「JA遠州中央公開確認会」を開催 限りなくエコ基準を目指す栽培への努力を確認

2017年2月17日

パルシステム連合会は1月25日(水)、26日(木)の両日、静岡県磐田市で「JA遠州中央公開確認会」を開催しました。「天使のキャベツ」を対象品目に、慣行栽培ながら農薬や化学肥料をできるだけ削減した栽培の取り組みについて、生産者と消費者の二者が確認しました。

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パルシステム静岡主催で68名参加

公開確認会は、生産者と消費者の二者が産地で生産状況を確認するパルシステム独自の制度で、1999年からスタート。2010年度からは、会員生協主催による開催も始まり、今回はパルシステム静岡主催で行われました。

2016年度最後の開催となる「JA遠州中央公開確認会」は、2日間にわたり、JA遠州中央園芸流通センターで開催しました。JA遠州中央で初めてとなる今回の確認会の特徴は、慣行栽培でありながら、農薬や化学肥料の削減に努めていること。事前の講習会を修了した監査人と一般参加の組合員、生産者、JA役・職員、生協役・職員、関係者など68名が参加し、監査品目の「天使のキャベツ」の栽培状況などについて確認しました。

「天使のキャベツ」の産直産地

開会にあたりパルシステム静岡の岩元一豊専務理事が、「公開確認会は生産者と消費者の信頼、信用、愛着を培ってきました。これはどれだけお金をかけても得られるものではありません。今日を機に交流関係をさらに本物にしていきたいです」とあいさつしました。

続いてJA遠州中央営農経済担当の朝比奈篤常務理事がJAや産地についての紹介とともに、「協同組合が世界遺産に登録されましたが、報道も少なくあまり話題に上っていません。農協が改革を求められているなか、協同組合の価値を見直し、お互いに力をあわせていきたいです」と抱負を述べました。キャベツ出荷者協議会の生産者、上村光太郎さんは「数名で栽培を始めた『天使のキャベツ』はおかげさまで若手生産者も増えてきました。先日は前年比6割増の注文もいただきうれしい限りです。味は格別なので今日ぜひ味わってほしい」と、参加者にアピールしました。

産地からのプレゼンテーションでは、生産者で「遠州天使のキャベツ栽培研究会」の角田誠哉さんから「とにかく『うまい!』です。ただ栽培は大変で、生産者泣かせのキャベツでもあります。それでも作っているのは『うまい!』からです」の元気なあいさつのあと、営農事業部の鈴木秀輔さんから詳細が説明されました。キャベツの専用職員を置いていること、栽培するようになった理由や名前の由来、栽培基準や管理、キャベツでは珍しい糖度検査の実施、静岡県の食セレクションに認定されていることなどが紹介されました。

パルシステムとJA遠州中央は2010年よりチンゲン菜の取引から始まり、今ではいちご、インゲン、空心菜、山菜などが出荷され、なくてはならない産地となっています。理念は「農業を通じて住みよい社会と健やかでうるおいのある生活を地域の人たちとともに育み高め続ける」で、生産者を力強く支援しています。品質管理が厳しく行われ、生産者が納品すると1ケース毎に目視で検品し、アブラムシが2匹見つかるとケースごと返品するということです。「検査は日本一厳しい」と直販課長の鈴木信吾さんは話します。

納品された農作物は厳しく検品

納品された農作物は厳しく検品

2014年のパルシステムのエコ・チャレンジ基準改訂後、かつてその栽培基準を満たしていたチンゲン菜などは、静岡県の農作物栽培基準が他県に比べ厳しいことでエコ・チャレンジとして供給できなくなりました。今回の対象品目「天使のキャベツ」も慣行栽培で、温暖で雨や台風被害が多く、水はけが悪い土地での栽培ゆえエコ・チャレンジ基準栽培の難しさも抱えていますが、それでもエコ・チャレンジ栽培に果敢に挑戦する生産者も出てきています。

コストも神経も使う「天使のような」キャベツ

昼食後、ほ場とJAの育苗ハウス、出荷施設を視察しました。キャベツ出荷協議会の鈴木正裕さんのほ場はかつて牧草地で、高齢で酪農をやめた方から借り受けているそうです。こういうほ場は他にもいくつかあり、「茶畑やキャベツ栽培に向かない土地もありますが、できるだけ耕作放棄地を作りたくない」と話します。「僕は『天使のキャベツ』から作ったから続けていますが、通常のキャベツから替えたとしたら、続けられていないと思う。それだけ手間もコストも神経も使う、それこそ“天使のようなキャベツ”なんです」。

次にJAが所有する播種(はしゅ)と芽出し、育苗を行う施設、検品や出荷施設などを視察しました。良い農作物ができるかの6~7割は苗の良し悪しで決まるということで、均一な芽出しと育苗に尽力しています。この施設は全国でも2カ所くらいしかないということでした。

鈴木正裕さん(右端)のキャベツのほ場にて

鈴木正裕さん(右端)のキャベツのほ場にて

育苗ハウス

育苗ハウス

「限りなくエコ基準を目指していることは確か」。今後に期待

視察後、監査所見の発表が行われました。「現在慣行栽培だが、エコ・チャレンジは目指しているのか」「エコ・チャレンジ基準で栽培している生産者もいることがわかった」「県内基準よりも少ないことは確認できた。多くの生産者がエコ・チャレンジ基準を目指していることは確かだった」など、今後エコ・チャレンジ基準での供給に期待する質問や所見が出されました。
生産者は「10、11月は雨が多く、薬を使用しないと畑ごと全滅の危機もあります。また、基準どおりに作ると品質不良、甘さが出ないということもあり、悩ましいところです。土壌診断をして健康で良質な土作りをするなど、できるだけ努力はしていきたい」と答えていました。

また、生産者監査人のパルシステム生産者・消費者協議会の小川保生産者幹事(JAつくば市谷田部産直部会)は、「若手が多くて頼もしい。『50年後も作るんだ!』と言っていました。『50年作ってきた』という人はいたが、『後も』と言う人は初めて。たくさんの女性生産者は産地の力だと思うので、ゆくゆくは女性部を作っていただきたい」と期待しました。

監査人のまとめとして㈱ジーピーエス事業本部長の工藤友明さんは「今回、監査人の姿勢に感銘を受けました。昨日も深夜まで打ち合わせをしていて、組合員の代表としてきちんと監査しなくてはという気骨を感じました。今回の確認会で大事なことは対象品目が慣行栽培のものだということ。しかしその中身は通常イメージする慣行ではなく、生産者の努力や挑戦があるということが、今回の確認会で見たり確認できてよかったのではないでしょうか。消費者として非常に頼もしく感じました」と述べました。

最後にパルシステム静岡の上田由紀副理事長は、「カタログだけで知ることの限界――『エコ・チャレンジ』『コア・フード』表示がないものの栽培内容がわかりにくい――を感じました。産地の気持ちを受け止めるためにも、こういう場はぜったい必要と強く思う会でした。生産者と消費者、対等な立場で食を一緒に守り、ほんものの食をつくっていく。これこそパルシステムの精神だと思います」とまとめました。

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生産者と監査人のみなさん