地域の連携をつなぐ「中間支援組織」を目指して 4月に始動 セカンドリーグ埼玉(社会貢献活動レポート|2009年12月)
2009年12月1日
2009年4月、埼玉県における地域事業活動の支援を目的としたNPO法人「セカンドリーグ埼玉」が活動を開始しました。社会貢献および、コミュニティビジネスと呼ばれる地域事業活動に取り組もうとしています。子育てや介護福祉をはじめ地域が抱える問題を、地域の住民自らがビジネスの手法で解決していこうという考え方です。セカンドリーグ埼玉では、ドゥコープからの業務受託とともに、各地で活動しているNPOと利用者をつなぐ「中間支援組織」として役割を果たそうとしています。「現在、NPOの諸活動は『点』ですが、今後を踏まえて『線』『面』へと広げていくことが必要です」と話すのは、桑原由次理事。「NPO法制化から10年、今後は継続的に活動できる環境をつくらなければなりません」と話す桑原さんの視線の先には、個配の次となる新たなビジネスモデルが見据えられています。
経営マネジメント力を備えた
生協こそできること
行政サービスのなかには、NPOなどに委託したほうが、コスト、サービス内容とも改善する可能性が高いものがあります。
たとえば図書館。利用する住民のひとりとして、希望する本がない場合の対応は「別の図書館からの取り寄せに1週間かかる」「取り寄せても連絡はできない」など、不満は少なくありません。しかも市区町村からは多額の運営費が注がれています。「運営の業務を地域事情に詳しいNPOに委託すれば、地域特性に合わせたサービス向上とコスト削減が実現できます。地域事業活動(コミュニティビジネス)とは、こうした活動を指すのです」。
しかし、現在活動しているNPOの状況を見回すと、市区町村レベルの業務を一手に引き受ける力量のある団体は、それほど多くありません。「そこで、中間支援組織の存在が必要になります。NPOがまとまって地域行政と協約を結び、その基本ルールに基づいてそれぞれの得意分野をもつNPOへ仕事を振り分けるといったことを、中間支援組織の役割のひとつとしたいのです」と、桑原さんは説明します。
それではなぜ、食品を中心とした商品をお届けする生協が地域事業活動に乗り出さなければならないのか、疑問を感じる方も少なくないのではないでしょうか。桑原さんは「パルシステムグループをはじめとする生協こそ、地域事業活動に最適と考えています」と話します。
生協は、営利を目的としない事業に取り組んでいます。一方、NPOは営利を目的としないところは同じですが、全体的には経済的環境や経営マネジメントの力量がまだ備わっていません。「その結果、カネと気力が尽きた時点で辞めていく人が少なくありません。暮らしていけるだけの経済力がなければ、どんな活動も続けていけるはずがないのです」。
個配に続くビジネスモデルへ
単なる社会貢献じゃない!
世界に目を向けると、グローバル化といわれながら各国で地域事業活動が確立されています。
イギリスでは、NPOが役割を果たすための制度整備を進めています。自治体が仕事を委託するための個別契約とは別に、「コンパクト」と呼ばれる協約をつくり、自治体と参加するNPOが基本的なルールを定めるようにしました。
アメリカでは、企業や個人の寄付により大規模なNPOが多く存在します。活動内容は、地域事業活動に留まらず、貧困層の医療費援助やロビー活動まで多岐に渡ります。「一流大学を卒業したいわゆるエリートが、職業のひとつとして選び、活躍しています」。
イギリスでもアメリカでも、中間支援組織が活躍することで地域事業活動の潤滑油として機能しています。「こうしたシステムから学ぶべき点は多々あります。生協が中間支援組織として役割を果たすことができれば、地域づくりにも貢献できるのではないでしょうか」。桑原さんの考えは、パルシステム全体のあり方にもおよびます。「1990年代、パルシステムは個配で事業を伸ばしてきました。次世代の事業が求められている現在、地域事業活動は新しいビジネスモデルとなる可能性をもっています。セカンドリーグ埼玉は、社会貢献を掲げながら、手法としてのコミュニティビジネスを推進し、ビジネスモデルを確立していきます」。
助け合い活動や保育事業を
ドゥコープから受託
セカンドリーグ埼玉の現在の事業は、ドゥコープの助け合い活動や保育事業、葬祭事業の受託が中心です。
助け合い活動は主に、家事援助の「いきいきネットワーク」、託児助け合いの「キッズヘルパー制度」、学び合いや教え合いを支援する「カルチャーヘルパー制度」の3つの事務局業務を受託しています。
業務を請け負っている各種ヘルパー制度は、依頼があった際に派遣する協力者を電話でコーディネートしなければならず、依頼のたびに大きな労力を割いてきました。そこでセカンドリーグ埼玉では、携帯電話のメール配信システムを導入、依頼された地域などにあわせて自動的に協力できる人を絞り込み、協力依頼を出せるようになりました。今後はこのシステムを活用した新たなビジネスへの応用も考えられます。
保育事業では、2008年11月にドゥコープ草加センター内に開設した保育施設のマネジメント業務を請け負っています。現在は保育受入をセンターに勤務する職員に限っていますが、今後は近隣の工業団地や商工会との連携も提案していこうと考えています。
葬祭事業は、単なる請負ではなく、人とのつながりを重視したシンプルな商品開発や、メンタルケアまで含めた知識を備えた「サポーター制度」の確立についても検討しています。
標準化と人材育成
情報化への対応が今後の課題
今後の課題について桑原さんは「標準化と人材育成、情報化」の3点を挙げます。「NPO制度が法制化されて10年が経ちました。現在も熱意とパフォーマンスをもって運営しているNPOは少なくありません。業務の標準化ができれば、それをベースにさらに活動がしやすくなるはずです。それを実現するには、広い視野でマネジメントできる人材を育成することが必要です。現在『人材タスク』を立ち上げ、学生や定年退職した人たちを中心にネットワーク作りを進めています」。
情報化への取り組みは、各NPOから寄せられた相談内容を統一した「事業評価表」にまとめることで、検索できるデータベース化を進める「事業評価タスク」、集められた情報を必要としているところへいかに提供するかについて検討する「ICTタスク」に取り組んでいます。
厳しい世の中ですが「役に立ちたい」と願う人の数は減少していません。それに対して、経済的にも、人的にも、参加しやすいしくみづくりが求められているのではないでしょうか。
*本ページの内容は2009年12月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。