「農」「商」「工」「消」をつなげる 茨城県水戸市「食と農のギャラリー葵」開店!(社会貢献活動レポート|2013年7月)
2013年7月1日
今年7月19日、水戸市街の一角に新店舗「食と農のギャラリー葵」がオープンしました。パルシステム茨城や茨城県内の農産団体、学校法人、自治体などが運営に参加するコミュニティスペースです。店内には、県内産の青果類や、生産物を使用したアイスクリーム、シフォンケーキなどの加工物が並びます。茨城県ならではの商品を販売し、県内の産地を応援するとともに、水戸市街の地域活性化をめざします。政府は食料自給率向上のため、農業と加工業、サービス業を組み合わせた「6次産業」を提唱し、推進を支援しています。関東最大の農業生産県である茨城県での事例が成功すれば、ほかの地域へ波及も期待できます。開店直後の状況と、今後の計画、課題などについて取材しました。
地元産の青果、加工品がずらり
すでに「看板」となる商品も
開店直後の「食と農のギャラリー葵」(以下、ギャラリー葵)を訪れると、店頭には『とまとソフト』と染め抜かれたのぼり旗が、町を活気づかせていました。「トマトのソフトクリームは、県内産の完熟トマトを加工したものです。『甘いトマトをそのまま食べているみたい』と好評です」と、パルシステム茨城 セカンドリーグ茨城推進室の白土香奈さんが教えてくれました。
店内は、トマトとミルクのソフトクリームやシフォンケーキ、野菜ジュースなどが飲食できます。原材料の野菜は、いずれも茨城県内産。野菜ジュースのコーナーでは、店員のみなさんが「飲みやすい配合を試しています」と話します。試飲したところ、野菜のえぐみがない、さらっとした飲み心地の野菜ジュースになっていました。「来店したみなさんには、要望にあわせて配合しています。アドバイスによって、さらに野菜のおいしさを味わってほしいですね」。
シフォンケーキは、パルシステムグループでは「知る人ぞ知る」逸品です。『コア・フード平飼いたまご』を使用した生地は、パサパサした食感が全くなく、ふわふわでしっとりした口どけが楽しめます。試食品に手を伸ばした来店者も多くが購入し、開店直後ながらすでにギャラリー葵の「看板商品」となっていました。
実際、来店する客層も、まさに老若男女、ビジネスマンから子連れの親子、高齢者までさまざまな人々が訪れていました。
アンテナショップじゃない!
地域に貢献する店舗づくり
「市街地という立地から、よく『アンテナショップ』と言われるのですが、違います。県内の生産物を紹介するだけでなく、地域に住むみなさんの生活に貢献することが目的だからです」とパルシステム茨城の吉田明夫・地域ネットワーク推進室長は話します。
ギャラリー葵のコンセプトは「地域の方々が集える、気軽に買い物ができる、気軽にお茶が飲める」。あくまでも軸足は「地元」に置きます。「店舗の立地はいわゆるオフィス街ですが、地域に住む人々の世帯人数は減少し、高齢化が進んでいます。近くにあったスーパーも撤退し、日常生活に必要な買い物をできるところが少なくなってしまいました。こうした人たちが孤立することなく、気軽に集える場所の必要性を感じていました」。中村三郎・セカンドリーグ茨城推進室長は、出店の経緯について説明しました。
店舗周辺は水戸市の中心部ではありますが、シャッターの開かない店舗も目立ちます。「郊外の大規模店舗に加え、近くにあった県庁の移転も影響しているようです」(白土さん)。こうしたことから、ギャラリー葵では、運営に参加する日本農業実践学園が製造するパンや、くらぶコア(有機農法ギルド)で栽培された野菜などを販売します。「県内産にこだわったおいしいものを、生活に寄り添いながら提供できれば、地域へ貢献する事業が展開できるのではないでしょうか」(白土さん)。
産地、学校、行政も参画
毎日の生活に根ざす拠点に
パルシステム茨城は2011年から、行政やNPO法人、労働組合、報道メディアなどとともに地域の課題解決を目的に「地域円卓会議」へ参加しました。2年間の議論を経て、農業と仕事づくりにテーマをしぼり、設立したのが「農商工消連携協議会」です。メンバーには、同生協のほか、くらぶコアやあゆみの会、日本農業実践学園、里美の水プロジェクト、茨城町が参画、そのほか円卓会議の参加団体もオブザーバーとして名を連ねています。
店舗運営は、パルシステム茨城が協議会から委託を受ける形で行っています。とはいえ、生協としての存在を前面に出すのではなく、取り扱う商品は、産地や学校から届く青果や加工物がメインです。「学校で製造するパンは昼食を狙った正午前、青果は夕方に届くようにし、1日のなかでも変化をつけた店づくりを心がけています」(中村さん)。
現在取り扱っている品目数は、20品目程度。「毎日の生活に根ざすには、豆腐などのチルド商品や調味料が足りません。今後、順次取り扱いを増やし、生活に困らない程度の品ぞろえにしたいと考えています。それでも茨城県産にこだわりたいですね」(吉田さん)。
また、将来的には、店舗でパルシステムの注文商品を受け取れる役割も果たしたい考えです。「商品の受け取りがてら、店内で休んでもらい、お茶でも飲みながら楽しい時間を過ごしてもらえたらと考えています」。
ピザ釜も近々導入を予定
1日中わくわくできる場に
オープン直後は水曜日から金曜日までの週3日を営業日としていましたが、計画を前倒しし、9月から週5日の営業を実現しました。ピザ釜を導入したり、ソフトクリームに「焼いも味」を新たに発売したり、飽きられないための工夫も順次行っていく予定です。「一方で、地域住民のみなさんへアンケートを配布し、不足していることなどがあれば、できることから応えていきます」(白土さん)。
さらに、地域の情報拠点として、商店会をはじめとする地域の団体と連携し、イベント情報の発信や、店舗をイベントスペースとして提供することなども検討しているそうです。
かつて水戸藩と呼ばれていたころ、当時の藩主は、武士道の教育のほか、農業の発展にも力を入れていたそうです。協議会は、その志を引き継ごうと、店名を水戸藩の家紋である「葵」とし、思いを込めました。店の看板には、すでに「1号店」と記されています。今後2号店、3号店と続き、茨城だけでなく全国の地産地消が盛り上がるモデルとなることが期待されます。
TEL & FAX:029‐231‐8331
所在地:茨城県水戸市南町三丁目3‐40
営業日:月~金(10:30~17:30)
*本ページの内容は2013年7月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。