食べて、守るとは――うなぎの資源回復への取り組み(社会貢献活動レポート|2014年6月)
2014年6月1日
食べるとうなぎは減るのに、なぜ守ることになるのか──。ニホンウナギは近年、稚魚の漁獲量が激減し、2014年6月には「国際自然保護連合(IUCN)」から絶滅危惧種(レッドリスト)に指定されました。うなぎ資源が危機的状況のなか、パルシステム連合会では、うなぎの産直産地・鹿児島県大隅地区養まん漁業協同組合と「大隅うなぎ資源回復協議会」を設立。河川整備の研究など、うなぎの資源回復へ向けた取り組みをスタートしました。こうした活動を支えるのが、賦課金やポイントカンパからなる組合員の支援金なのです。
突然減ったのではない
絶滅危惧種に指定されたワケ
環境省は2013年2月、ニホンウナギを「絶滅危惧種」に選定しました。同年は、養殖に必要な稚魚の不漁で取引価格が高騰した年。その影響で、蒲焼にするうなぎも値上がり、時期によっては前年の2倍の値段で取引される異常事態となりました。
「しかし、昨年の稚魚の不漁が直接、絶滅危惧種の指定に結び付いたわけではないのです」と話すのは、パルシステム連合会でうなぎ商品を担当する高野智沙登さん。「以前は、ニホンウナギの生態がなぞに包まれていて、絶滅危惧種指定の裏付けすらできなかったのです」。
政府が2013年、「情報不足⇒絶滅危惧I B類(近い将来に野生での絶滅の危険性がある)」への分類に踏み切ったのは、ニホンウナギの生態が解明されてきたからこそだったのです。そして、2014年6月には、各国政府などが加盟する国際的な自然保護機関「国際自然保護連合(IUCN)」からも絶滅危惧種(レッドリスト)に指定されました。
放流事業の協力は2002年から
保全活動に積極的に関わる
うなぎの養殖は、捕獲された天然の稚魚を育てて大きくします。近年の稚魚の漁獲量減少は、うなぎを養殖する生産者のみなさんがもっとも危惧していることでした。パルシステムで供給するうなぎの産直産地、鹿児島県大隅地区養まん漁業協同組合でも、うなぎの保全活動に取り組んできました。パルシステムも2002年から、理事や役・職員が訪問し放流事業に協力しています。
そして2013年4月、組合員の声がきっかけとなり、大隅地区養まん漁業協同組合とパルシステム連合会で「大隅うなぎ資源回復協議会」を設立しました。また、行政や漁業者・生産者などからなる「鹿児島県ウナギ資源増殖対策協議会」に消費者団体として初めて参加し、河川整備の研究など、うなぎが育つための環境づくりに向けた取り組みをスタートしました。
商品代金の一部やポイントを活用
民間でできる持続可能なしくみ
動のひとつが、産卵前のうなぎが生息する河川の整備へ向けた研究です。治水整備された河川には、川底までコンクリートで舗装されているところも少なくありません。舗装された河川には生物が隠れる水草などもなく、生きにくい環境になります。うなぎが海で産卵するまで成長できる環境をつくろうと、「石倉かご(旧名:蛇篭)」を設置するなど実験的な取り組みを始めました。「何度かの検証で、大小さまざまな天然うなぎの生息が確認できました。今後も研究機関などと連携し、うなぎが海へ帰れる環境をつくっていきたいですね」(高野さん)。そのほか、釣りなどでうなぎを捕獲した際には川へ戻してもらうことを周知するポスターを制作したり、放流専用の汽水いけすで育てたうなぎを放流したりしています。
こうした活動には、パルシステムの組合員が購入したうなぎ商品の代金の一部や、ポイントカンパなどが活用されています。2013年度は、商品利用から充てた336万140円とポイントカンパ381万100円の合計717万240円が寄せられました。
2014年5月からは、少しでも多くの人にうなぎを食べてもらおうと、実験的に大きめに育てたうなぎの蒲焼も開発しました。大きいぶんだけ骨や皮の食感が際立ち加工に工夫が必要でしたが、大きいならではの身の厚み、脂のりがあり、「骨もとくに気にならずおいしい」「入れ歯の母でも小骨をひっかけることなく、おいしくいただいた」「身がふっくら、しっとりしておいしい」など、組合員の反応も上々です。
禁漁にすると、資源回復の取り組みは国が多額の税金を投じて行わなくてはなりませんが、食べる人や養殖する人などが少しずつお金を出し合えば、継続して資源の保全に貢献できます。ポイントカンパは、2014年度も広く呼びかけています。食べるもよし、カンパするもよし。「食べて保全する」活動は、民間の力で継続できる有効な方法なのです。
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*本ページの内容は2014年6月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。