生産者の暮らしを支え、自給率向上を目指す取り組み パルシステムの予約登録米(社会貢献活動レポート|2009年3月)
2009年3月1日
昨年度に引き続き取り組む「100万人の食づくり」運動は、4月3回からの予約登録米キャンペーンでスタートします。予約登録米は、お米を作付けする前に組合員が1年分の購入を約束する制度。お米の消費を拡大し、食料自給率を高め、また生産者も売れ残りを気にせず安心して米づくりに専念できるというものです。2008年度は、約11万人の組合員さんにご利用いただいています。
きっかけは1993年の「平成の大凶作」。当時は、組合員に年間を通して安定してお米を供給することを目的としていましたが、近年は生産者の米づくりを支援し、また環境を保全する農業を応援する制度として評価されています。しかし、農薬や化学肥料をなるべく使用しない米づくりは、手間のかかる作業の積み重ねです。それでも生産者は情熱を持って取り組んでいます。予約登録米のなかの「ふーどの数量限定米」の産地のひとつ、㈲ちば緑耕舎に伺い取材しました。
昨年配付の職員向けサンプルは
ふゆみずたんぼの「ふーど米」
昨年10月から供給が始まった「ふーどの数量限定米」。農薬や化学肥料を一切使用しないふーどのお米を育てた各産地が、リレー方式で注文した組合員の家庭へ届けています。毎年、そのリレーのトップバッターをつとめるのが、千葉県印旛沼に近い栄町を中心とした生産者団体、有限会社ちば緑耕舎で収穫される早場米のこしひかり。昨年は「100万人の食づくり」運動の一環として、職員へサンプルが配付されました。「職員のみなさんへ配付したお米は、ふゆみずたんぼのほ場で収穫されたものです。ふゆみずたんぼには毎年冬になると白鳥が訪れるようになったのですよ」と、ちば緑耕舎の代表である大野久男さんは教えてくれました。
大野さんにふゆみずたんぼへ連れていってもらうと、そこにはたしかに、20羽あまりの白鳥が羽を休ませていました。多いときは200羽近い白鳥が飛来したこともあるそうです。「白鳥は、稲を刈ったあとに伸びてくる稲穂やドジョウなどを食べているようです。有機栽培の田んぼで、さらに水を張っているから来るのでしょうね」。白鳥が初めてこの地に飛来したのは、十数年前のことでした。当時はまだ、ふゆみずたんぼを農法として採用していなかった時期です。ではなぜ、田んぼに水を張っていたのでしょうか。「それは、たまたま水はけの悪い田んぼだったんです」。大野さんは笑います。
試行錯誤が生み出した
バラエティーあふれる農法
ちば緑耕舎は、平均15ヘクタールもの農地で米づくりを行っている大規模専業農家が、共同で経営しています。いずれも農薬や化学肥料を使用しない有機農法、および大幅に使用を減らした特別栽培農法に長年取り組んできました。「それぞれが昔から、有機に取り組んできた仲間たちです。だから有機の農法は、ふゆみずたんぼに、はるみずたんぼ、紙マルチまでさまざま。決まっているのは、ふーどやエコ・チャレンジの基準に基づいて『○○をしてはならない』くらいです。これだけバラエティーに富んだ農法を実践している生産者団体は、珍しいでしょうね」。
そのほかにも、田んぼに水をめいいっぱい張る「深水」や、1株当たりの本数をあまり植えない「疎植」などが行われていて、生産者がこれまで試行錯誤してきた苦労が伝わります。「それは、過去の反省によるものです。農薬を使用することで、健康被害が出たり、田んぼにすむ生きものが明らかに減少している光景を見てきたのです」(大野さん)。健康のため、地域の環境のための米づくりを目指す志が共通しているからこそ、成り立っているともいえそうです。
生産者にとっての「予約登録米」
こうした環境保全型の農業は、理想を語れても実践するのは困難を伴います。とくにふーどのお米は、草取りが大きな負担です。「ふーどのお米をはじめとする有機栽培米は、雨風になれば管理を強めなければならず、エコ・チャレンジと比べても倍の労力を要します」。だからこそパルシステムの予約登録米は「作付時に年間を通した契約ができるので、安心感があります。生産者にとっては画期的な制度です」と話してくれました。「一般的に農作物は、収穫してからでないと取引量や価格がわかりません。有機栽培米をせっかく収穫したのに販売しきれず、慣行栽培米と一緒に扱われては、苦労が報われません。年間を通して購入を約束してくれる予約登録米は、そんな心配をしなくていいのです」。
そんな現状を少しでも知ってもらい、ファンになってもらおうと、ちば緑耕舎では組合員との産地交流を実施しています。現在は田植え、草取り、稲刈り、しめ飾りとお供え作りといった体験を、一貫して組合員に参加してもらう企画を実施しています。「交流企画では、作業や食事をしながら、参加する組合員のみなさんといろいろな話をします。田んぼの雰囲気や地元の文化、風土など“空気”を感じてもらうことが、買い支えにつながるのではないかと考えています」。
ちば緑耕舎では、例年30家族、100名を募集しますが、4倍近い応募があるそうです。参加経験のある組合員のなかには、白鳥の観察や米づくりを、夏休みの宿題で取り上げたりするために、再び訪れる家族連れも少なくないそうです。
どんなものか知ってもらい
喜んでもらえる米作り目指す
一方で、「目新しいことはしていませんが、生産者は組合員に喜んでもらえるような米を精一杯作っています。交流に足を運んでいない組合員には、普通の通信販売のような感覚で注文している人も少なくないのではないでしょうか」と、大野さんは厳しい指摘も忘れません。「生産者も高齢化が進み、なかには『有機栽培をやめたい』ともらす人もいます。産地に来てもらって、ふだん購入しているものがどんなものなのか、理解していただきたいです」。
ちば緑耕舎に限らず、パルシステムの産直産地は、多くが地域農業において先進的な取り組みを進めています。試行錯誤を繰り返し、その結果、ほかでは買えないおいしいお米ができるのです。
大野さんによると、毎年実施している田んぼの生きもの調査では最近、イトミミズのような小さな生きものが減少傾向に転じ、代わりにモグラやカエルなどが増えてきているとのことでした。「これらの小動物が増えれば、それらをエサとするさらに大きな動物が増えてくることでしょう。少しずつ生態系がよみがえってきています」。大野さんをはじめとするちば緑耕舎の生産者の熱意には、人間のファンとともに、動物も集まってきています。そこには、パルシステムの予約登録米の取り組みも貢献しています。
*本ページの内容は2009年3月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。