福島・会津若松の仮設住宅で買い物支援 被災者の日常に寄り添う(社会貢献活動レポート|2012年5月)

2012年5月1日

パルシステムは2011年12月、東日本大震災の復興支援活動の一環として、一般社団法人ふくしま連携復興支援センターへ2tトラックを寄贈しました。トラックは、福島県会津若松市を中心に活動する「元気玉プロジェクト」と連携し、仮設住宅4カ所へ食品を中心とした商品の買い物支援活動に活用されています。また、パルシステムは、活動する人員派遣や商品の提供などで活動を支援し続けています。
震災から1年が過ぎ、避難したみなさんは仮設住宅で日常生活を送っています。いったんは身を落ち着けることができたものの、期限の決まっている住まいでの生活は、抱えきれないほど多くの不安があります。支援活動は、単なる物品の供給ではありません。不安と寄り添い、いかに支えることができるのか、生協だからこそ実践できる活動です。会津若松市長原地区にある「長原仮設住宅」での買い物支援活動を取材しました。

商品を選んでいる仮設住宅の住民のみなさん

集会所を訪れた方に話を聞く職員

子どもたちも毎週楽しみにしています

「戻ることはあきらめたよ」
それでも故郷の光景は浮かぶ

福島県会津若松市での買い物支援活動は、市内にある仮設住宅で2011年12月から開始されました。取材では、長原地区にある「長原仮設住宅」を訪れました。住宅数はおよそ200戸、入居率は6割程度です。訪問する仮設住宅はいずれも、福島第一原発のある大熊町から避難したみなさんが住んでいました。大熊町は海岸沿いの「浜通り」と呼ばれる地域。降雪量は少なく、雪深い会津地域とは気候や生活習慣などが大きく異なります。「雪かきはもう慣れたね。雪が降るとみんな表に出てくるから、むしろ楽しいくらい」と、集会所を訪れた女性は話してくれました。

会津地域は山深い地域です。「同じ晴れでも空の色がぜんぜん違うのよ。こっち(会津)はうす曇りのような空だけど、大熊の空は青。本当にきれいな色なんだから」と女性は言います。集会所では、故郷を懐かしむ言葉が、端々から聞こえてきました。そして、自分に言い聞かせるようにつぶやきます。「でも、大熊には帰れっこない。とっくにあきらめたよ」。

仮設住宅には、比較的年齢層の高い世帯が住んでいます。その多くが原発事故前は農業を営んでいました。日ごろから天気と向かい合っていたからこそ、土地柄の違いを感じ、望郷の念はいっそう強まります。しかし、長年、土と触れあった農地は放射能に汚染されてしまい、元に戻すには長い年月がかかります。女性からは言葉とは裏腹に、それでもあきらめきれない無念さが伝わってきました。

当初は震災の話ばかり
ようやく明るい雰囲気に

買い物支援活動は、仮設住宅の敷地内にある集会所に商品を並べて行います。商品を試食しながらコミュニケーションが取れるスペースもあり、買い物に来た方同士のおしゃべりの場になることも。取材当日は、通常使用している集会所が別の催事で使用できず、場所を移しての販売となりましたが、開始予定時刻にはすでに数名が待機していました。

長原仮設住宅には、1・5 kmほど離れた場所にスーパーマーケットもありますが、道中は坂が続き、徒歩で慣れない雪道の往復となってしまうそうです。「その意味でも、重宝しています」と、長原仮設住宅自治会の斉藤重征会長は話します。この日も2時間足らずの滞在で20名程度が来場し、商品を購入していました。

試食スペースにはほとんどの来場者が腰を下ろし、お茶とともに提供された焼きおにぎりやチキンナゲット、漬物などの試食品を食べながら会話が広がります。「来た来た」「こっちだよ」と、顔見知りの来場者が声を掛け合いだんらんする姿も増えていきます。会話の内容は、家族の近況や購入した商品などさまざま。「始まったばかりのころは、震災と原発事故の話ばかりで、みなさん暗い顔をしていました。ようやく、世間話に花を咲かせる明るい雰囲気になってきましたね」と、買い物支援で連携する現地の「元気玉プロジェクト」の星和弘さんは話します。

来場者は、支援に来た職員へ「野菜が買えるのはうれしいけど、夫婦2人にはちょっと多いかな」「できればお刺身が食べたい」などの要望を寄せていました。そこから「(間引きで摘む)野菜の新芽が甘くておいしいのよね」など、農家ならではの話で盛り上がります。「毎週来ているので、住民も遠慮なく話をすることができます。試食はこんなに豪華でなくていいから、これからも継続してくれるとうれしいですね」と斉藤自治会長は期待していました。

活動に参加した職員たち

仮設住宅に住む多くが高齢者

仮設住宅では「みそ作り」も行いました

生活の楽しみを見つけたい
衣食住の次のステップへ

仮設住宅の住民も、主体的な活動への挑戦を始めています。パルシステムが3月17日に手作りみそをテーマにした交流企画を提案したところ、子連れの母親から「ほかの人にも企画を紹介したい」との声があがりました。そこで、住民主催の企画を実現することができました。

今後は、パルシステムが学習会などで蓄積したノウハウを生かし、パン作りやウインナー作りなどの体験教室を住民主体で開催してもらう予定です。「少しずつですが、住民のみなさんが生活の楽しみを見つけ始めています」と説明するのは、パルシステム連合会の瀬戸大作事業副本部長。「日常のくらしがようやく軌道に乗り始めたといっていいでしょう。しかし、その生活も安定しているとはいえません。いかにして継続できる支援体制を組み立てるか、これからが正念場ではないでしょうか」。

来場した方のお子さんは、たくさんのミニカーを持ってきていました。塗装がはげかけていたものが多いのは、家で遊ぶ時間が長いことが想像できます。これは母親も同じ。衣食住がようやく満たされ、次のステップへ向けた生活の支援が求められています。

課題は持続できる体制づくり
地域でつながるしくみをめざす

義援金や寄付も重要ですが、パルシステムでは、支援する人も支援を受ける人も負担の少ない、持続できる体制を模索しています。そのひとつが、地域が一体となった活動です。

今の買い物支援ではパルシステムグループの職員が現地を訪問していますが、それを地域で支えることができれば、さらに継続性の高い活動につながります。たとえば、一部の生協で導入している「ステーション」と呼ばれている事業。1カ所に商品を届け、地域の利用者が引き取りに来る方式で、カフェを併設した事業所もあります。住民が供給もする役を担うことができれば、住民の収入にもつながり、地域が抱える課題を解決するきっかけにもなります。

「一朝一夕にはできません。住民のみなさんの置かれている状況を慎重に見極めながら活動の範囲を広げ、地域で支え合うしくみがつくれればいいですね」と瀬戸副本部長は話します。会津若松の仮設住宅には、パルシステムの来訪を楽しみにしている人がいます。ゆっくりと、しっかりと、その輪をつなげていく役割が求められています。

*本ページの内容は2012年5月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。