パルシステム神奈川ゆめコープの 新しい地域づくりに挑む助け合い活動「ゆいねっと」(社会貢献活動レポート|2008年10月)
2008年10月1日
困っていることを組合員同士で支え合う「くらしの助け合い活動」。高齢者や障がい者の自立支援、産前産後の家事支援、育児支援など、ともに助け合う「共助」活動のひとつとして、全国の生協に根づいています。20~30歳代の子育て世代の加入が多いパルシステムにおいては近年、若いお母さんから子育ての手助けを求める声が増えてきています。そんななか、パルシステム神奈川ゆめコープでは2005年、くらし助け合い活動「ゆいねっと」の制度を見直しました。生協としてできる、実情に即したサポート活動を目指しています。 組合員のライフスタイルが次々に変化し多様化するなか、これからの「くらしの助け合い」はどのように進化していくのでしょうか。パルシステム神奈川ゆめコープの組合員活動支援部くらし支援課課長の庄司 敬さんとゆいねっと事務局の大田和枝さんから、「ゆいねっと」の活動を中心に話を聞きました。
「有償」に対しての“意識のズレ”が制度見直しへ
「ゆいねっと」が2005年にリニューアルされた理由のひとつは、社会環境の変化による組合員間の「意識のズレ」でした。
「ゆいねっと」の場合、支援を受ける組合員が利用料金を支払う「有償ボランティア制度」を採用しています。支払っていただいた料金の一部は、活動いただいた組合員(サポーター)に支払われます。「これはサポートを受ける組合員が一定の料金を負担することで、サポーターと対等な関係づくりを目指しているからです。それを『安い料金で利用できるサービス』ととらえる組合員もみられるようになってきました。有償ボランティアへの理解が十分得られなかったのです」(庄司さん)。そのため、サポートを受ける組合員のなかにはさまざまな要求を課す方もいたようです。 「なかにはサポーターが訪問してからなにを頼もうか決めるというようなケースもありました。お金を支払っているということで、『こっちは客なんだから』という意識になる方も少なくありません。これには当然、サポーターからも『なんのためにやっているかわからない』という声が出てきました。くらしの助け合い活動の本来の目的から外れた内容も増えてきたのです」と大田さんは当時の状況を説明します。
自立支援に制限し、サポーター技量の向上も図る
そこでパルシステム神奈川ゆめコープでは、活動を助け合いの原点に戻すため、「ゆいねっと」の制度を大きく見直すことにしました。まず、混在していた支援の内容を、家事支援(産後サポート、介助サポート、病気けがサポート)と保育サポートに分類し、家事と保育を同時進行しないことにしました。さらに、留守宅で保育する場合はカギを預からない、食事づくりは30分程度、犬の散歩はしないなど、ルールを明確化しました。「ほかの生協には、できる限りすべての要求にこたえようと活動するところもありますが、まずは困っている人が自立できるようになるまでの最低限のサポートをすることにしました」と庄司さんは話します。
一方で、サポーターの研修制度も整備しました。登録は1年ごとに更新することとし、登録時と更新時に基礎的な研修を受けていただいています。そのほか年2回、ステップアップ研修を盛り込み、サポーターの要望に沿うかたちで救急救命やコミュニケーションのとり方などを学ぶようになりました。また事例報告会を開催することで、スキルアップを図っています。「世代を超えたコミュニケーションのとり方へのニーズが高いですね。そのほか保育の安全性確保など、学習会は社会見識を高めるうえでも役立つと好評です」(大田さん)。
価値観の変化も大きく影響するサポーターの減少
しかし、制度を見直したことへの反動は、想像以上でした。それまで年間5千時間以上あった活動時間は、05年には半分以下まで減りました。サポートを受ける組合員から「利用しづらい」との声が増えたほか、サポーターの数も減少傾向にあります。ただし「世代の若い組合員層の意識が変化していることも、少なからず影響しているのではないでしょうか」と庄司さんは分析します。「制度のリニューアルも、たしかにきっかけだと思います。活動時間を以前の状態にまで戻せるよう努力していきますが、社会環境の変化も切り離すわけにはいきません」。
庄司さんは社会環境の変化を示す一端として、サポートを受ける組合員の意識が変化したのと同じく、新たにサポーターとして登録する組合員の変化について語りました。新規登録する組合員の多くは、子育て中の比較的若い世代です。「『子育てに一段落し、多少手は空いたけれど、まだ仕事はできない。だけど社会との接点がほしい』と考える組合員の参加が増えているのではと思います」(庄司さん)。ただ、その多くは短期間でサポーター登録をやめてしまうそうです。「『仕事を始めて活動ができなくなった』という理由が増えました。継続的に助け合い活動ができるような、余裕のある組合員は減少している印象を受けます」(庄司さん)。専業主婦の減少、共働き世帯の増加といった社会環境の変化が、サポーターの減少につながっていることも一因として考えられそうです。
「最大公約数」のサポートで地域にも貢献
社会環境や組合員のライフスタイル変化に対応するため、活動を大きく転換させたパルシステム神奈川ゆめコープ。リニューアル後の制度は「これまでの活動を最大公約数的にまとめたもの」ととらえています。今後はふたたびサポートの範囲を広げていきたい考えです。「たとえば現在、介護行為は資格等の問題でサポートできていないため、付き添いとして通院に同行しても、サポーターは車いすを押すことはできません。サポーターがホームヘルパー2級を取得すればこうした活動も可能になります」(庄司さん)。現在の介護福祉制度では、同居人がいるなどの理由で認定されない人が少なくありません。その制度のすき間に助け合い活動が踏み込めれば、福祉事業との連携も視野に入れることができます。
組合員に活動の存在を広めることも大きな課題です。「サポートを受けた組合員のなかからは『もっと早く存在を知りたかった』という声を多く耳にします。組合員向け機関誌などを通した情報提供は進めているのですが、さらに活動を広めるためにも積極的な広報活動を進めたいと考えています」(大田さん)。「これからの時代をよりよい社会にするには、地域づくりが必要だと思います。少しでも貢献できる活動を増やしていけるよう、助け合い活動を広めていきたいですね」(庄司さん)。
都市と農村、発展と過疎、地域環境がまだら模様に広がる神奈川県において、パルシステム神奈川ゆめコープの取り組みは、これからのパルシステムの地域社会づくりのひとつのモデルとなりそうです。
*本ページの内容は2008年10月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。