共済を通じ助け合う地域づくりへ 4月から業務スタート パルシステム共済連誕生(社会貢献活動レポート|2010年3月)
2010年3月1日
2009年12月3日、パルシステム共済生活協同組合連合会(パルシステム共済連)の創立総会が開催され、パルシステムの共済事業を進める連合会が新たに誕生しました。現在4月の業務スタートに向け、準備を進めています。パルシステム共済連の設立は、2008年4月に改正が施行された消費生活協同組合法(生協法※)に伴うものです。保険業法との法的整合性を図るため、改正された生協法では共済事業がほかの事業と兼業できなくなりました。
こうした経緯から、パルシステムも新たに共済連合会を設立する運びとなりました。「今後は、共済事業のたすけあいの精神をさらに組合員のみなさんへ広げていきたいですね」。設立認可後に開かれた理事会で専務理事に就任したパルシステム連合会の小沼正昭常務執行役員は抱負を語ります。
これからパルシステム共済連は、どのような活動を行っていくのでしょうか。
掛け金がほかの人をも助けている
受給者からの声が見える共済へ
改正された生協法では、共済事業と購買事業などとを同一生協、連合会が行うことを禁じました。今後は、パルシステム共済連が共済事業を行い、会員生協はパルシステム共済連の代理店という位置づけになります。配達の現場では、募集行為は代理店である会員生協の職員が行うことは可能ですが、委託会社の職員はチラシの配付や契約書の回収、チラシに記載されている範囲内での説明のみとなりました。
「しかし、組合員のみなさんにとっては、一人ひとりが『配達してくれるパルシステムの職員』です。組合員の質問に一切答えないというわけにはいきません。そこで質問を受けた際に『言ってはいけないこと』を決めて、取り組んでもらっています。なぜなら共済はたすけあいそのもの。支払う掛け金は“いままさに困っている人”を助けているからです」(小沼専務理事)。
共済に加入していれば、病気やけがなど、万一のことが起きた場合に入院や通院などの基礎的な保障が受けられます。保険に比べれば制度もシンプルで、掛け金も手軽です。健康保険に入れない人が増加している「無保険問題」や医療費の値上げなどが報道されるなか、最低限の保障が享受できる共済は、万一の時の支えになることは間違いありません。
さらに共済で支払われる掛け金は、自分がけがや病気にあわなくても、けがや病気で経済的に困っている人を助けていることにつながっています。「『これで治療が受けられます』などの感謝の声をたくさんいただいており、読むと『共済はたすけあい、支えあう制度だな』とあらためて痛感します。これからはこうした声がもっと見える共済にしていかなければなりません」と、小沼専務理事は気を引き締めます。
商品学習から人生設計へ
消費者被害の減少にも
共済がたすけあいの制度であることをもっとも象徴している特徴のひとつが、加入できる人の条件の柔軟さです。持病がある人のなかには、持病を理由に保険の加入を断られる人も少なくありません。たすけあいの制度を示す一例として、パルシステム共済連が扱う「コープ共済」のジュニア18コース、医療コースには、すでに入院していたり、入院を宣告されていなければだれでも加入できるタイプを用意しています。ただしこれは、悪用されるリスクも背負うことになります。だから消費者である組合員が学ぶ場もセットで用意しなければなりません。
パルシステムでは現在「パルシステムくらし応援ネットワーク構想」の策定に取り掛かっています。そのひとつである「パル家計応援ネット」は、くらしの保障設計をサポートする学習会などを通じて、全体的な人生設計を考えてもらおうというものです。「商品を考える先は、人生設計につながります。さらに人生設計を考えれば、商品を考えることになるのです。その結果、『賢い消費者』を育てることになり、消費者被害を減らすことにもつながるのです」(小沼専務理事)。
福祉事業との連携をスタート
高齢者の張り合いにも
「パル家計応援ネット」では学習会のほか、相談窓口や健康づくり活動との連携なども視野に入れています。さらに自分の成長を望む組合員へは、それぞれのステージにあわせた教育プログラムを用意し、組合員の悩みに組合員がこたえるような、学びあう環境を整備したい考えです。そのため、パルシステム共済連では、学びあう場や人材を調整するコーディネーターの人材育成にも力を入れていく予定です。
もうひとつの「支えあう活動」が、福祉事業との連携です。現在、パルシステム東京の福祉事業部と先行して取り組んでいます。「3年間共済給付のない女性コースに加入している組合員へ、はし置きやアクリルたわしをプレゼントしているのですが、これらはパルシステム東京のデイサービスセンター『陽だまり』に通うみなさんから、リハビリ活動の一環として作ってもらっています。『陽だまり』のみなさんとは、食事会などを通じて交流していて、その際、組合員からのお礼や感謝の手紙の内容などを伝えています」(小沼専務理事)。作っている通所者のみなさんも張り合いが出て元気になっているそうです。
夢は支えあう地域づくり
人と人がつながりあう関係に
小沼専務理事が将来のパルシステム共済連にかける夢は「地域で支えあうしくみを提供すること」。病気やけがにあった場合はもちろん、子育てや高齢者福祉など、総合的な情報を提供し、ボランティア活動なども含めて地域で利用しあえる体制をつくっていくことだそうです。
「火事などで被災した直後などは、どうしていいか途方にくれてしまいます。入院すれば、家事の援助も必要になります。そんな困ったときに、あれこれと世話してくれるコーディネーターがいれば、どれだけ助かるかしれません。共済が狭い範囲でなく、ほかの分野とも重なって支えあうような地域を各地でつくっていきたいのです」(小沼専務理事)。
教えあいやボランティア活動を通じて人と人とのつながりから支えあう地域ができれば、経済面だけでなく精神的にも支えあえる地域になります。パルシステム共済連は将来、そんな地域づくりの中心的な役割を担えるような組織を目指したいと考えています。
パルシステム共済生活協同組合連合会
(パルシステム共済連)の概要
パルシステム共済連は、パルシステム連合会が行っている共済事業を引き継ぎ、日本コープ共済連との元受共済事業を実施します。共済事業部がパルシステム連合会から分離し、パルシステム共済連として別の組織となりますが、商品や会員生協との関わりなど基本的な部分はこれまでと変わりありません。
パルシステム共済連は、契約者の立場に立った事業運営、及び健全経営に徹することを基本に据え、パルシステムの保障事業を創造し、「組合員にパルシステムが一番に選ばれる」ことを目指して保障事業に取り組みます。また、保障事業を通して、パルシステムのくらし課題解決事業の一翼を担い、組合員のくらしの保障やくらしの課題解決に役立つことを目指します。
※生協法改正…「消費生活協同組合法の一部を改正する等の法律案(以下生協法改正法案)」が2007年5月の通常国会で可決、成立し、2008年4月に施行された。1948年の法律制定以来、59年ぶりの抜本的な改正となった。共済事業では契約者保護のため経営の健全性や透明性等の確保が図られている。規模が一定以上の生協と連合会に他事業との兼業を禁止したほか、経営情報の開示や外部監査の義務付け、共済募集時の禁止行為など契約締結時の契約者保護が盛り込まれている。このほか、理事会の権限や責任の明確化、外部チェック体制などが整備され、県域規制や員外利用規制などについての規制が緩和された。
*本ページの内容は2010年3月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。