“林業の産直”に挑戦! 山梨県の南都留森林組合と「産直協定」締結(社会貢献活動レポート|2014年3月)

2014年3月1日

パルシステム連合会は2014年1月、山梨県の南都留(みなみつる)森林組合と産直協定を締結しました。2012年に制定された「森林・林業方針」に基づくもので、林業分野では初めての締結です。今後は、組合員との交流を図るほか、夏からはおもちゃなど2品の発売が予定されています。さらに3月には、日本一の清流といわれる島根県高津川の森林組合、漁協、農協との産直提携が締結されました。

調印式にて握手を交わす、南都留森林組合・杉本光男組合長とパルシステム連合会・山本伸司理事長(左)

伐採は自然破壊じゃない
夏に間伐材おもちゃ発売予定

農業、畜産業、水産業で産直を続けてきたパルシステムが、今度は”林業の産直”に挑戦します。

パルシステム連合会は、2012年に制定した「森林・林業方針」に基づき、山梨県の南都留森林組合と「産直協定」を締結しました。1月16日、都留市の南都留森林組合事務所で開催された産直協定書の締結式には、森林組合のみなさんのほか、都留市を中心に活動する加工メーカー、パルシステム山梨、パルシステム連合会など多くの関係者が集まりました。また、地元の新聞やテレビ局も取材に訪れ、地域活性化へ向けた期待の高さが伺えました。調印式を終えた南都留森林組合の杉本光男組合長は、「産直協定を機に、両者がそれぞれのアイデアを取り込むことで、新たな価値を創造していきたい」と抱負を語りました。産直協定により両者では、地元のメーカーと協力しながら、「間伐材」を利用した商品を開発。第1弾としてカタログ『つ・む・ぐ』夏号で、おもちゃ作家の宮崎剛さんがデザインした積み木と、消臭効果が高いと言われる炭を加工した置き物を発売します。

『つ・む・ぐ』夏号で発売予定の積み木と炭の消臭剤

間伐は、森林を保全するのに欠かせない作業です。森林には降った雨水を蓄える保水機能があり、それが水資源の確保や土砂災害の防止、多様な生態系の保全といった役割を果たしてくれます。その機能を活かすには、ある程度育った木を間引いたり、枝を払ったりして木々の間隔を育ちやすい密度に調整し、日光がほどよく届くようにする間伐が重要。ここで出るのが間伐材です。「木を切ることは自然破壊なのでは」と心配する声を聞きますが、実は、木を切ることが、森林を保全するのに不可欠なのです。

林業者の「不要なモノ」から
雇用や経済の流れを生み出す

間伐材は、長さ数メートルにまで大きく育つものもありますが、それでも林業者からすれば「不要なモノ」だったりします。建築材として使うには不十分な木でも、生活用品などに加工・販売すれば、小さくても経済の循環が生まれ、収入が森林保全に役立てられる―それこそが”林業の産直”の原点です。

今回発売するおもちゃには木工加工、炭の消臭剤には炭化し成形する作業が必要になります。「商品の販売が始まれば、そのぶんだけ地域に雇用が生まれます。今後、多様な商品を展開することで、そうした循環が広がっていくといいですね」とパルシステム連合会の野津秀男第2商品部長は期待を寄せます。

一方、森林組合の小林卓也参事は「これまでのその場しのぎの林業では、森が荒れ、地域が疲弊していくだけだと考えています。地域の人が利用でき、自立できる林業をめざしたいものです」と話します。

小林さんは、ゴルフ場の副支配人や家具の営業職など、サービス業から森林組合へと転身した異色の経歴を持ちます。森林組合では、ほかにも異業種から人材を採用することで新たな視点からの活動を始めています。整備され日光が差し込む林地で、こごみやみょうがの栽培も開始しました。「産直協定により、これまでの枠組みにとらわれない挑戦ができるのではないかとわくわくしています」(小林さん)。

整備された森林は日光が地面まで届きます

互いの「知らなかった」を
「知る」が財産に

商品をデザインした宮崎さんは「積み木は、小さい子どもにも木を握って感じてほしいという願いからシンプルな作りにしました」と話します。炭の消臭剤は、冷蔵庫の卵入れに置いて使用する場面を思い浮かべ、ロシアの民芸品「マトリョーシカ」をモチーフにデザインしたそうです。さらに「木を素材とする職業ながら、その木がどう育っているのかについて、商品開発を通じて初めて知りました。これからもデザインの力で森林再生に関わっていければ」と、宮崎さんは力強く語ります。

デザインしたおもちゃについて語るおもちゃ作家の宮崎さん

そして森林組合、パルシステム関係者ともに「何よりも、交流による信頼関係を大事にしたい」と口を揃えます。「地元の生協としてどう連携できるかを考えながら、活動を広げていきたいです」(パルシステム山梨・白川恵子理事長)、「都市に住んでいても『あそこの森はどうなっているかな』と思いをはせるような、組合員やパルシステム関係者の『思いの森』をつくっていきましょう」(パルシステム連合会・山本伸司理事長)、「草の根のコミュニティビジネスを創出し、新たな林業を『開墾』することを期待します」(杉本組合長)。

森林組合では、地元パルシステム山梨でいきいきと活動する女性たち(組合員)に触れ、これまでタブーとされていた女性職員の登用も始めたそうです。これまでつながりの薄かった林業と生協が、それぞれの「知らなかった」を知り、互いに活かし合う関係が、すでに生まれつつあります。組合員が森を支え、林の生産者が資源を活用する―そんな持続可能な関係が、始まろうとしています。

 

「これから何するの?」に答えます!

  • 『つ・む・ぐ』夏号(6月発行)で、間伐材を使用した2商品(『どっちかな積み木2段』(積み木)/『炭たまご~マトリョーシカ~』(炭の消臭剤))を発売。
  • 組合員が参加できる交流企画を検討。
  • 「木育」をテーマにしたプロモーションを展開。
    1. パルシステムと「東京おもちゃ美術館」の協同イベント開催検討。
    2. オプションカタログ『yumyum』誌面やWebサイトで「木育」特集掲載検討。

*本ページの内容は2014年3月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。