パルシステム生消協が「第6回青果フォーラム」を開催 新基準と産直の未来を議論
2017年11月8日
パルシステム生産者・消費者協議会(生消協)は2017年10月13日(金)、東京・千代田区TKPガーデンシティにて第6回青果フォーラムを開催しました。2019年にパルシステム独自の農産物基準「エコ・チャレンジ」を見直すにあたり、生産者と組合員が率直に意見交換をしました。
生消協は、パルシステムに農畜産物を供給する生産者と消費者である組合員が、対等な立場で協議や活動を行う場として、1990年にスタート。青果フォーラムは野菜部会・果樹部会の主催で毎年開催しており、今年は、全国各地の会員産地29産地の生産者53人、パルシステムから会員生協の組合員理事、グループの役職員など、総勢107人が一同に介しました。
開会の挨拶で生消協代表幹事の大津清次さん(無茶々園・愛媛県)は開口一番、参加が今回初めて100人を超えエコ・チャレンジ基準見直しへ関心が高いことを報告。「この間、気候の変動などで農業環境の変化を生産者は実感していると思うが、今後、産直のあり方も含め、見直しを検討しなければと考えています。主体的にしっかりと意見交換を」と訴えました。
次にエコ・チャレンジ基準見直し検討委員会の報告が生消協米部会の江口聡さん(JAささかみ・新潟県)からありました。「エコ・チャレンジの改訂から3年、米産地では耐性の問題や気候変動で病害虫の多発生が懸念されるが、薬剤が使えないなどあらたな問題が発生。昨年はつくば市谷田部でうんかが大発生し、例外規定に基づき禁止農薬を使用しました。こういうことが今後も起こりうる。野菜・果樹もアンテナを張っていただけたら」と話しました。
続いて、生消協消費者幹事でパルシステム群馬理事の吉田澄子さんは、見直し検討委員会主催のつくば市谷田部視察について報告。「禁止農薬例外使用について、私たちはすべての圃場でと思っていたら、実際は1割ほどの田んぼが対象と聞いた。誤解やイメージで不信感を持ったことを実感し、組合員に正しい情報を伝えることの大切さを感じました。今日は生産者ご自身の生の思いを伺い、有意義な意見交換になることを期待します」と述べました。
生消が葛藤や思いを交換
休憩をはさみ、「農薬ローテーションを薬剤抵抗性の管理」と題し、農研機構の𡈽田聡(とだ・さとし)さんの講演で現状や対策について学んだあと、新エコ・チャレンジ基準について意見交換を行いました。産地からは生産現場の状況や現状の基準での問題点や悩みなど、組合員理事からは組合員の声や生産者とかかわるなかでの思いなど、双方で率直な意見が交わされました。
特別栽培基準について野菜くらぶの毛利嘉宏さんは「気象変動で従来と異なる病害虫の発生、また高齢化で人手不足の問題など複数の産地から発言があったが、このままでは基準を遵守できずやめざるをない生産者が増える。やむをえず農薬を例外規定使用すると組合員から不信感が。また県で基準の決め方が違うことにも疑問や矛盾を感じる。今一度、安全・安心、環境保全など、パルシステムが産直で何を訴えていくのか共通認識をつくることが必要ではないか」と厳しく問題提起しました。
ジーピーエス取締役の杉山美佐和さん(パルシステム東京組合員理事)は「8月に近郊産地の研修会に参加したとき、生産者同士で農薬を使わずアブラムシを退治する方法を真摯に意見交換していて、ありがたいと思った。『農薬を使わないで』と言うのは簡単なことだが、農薬は何のためにあるのか、農薬=悪と直結せず、なぜ使うのかを考えることから始め、生産者の気持ちにも思いをはせていくことが大事だと思う」。
アップルファームさみずの山下一樹さんは、「エコに未来を感じない若い生産者が増えている。どうやって価値をつないでいくのか」と産直の存続の危機にふれました。「組合員、パルシステム、生産者で理解し価値を認めるラインが低くなっているのを感じる。それが若い生産者のモチベーションに影響し、実際、生協に出すのは馬鹿らしいという話も聞く。このままでは“産直がつながっていけるか”危機は近づいていると思う」と話しました。
それに対し、パルシステム千葉理事の藤晶子さんは、「良いものはお金のある人しか買えなくなるか、日本で作ったものを日本人が食べられなくなる時代になりつつある。産直をつないで行くにはその価値をわかってもらい、利用し、伝え続けることが肝だと思います」と応えました。
エコ・チャレンジ基準見直し委員の佐々木博子さん(パルシステム千葉理事長)は、これまでの意見を受け次のように述べました。「産直とはどういうことかが問われていると思う。たとえば価格について、『市場のほうが高く売れるから市場に出そう』みたいな話も聞くことがありますし、残念ながら組合員も市場が安くなるとそこで購入し、高くなるとパルシステムに注文が殺到する現実があり、お互い信頼やつながりが薄れている現われと感じます。地道に生消相互の意見のすりあわせを続けていくことが大事だと思います」。
「誰のための」でなく、「何のための」基準か
最後にパルシステム連合会の渋澤温之常務執行役員は、「振り返っておきたいのは、“パルシステムは何のために農薬を削減するのか”を追求した1998年決定の農薬削減プログラム。“誰のための”基準という話が出ましたが、決して誰のためのものでなく、“何のための”基準なのかを双方で突き詰めることが重要で、それはどちらかが一方的に作るのではなく、生産者と組合員が対等にお互いの合意で、同じ価値観を持って見直しができるかどうかが最大のポイントになると思っています。そのうえで新しい基準の見直しを進めて行きたいと思います」とまとめました。