食べ物を捨てない生活で「ほんもの」の豊かなくらしを提案(社会貢献活動レポート|2014年11月)

2014年11月1日

パルシステムでは2014年度から、一人ひとりの選択でよりよい社会や自然環境を次世代へ引き継ごうと、「ほんもの実感!」くらしづくりアクションを展開しています。その一環として、食べ物をムダなくおいしく食べる豊かなくらしを提案。パルシステム連合会では2014年7月、「食べ物を捨てない生活で『ほんもの』の豊かなくらしを!」をテーマにした学習会も開催しました。

7月30日、「ほんもの実感!」くらしづくりアクション2014連続講座の様子

「NO-FOODLOSS PROJECT」ロゴマーク「ろすのん」
事業者と家庭、双方における食品ロスの削減をめざし、関係6府省庁が連携しプロジェクトを展開しています。

国内の米生産量に匹敵する
食品が廃棄されている

2014年3月、農林水産省が後援する「第1回食品産業もったいない大賞」で、パルシステムは「審査委員会委員長賞」を受賞しました。耕作放棄地を活用し飼料用の米を生産する活動や、産直原料を有効活用した『茎が長めのブロッコリー』をはじめとする商品開発などが「消費者を巻き込んだ多種多様な取り組み」として評価されました。

産直原料を有効活用した『茎が長めのブロッコリー』

食品廃棄の削減は、日本国内はもとより世界中の課題です。人口増加と経済発展による食生活の変化で、食料の需給はひっ迫しつつあり、すでに栄養不足人口は8億4千万人に達しました。一方、食料生産量の3分の1にあたる13億トンが毎年廃棄されており、国際連合食糧農業機関(FAO)では2011年から、「食品廃棄物削減キャンペーン」を開始しました。

日本国内では、年間約1、700万トンの食料が廃棄されており、そのうち食べられる「食品ロス」は日本の年間米収穫量に匹敵する約800万トンにも及ぶといわれています(右グラフ参照)。この状況から、政府は製造、流通、小売など各業界と連携し、食品ロス削減に向けた国民運動「NO-FOODLOSS PROJECT」をスタートさせました。

出典:国際連合食糧農業機関(FAO)、農林水産省

7月30日、「ほんもの実感!」くらしづくりアクション2014連続講座で講演した、農林水産省 食料産業局 食品産業環境対策室の長野麻子室長は、「家庭でも、多くの食品ロスが発生しています」と指摘します。食べられるのに捨てられてしまう野菜の切りくず、賞味期限前にもかかわらず手つかずのままごみに出される食品も少なくありません。長野さんは「消費者、事業者の両輪で実践しているパルシステムが、運動をけん引してくれれば」と期待します。

食品ロス削減について講演する長野室長

生協の活動自体が「消費者教育」

パルシステムでは2014年7月、レシピ集『まるごとおいしい!使いきりレシピブック(※)』を発売しました。野菜の保存方法や常備菜の作り方だけでなく、ふだん捨てられがちな野菜の皮や芯、収納庫に眠ったままになっている乾物などをおいしく食べるためのレシピが詰まっています。
※関連URL:「ほんもの実感!」くらしづくりアクションページ

また、5月にリリースしたスマートフォンアプリ「まめパル」は、組合員のみなさんが注文した食材をムリなくムダなく楽しく管理するアプリで、リリース以来、多くのダウンロードがあり好評です。

左:計画購入を応援するスマートフォンアプリ「まめパル」
右:「もったいない」の知恵が詰まった『まるごとおいしい!使いきりレシピブック』

長野室長とともに講演した東京家政学院大学副学長で、パルシステム神奈川ゆめコープの員外理事も務める上村(うえむら)協子さんは、こうした楽しく学べる取り組みが、今後の消費者のあり方のヒントになると考えています。「『消費者教育』という言葉は、『だまされないために』という受け身でネガティブなイメージがついてしまいました。重要なことではありますが、食や健康、環境問題について仲間と学び、楽しく行動するパルシステムのようなポジティブなイメージも付加されるべきです」。

上村さんによると、消費者教育が発展することで消費者は、消費の選択が持続可能な社会づくりに寄与する「消費者市民」、消費者であり生産者でもあることを自覚する「生産消費者」へと変わっていくことができるといいます。「生協は、活動自体が『消費者教育』であり、これは国や一般企業にできることではありません。組合員と職員がともに考えるパルシステムだからこそ、その活動と意義を社会へ大きく発信できるのではないでしょうか」と提起しました。

週1回の宅配を利用することも
立派な社会貢献

そもそも週に1回、定期的に組合員宅を訪問し、商品を届けるパルシステムの宅配の仕組みも「もったいない」を実践する活動です。

店舗の場合、「いくつ注文があるか」を正確に予測することはできません。それに対しパルシステムは、事前に注文を受けることで過剰生産や売れ残りを減らし、製造・流通段階でのロスを抑制しています。家庭でも、落ちついた時間にカタログを見て注文する行動は、セール品の衝動買いを抑えることができます。最終的には、食品廃棄を減らせるだけでなく、経済的な無駄遣いも抑えられるのです。

国産の食材をできるだけムダなく使いきることは、それだけ食料自給率の向上につながります。捨てずに済んだ食材は、回りまわって栄養不足人口を減らすことになり、世界の飢餓を解消する一端にもなるのです。しかも、安全性が高く、資源循環や持続可能性にこだわったパルシステムの産直商品であれば、産地の環境保全や地域経済・文化の活性化などにも貢献できます。「消費者として自覚を持ち、商品を正しく選択することは、生産者のことを考えることにもなり、ひいては家庭における生産者と消費者、つまり男女の格差を改めるきっかけにもなります」と上村さん。商品を「選ぶ」という行為は、それだけの力があるのです。

「消費者教育」について講演する上村教授

パルシステムの「ほんもの実感!」くらしづくりアクション2014は、商品を「選ぶこと」でくらしや地域を変えていくことを呼びかけます。ムリなくムダをなくし、くらしを豊かにしていく「もったいない」活動もそのひとつです。産直産地やメーカーの生み出した食べ物を、一人ひとりがしっかり使いきることも、大きな社会貢献です。

*本ページの内容は2014年11月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。