境を保全し、水産物の持続的な利用を実現する事業』を大事にしてきました。それが評価され、パルシステムのトップブランドである“コア・フード”としていくつか取り扱いがあります。本会では産直産地としての持続可能性をありのまま、直に確認してもらいたいと思っています」とあいさつがありました。
野付漁協は「コア・フード野付のほたて」「コア・フード野付の秋鮭スモークサーモン」などを生産する産直水産産地です。販売事業ではホタテと鮭が9割を占め、ホタテの漁獲を12月~5月(オホーツク海沿岸の他産地は通常5月~10月)、それ以外の期間は鮭と、年間を通じて経営し差別化を図っています。今回の監査品目である野付のほたては、「地まき」式という稚貝を放流し漁獲する生育方法で、他が通常2年~3年であるのに対し、4年かけて大きく育て、グリコーゲン(旨味成分)を豊富に含むのが特長です。
2001年6月には「海は畑」の思いで資源管理型漁業を進める野付漁協、そして北海道漁業協同組合連合会、パルシステム連合会の3者で「海を守るふーどの森づくり野付植樹協議会」を設立。森を豊かにするための植樹活動を行い、地球環境と生命の源である海を守り豊かにすることを目的として活動してきました。2017年度末までにシラカバ、エンジュ、ヤチダモなど9,521本の植樹が行われ、年内には1万本を達成する見込みとなっています。
資源管理型漁業とは自然環境の影響を大きく受ける漁業において、漁業者が主体となって地域や魚種ごとの資源管理を能動的に行い、将来にわたって地域コミュニティや漁業経営の安定、発展をめざす漁業をいいます。今回の公開確認会では、長年にわたって「持続可能な地域と漁業」に取り組んできた野付漁協の事業活動を、消費者である組合員が現地で点検することで、評価や改善を共有し、次につなげていく狙いがあります。
産地からのプレゼンテーションを受け、質疑応答では「ヒトデなど外敵生物減少による漁獲量への影響」「後継者育成や人手不足の対応」、「農業の栽培記録にあたる漁業の管理表などの運用・保管状況」などの質問が寄せられました。これに対し「外敵がいないと稚貝が残りすぎて大きく育たないことがわかりました。一時は激減したヒトデも近年戻りつつあり、漁場を休ませるなど海の環境に配慮していきます」「組合員数は維持、後継者も不足していません。加工場などでは人手が足らないこともあり、ベトナムの研修生を数名雇用しています」などの回答がありました。また、監査人は用意された帳票類の確認を行い、農業とは異なる放流・成長・漁獲量の管理表、省エネ機器の導入記録、衛生検査点検表といった資料を囲んで、意見交換を行いました。
理念「譲りと協同」の歩みを次代へ
翌11日(金)は別海町水産系副産物再資源化施設と植樹地を視察しました。再資源化施設では漁業残渣物を用いてたい肥化しており、町ぐるみで資源循環型漁業の振興をめざしていることを確認しました。植樹地では鹿よけの柵が整備されており、苗木が食べられる被害が激減していることや、樹が育ち森になっていく姿を目の当たりにしました。また加工場の見学も行い、実際に漁獲したホタテを加工処理、出荷するまでの過程を、衛生管理の状況も含め確認しました。
監査所見の発表では「MSC(海洋管理協議会)認証を取得するなど、循環型の増殖漁業のさらなる発展に期待したい」「帳票類が細かく整備されており、品質管理に気を配っているようすがわかりました」などの所見がありました。
監査人のまとめとしてパルシステム連合会・江川淳産直部長は「水産産地との産直は『地域との産直』である、ということを感じさせられました。目前に国後島があり国境の関係で海域が狭く限られるなかで、管理・分担して漁業を進めてきた経験は他の漁協への水平展開を望むものです」。「関東に拠点を置くパルシステムは、東日本大震災を経験し、沿岸の漁協や取り引き先が大きな被害を受けました。その経験から、地震による津波などで操業が停止することのないよう、災害に対する備えについて再度の点検を希望します。『譲りと協同』という漁協のすばらしい理念と事業を次代につないでいくためにも、組合員・従業員に対する日々の教育や啓蒙活動を心がけていただければ」と、期待しました。
野付漁協の内藤智明常務理事は「われわれの『えさをやらない』漁業は農業とはまた違い、自然にゆだねる部分がとても大きいことがわかっていただけたように思います。みなさんの力で後押しをいただきながら、資源管理型漁業へ末永くお付き合いください」と話し、会場からの拍手で締めくくられました。