日本初のペットボトル再使用実験の取り組み ペットボトルのリユースをめざして(社会貢献活動レポート|2006年12月)
2006年12月1日
容器包装リサイクル法が施行されて10年目、政府は容器包装リサイクル法を改正し、「見直しの基本的視点」のひとつとして[3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進]をあげています。しかし、軽くて便利と利用の伸びてきたペットボトルは、あいかわらずワンウェイ(使い捨て)で、リユース(再使用)は、日本では全く取り組まれてきませんでした。そのペットボトルリユースの実証実験にパルシステムが取り組んでいます。新たな資源循環システムとして、ペットボトルのリユースが日本に定着するのか、パルシステムの取り組みは注目されるところです。実証実験に至るまでの道のりを、(株)エコサポート常務取締役の小沢一郎さんにお聞きしました。
ヨーロッパの状況
ドイツのスーパーに行くとリユースペットボトルに入った水を見かけます。ボトルはこすれて少し白っぽく傷がついていて、ボトルの下の方には何回再利用したかの印がついています。ドイツだけでなく、オランダやデンマークなどの北欧3国もペットボトルのリユースを行っているそうです。「ヨーロッパはリサイクル率が低い、という人がいます。確かにヨーロッパのリサイクル商品は20~30%ですが、それはほかのものはリユースしているからです」と小沢さん。ただ、最近は臭いや安全性が充分でないため、ドイツ以外はリユースを縮小しているという情報もあります(調査中)。ワンウェイペットボトルにデポジット(賦課金)をつけてリサイクル回収しているところも出てきているそうです。ドイツの場合は、リユース率が72%以下になったときはデポジットをつけて回収することになる「72%ルール」を決めて、リユースを実施しています。
パルシステムの挑戦
パルシステムでは、ヨーロッパで実施しているのならぜひ日本でも行いたいと考えました。「アジア全体にワンウェイペットボトルが氾濫する前に、日本は率先してゴミ問題、エネルギー問題に対応していかなければ大変なことになる。パルシステムがこの問題に関して真剣に研究していくことが必要」というのが、パルシステムの問題認識です。
そういう考えから、97年以降、3回ほどドイツを中心に洗浄プラント工場や充てんメーカーなどを視察してきました。はじめはびんと同じ洗浄をすればよい、と考えていたのですが、ドイツの洗浄プラントを見ると全く違っており、充填するときと同じレベルの衛生条件で洗浄しなければならないことがわかりました。さらに、日本で実施する場合にはドイツの洗浄方法だけでは充分ではなく、もっと品質の安全性に配慮を重ねたシステムが必要であることもわかりました。
水の基準は食品衛生法に合致すればよく、ボトルの基準、リユースの基準はありません。日本ではリユース洗浄プラントの研究はされていないため、ドイツの洗浄プラントの使用を検討しています。パルシステムではこれまで、「ペットボトルを10回洗浄するとどう変形するか」「いろいろなものが入ったペットボトルをどう洗浄するか」などについて2~3年研究を続けてきて、今年3月、ペットボトル洗浄に関する特許を申請しました。この技術をドイツの洗浄プラントに上乗せし、確固とした安全性を確保していきたいと考えています。
リユースペットボトル実証実験
今回のペットボトル再使用の実験は、経済産業省の「2006地域省エネ型リユース促進事業」の受託を受けた実証実験です。具体的には、ワンウェイペットボトルを使って次のように行いました。
- 10月23日コープやまなしいちのみやセンターと東京マイコープ駅前店で新しいペットボトルに入れた水を販売。1セット1500ml×2本で300円(1本130円+デポジット料金20円)。11月10日までに容器を回収。
- 洗びんセンターでペットボトルを洗浄し、洗浄したボトルに[天然水]を詰め、11月27日から都内2店舗で合計100セットを販売。12月末までに容器回収。
利用者には別のものを入れないように事前に依頼したり、アンケート調査をしたりしながら調査結果をまとめたい、としています。
パルシステムでは昨年、経済産業省の受託事業として調査研究をおこない、その内容に基づいて今年度実証実験しました。実験を継続するなら、リユースプラントが5~6億円するものなので、これまでのような小額の助成金では難しい、と小沢さん。しかし、実験を継続するなら洗浄プラントを新たに導入するか、今回1回だった実証実験を2~3回続けるなどしてみたいと考えています。
リユースペットを実現するために
パルシステムでは、年間に水が300万本、飲料全体で1200万本の需要があります。リユースプラントを成立させていくためには、年間1000万本のペットボトルを動かす必要があります。パルシステムの組合員がほかで水を購入していることを考えると需要は5~10倍あると考えますが、パルシステム単独でやって成り立つ事業なのか、ほかに呼びかけてやっていくのかも考える必要があります。
容量については1.5リットルを考えていますが、中身によっては1リットルサイズも検討していかなければならないと考えています。ボトルの形態も課題です。また、キャップのリングが残るので、リングが残らないキャップを開発する必要もあります。このように、実現にはいくつもの課題をクリアしていく必要があります。
2012年の容リ法改正のテーマが3R。パルシステムでは「ネットワーク研究会」を立ち上げて研究を進めてきました。意見交換会などを何度か開催し、成果を市民団体などと共有しています。消費者とともに、「こういうプランでできるので支援してほしい」と国に訴えかけ、支援を取り付けていかなければペットボトルのリユースは実現しません。容器メーカーや飲料メーカーなどとも協力関係をつくって、すすめたいと思います。
リユースペットボトルは、循環型のシステムをつくり出す「運動商品」ともいえます。小沢さんは、「職員のみなさんもぜひ、国民的運動と考えて参加してほしい」と話されました。
*本ページの内容は2006年12月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。