カンパは金額以上のパワーに これが「産直の底力」!(社会貢献活動レポート|2011年3月)

2011年3月1日

パルシステムでは、昨年の5月、6月に「天候異常による被害産地への緊急支援カンパ」を実施しました。3月から4月にかけて、日本各地を襲った寒波と強風で、パルシステムの産直産地も被害を受けたからです。神奈川県のジョイファーム小田原や奈良県の大紀コープファームでは、ようやく実りはじめた梅や柿が凍結し、相当量の収穫が見込めなくなりました。山梨県の白州森と水の里センターでは鶏舎やビニールハウスが倒壊。生産を再開するために多額の費用が必要となりました。これらの被害状況を受けて3000万円を目標に組合員へカンパを呼びかけた結果、それを上回る3159万円が寄せられました。
それから1年。カンパの活用内容とともに現在の産地の様子を報告します。

雪の重みで倒壊してしまったレタスのビニールハウス(白州森と水の里センター)

ジョイファーム小田原
長谷川 功 代表

ベテランさえ「初めての経験」
どれだけ収穫できるのか…

ジョイファーム小田原では、被害にあう前日の2010年3月30日に役員会が開かれていました。「当日は雨が降っていて『今日はすごく寒いね』とみんなで話したことを覚えています。でも、そこまで被害が出る天気になるなんて、誰も予想はしていませんでした」と、代表の長谷川功さんは振り返ります。

雨は夜にあがり、気温は急激に下がりました。一夜明け、梅を見ると多くの実が凍結していたのです。「梅だって生きているので、当然、生命力が備わっていて、寒さに対してもある程度は防御できるわけです。しかし実が凍ってしまったら、さすがに防ぎようがありません」(長谷川さん)。

凍った梅はしぼみ、しわしわになっていました。「梅の実はマッチ棒の先くらいの大きさのころがいちばん寒さに弱いのですが、ちょうどその時期に当たってしまいました。50年以上梅作りにかかわってきた大先輩も『こんなこと記憶にない』と話すほど、大きな被害でした」と話します。

被害の大きさは、場所によっては〝どこに実っているか見つからないほど〟でした。遠くから見て「半分くらいはなっているかな」と感じる場合でも、2~3割くらいしか残っていないものだそうです。それが「まったく見あたらない」場所があるのですから、被害と収穫に対しての不安の大きさは相当なものでした。「最終的にどれだけの量が収穫できるのか、誰も予測できませんでした。すでにパルシステムでの企画は決まっていたし、生産者も不安でしたが、(出荷の)数字を集計する事務局も大きな不安を抱えながら仕事をしていました」。

カンパは目標以上の3159万円にのぼる

こうした被害の情報は、パルシステムにも届きました。時同じくして、産直産地大紀コープファーム(奈良県など)も、梅と柿で被害を受けていました。また、コア・フードのたまごや野菜を生産する白州森と水の里センター(山梨県)から、雪の重みで鶏舎やビニールハウスの倒壊が報告されました。

パルシステムでは急きょ、被害が特に大きかった3産地を対象に、5月からメッセージとともに緊急支援カンパを実施。産地の被害状況やこれまでの実績を鑑み、パルシステムでは3000万円を目標に掲げホームページやカタログなどで呼びかけた結果、現金とポイントをあわせて3159万8400円ものカンパが寄せられました。

「私も『これが産直の底力か』と感じました。金額以上にパワーをもらったような気がします。被害が大きく収穫は少ないながらも、できるだけパルシステムへ出そうという気持ちでした」(長谷川さん)。梅産地のジョイファーム小田原と大紀コープファームでは「なんとか商品を届けたい」と、最後は梅干し加工用まで回して、連携をとりながら組合員の注文にこたえてくれました。

集まった3000万円以上のカンパは贈呈式で産地へ

昨年の凍りついてしまった梅

今年はすでに満開の梅の花(2月、ジョイファーム小田原にて)

「来年も梅を作ってください」
カンパに込められた願いを受け止め

贈呈されたカンパは、それぞれの産地で用途を決め活用されています。ジョイファーム小田原では「まずは来年の生産に取りかかれるよう」との考えから、前年の出荷量に応じて生産者へ分配しました。「使い道を決める話し合いの中では『まずは留保して交流事業などに使用しよう』『肥料を購入しよう』などの意見もありました」と、長谷川さんは経緯を説明します。「しかし、被害を受けたのは生産者。カンパに込められた組合員の願いは『来年も梅を作ってください』だったはずです。それなら一刻も早く生産者に届けて生産に生かしてもらおう、という目的でお金そのものを分配することにしました」。

分配されたお金は、各生産者が肥料の購入などに使っているそうです。また、分けきれなかったお金は、霜対策の実験費用として使用しています。「生産者はとにかく『産直ってすごいな』と驚いていました。カンパの意味を理解し『来年またがんばろう』という気持ちになっています」。

カンパの贈呈から半年以上が経過し、産地の周辺では副次的な効果もあったようです。「人の口に戸は立てられません。カンパをもらった生産者はうれしくて周辺の農家に話し、それが地域全体の話題になったところもあるそうです。地域内は産直農家だけではありませんから、産直のすばらしさの一片が地域全体にも広がっています」。

カンパと組合員の思いを再生産の糧に

鶏舎とビニールハウスが倒壊した白州森と水の里センターでは、施設の再建費用に充当されました。そのハウスで育てられた野菜はすでに、パルシステムの組合員へ届けられています。「とにかく手に負えない被害だったので、カンパしていただいた組合員のみなさんには『ありがとうございます』としか言葉が見つかりません」と、センターの椎名盛男さんは話します。今年も、東京で雪がつもる程の寒さ。椎名さんは「カンパで建てた施設がつぶされないよう、現在、職員が全員総出で夜を徹して雪かきなどに対応しています」と話してくれました。

大紀コープファームはジョイファーム小田原と同様、生産者へ現金で分配しました。生産者の和田宗隆さんは「実は明後日、生産者のみなさんへ支払う予定なのです」と教えてくれました。その理由は「夏の梅だけではなく、秋の柿被害も甚大だったためです。大紀コープファームの補てん金を上乗せし、再生産へ向け有効に使います」と語ってくれました。

今年2月、小田原を訪れてみると早くも十郎梅の花は満開でした。〝農業を通じて支えあう〟精神を形にした組合員からのカンパ。組合員の思いをのせた収穫物が豊作になるよう「あとは天を拝むだけです」と長谷川さんも和田さんも言葉を結びました。

*本ページの内容は2011年3月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。