配達担当一人ひとりが「地域の目」に(社会貢献活動レポート|2016年6月)

2016年6月1日

ドアの向こうからうめき声
毎週配送だから気がつける

パルシステム神奈川ゆめコープでは、2011年から配送トラックに「こども110番の車」と表示されたステッカーを貼っています。犯罪にあった方が助けを求めたときの安全確保や、事件・事故時の連絡などがおもな活動です。「子どもや高齢者などが安心して暮らせる地域社会づくりを目的に始めました」と、事業本部長の石川強さんは経緯を説明します。

毎週の配送で地域をしっかり見守ります。

見守り活動では、神奈川県横浜市戸塚区、大和市と「地域見守り協定」を締結し、同生協の事例件数は、延べ259件の報告事例と、行政へ72件の通報実績となっています。通報実績のうち、2013年からの3年間で7回、自治体などから感謝状を受けています。その多くは子どもの保護ではなく、配送で訪問した組合員宅で救急車を手配したというものです。

横浜南センターのある配送担当者は、ふだん在宅している組合員宅を訪問したとき、ドアの向こうから小さなうめき声が聞こえたそうです。改めてドア越しに声をかけると、確かに助けを求める声が聞こえたため、ドアを開け、組合員を救助しました。ロフトから落ちて腰を強打し、動けなくなっていたそうです。担当者はその場で救急車を呼び、大事に至ることを防ぎました。

感謝状を受けるパルシステム神奈川ゆめコープ 平塚センターの田中 泰広さん(現、大和センター センター長)。

石川さんは「『いつもは在宅しているのにおかしい』と感じられたのは、毎週、配送に通っているから。だからこそ異変に気づけたのだと思います」と話します。配送の際、前回の荷物がそのまま残っていたり、新聞が積み上がっていたりするケースは“もっとも危険なサイン”だそうです。

パルシステム神奈川ゆめコープでは職員に対し、組合員宅で異変が生じたときにどう行動すればよいか、研修などを通じて理解を深めています。「もっとも留意すべきなのは『判断に迷うとき』ですが、『迷ったら上長へ報告し、判断を仰ぐように』と指導しています」(石川さん)。

パルシステム神奈川ゆめコープの配送トラックに貼ってある「こども110番の車」ステッカー。

189自治体と見守り協定
約2,300台が「地域の目」に

近年、都市部を中心に「地域で助け合う力」が落ちているといわれています。核家族化の進展や、東京都区部では総世帯数の過半数を単身世帯が占めるようになったことなどもその一因です。

これまでは、何か事故が起こっても家族や周辺の住民が助けるケースが多かったかもしれませんが、こうした世帯人数の減少で「近隣で異変に気づく人」が少なくなっているのです。

そこでパルシステムグループでは週に1回、定期的に組合員宅を訪問する事業形態を生かし、各地の自治体と「地域見守り協定」の締結を進めています。配送時、いつもと違った様子などがあった場合、配送センターを通じて自治体の窓口へ連絡します。また、業務中に事故にあった人を見かけたときも、警察や救急車が到着するまで付き添うケースもあります。

グループ全体における自治体との「地域見守り協定」締結数は、10都県で189の自治体にまで広がっています。なかでもパルシステム茨城は、2015年7月までに44のすべての市町村と協定を締結しています。さらに、各生協の職員は「認知症サポーター養成講座」などの研修を受講し、より適切な対応ができるよう努めています。協定が結ばれていない地域も含め、パルシステムのエリア内で配送する約2,300台の配達担当が、地域の「見守り役」になっています。

家族に基本情報(※)をメールで通知
「見守り安心サービス」を準備

2016年3月、認知症の男性が電車にはねられ死亡し、家族が鉄道会社への賠償責任を負うかが問われた訴訟で、「家族に責任はない」との最高裁判決がありました。認知症患者の徘徊や高齢者の孤独死、子どもへの犯罪を未然に防ぐためにも、地域の見守り活動は社会から求められています。またパルシステムでは、孤独死などに遭遇した職員への心のケアも必要だと考えています。

自治体との「地域見守り協定」は、行政の窓口を明確にして連絡や対応の役割分担をすることで、スムーズな連携が実現できます。それによって、配送や営業担当のみなさんが安心して地域で活動することができるようになるのです。

パルシステムでは、配送を通じて家族の安否確認ができる「見守り安心サービス」を、今秋開始をめざして準備しています。登録すれば毎週のお届けが完了するたびに、離れて住む家族が配送でおうかがいした際の基本情報メールを受け取ることができるようになります(ただし個人宅配利用で、原則として60歳以上の方のみ)。このサービスを導入することで、配送担当が異変の可能性を感じた際は行政窓口へ連絡し、事故を防止することもできます。

政府は増え続ける後期高齢者に対し、介護職員が2025年に38万人も不足するという試算を出しました。これは「2025年問題」ともいわれ、専門家からは深刻な問題へ発展するとの指摘も出ています。人材不足に対応するには、一人ひとりが助け合う地域社会づくりが必要です。パルシステムはこれからも、「見守り活動」を通じて安心して暮らせる地域づくりに貢献します。

※ 基本情報は、「在宅、不在状況」「商品お届けの有無」「OCR注文用紙の受領」です。

*本ページの内容は2016年6月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。