組織内、地域との連携をめざすパルシステム埼玉の挑戦 本部に通所介護施設を併設(社会貢献活動レポート|2011年10月)

2011年10月1日

パルシステム埼玉は2011年8月、蕨市に新本部を開設しました。新本部の特徴のひとつが、併設された福祉事業所「ぱる蕨」(通所介護、訪問介護、居住介護支援)の、通所介護施設「デイサービスぱる蕨」です。9月にオープンした同施設は、入浴設備や機能訓練室、相談室といった基本的な設備はもちろん、利用者がリラックスして過ごせるようカラオケもできるデイルームやキッチンも備えています。運営はパルシステム埼玉の支援で設立した社会福祉法人ぱる(社福ぱる)が担い、利用状況は好調な滑り出しとなりました。今後はパルシステム埼玉と連携を深め、イベント開催なども視野に、地域に開かれた生協としてのモデルセンターづくりに取り組む計画です。

パルシステム埼玉新本部と併設の「ぱる蕨」

パルシステム埼玉 福祉担当 塚本 健 部長

開始3週で好調な利用率
アットホームな雰囲気が好評

「次は『く』で始まる地名を挙げてください」と問いかけるスタッフに「国立」「クロアチア」「国見」などの回答が次々と利用者から飛び交っています。その隣では、じっと盤面をにらみ将棋を指す人、ゆっくりとテレビ番組を楽しむ人もいました。「それぞれが楽しめる」を「デイサービスぱる蕨」(ぱる蕨)は提供しています。

「クイズや手芸など、施設でのイベントはすべてスタッフが考えています。利用者から『今日はつまらなかった』と思われないためにも、担当のスタッフは準備に懸命です」と、パルシステム埼玉福祉担当部長の塚本健さんは話します。

デイサービスぱる蕨は、9月1日にオープンしました。取材した日は3週間が経過していましたが、定員12名の施設で7名の利用者がありました。「一般的には開所してから半年で利用率が30%に達していればいいほうだといわれています。定員12名の当施設でいえば4名です。それが現時点で平均して4名から5名の利用者があります」(塚本さん)。

経営の目安とされている「1年後に稼働率50%」という数字も「現時点で手応えを感じる」と、塚本さんは声を弾ませました。「地域の需要もあったかもしれませんが、開所前から準備を進めてきたスタッフの努力の結果です」。

利用者の反応も良好で、利用をやめる人もいないそうです。少人数でアットホームな雰囲気は、着実にファンを増やしています。

職員レベルでのつながりを期待

パルシステム埼玉は、福祉事業部門を社会福祉法人ぱるに移し別組織としたことで、それぞれの組織は事業や活動に専念できるようになりました。しかし一方で、両組織の連携が薄れるということにもつながってしまいました。「パルシステム埼玉では、組合員によるたすけあい活動『いきいきネットワーク』が、介護福祉制度の対象にならない家事援助などの活動を通し連携してきました。しかし、職員レベルでの連携は皆無といっていいほどです。『なにかきっかけがあれば』と、ずっと模索していました」と塚本さんは話します。そんなとき、パルシステム埼玉本部が建て替えられることに。介護福祉施設の併設を提案したところ、実現することができました。「この建物を、両組織の連携のシンボルにしたいですね」と塚本さんは期待します。

和やかな雰囲気の施設は柱がないため広々としています

人が通うセンターへ

パルシステム埼玉の新本部が「地域に根ざした生協」となるためにも「ぱる蕨」の必要性を塚本さんは説明します。

「店舗と異なり、配送センターには人が集まりにくいのが実情。近隣住民のなかには無機質に感じる人もいるのではないでしょうか。そこにデイサービスである『ぱる蕨』があれば、常時人の流れがあり、親しみやあたたかみ、人間的なつながりが生まれます。ボランティアなど、いろいろな人間の流れも広げられれば、本部やセンターへのこれまでのイメージも払拭されるのではないかと思っています」(塚本さん)。

便器の前方に設置したボードは体を支えやすいと利用者にも好評

連携で利用者の買い物支援の可能性も

今後の連携は検討中ということですが、運営が軌道に乗れば少しずつ交流できる企画を考えていきたいと塚本さんは言います。センター祭りなどのイベントへの協力や、利用者の買い物支援など夢は広がります。「たとえば、利用者はバス送迎なので、ぱる蕨で班を作り定期的にパルシステム商品を利用してもらうようにしたら、わざわざ買物に行かなくてもすむようになるのでは? 高齢者にとっては有益なサービスではないでしょうか」。

本格的な連携は、これからです。2011年に策定したパルシステムグループの「2020年ビジョン」でも福祉事業を総合的に進めることが示されています。パルシステムが今後、福祉事業に対しどのようなアプローチで挑戦していくのか。このパルシステム埼玉の取り組みが、そのモデルのひとつになりそうです。

正面奥がキッチンになります

「社会福祉法人ぱる」の概要と設立目的

デイサービスぱる蕨を運営する社会福祉法人ぱるは、パルシステム埼玉(当時ドゥコープ)の支援で2003年に設立。当時は、2000年に介護保険制度が施行されるなど、「高齢化社会」への対応に社会の関心が高まっていました。パルシステム埼玉は「加速する高齢社会に生協として積極的に役割を果すため」(亀山裕二専務理事)、社会福祉法人ぱるを設立し、介護保険事業を中心とした福祉事業を展開してきました。

その取り組みのひとつが戸田市より選定され運営している、「いきいきタウンとだ」。ここでは特別養護老人ホームをはじめ、デイサービスやショートステイ、訪問介護、小規模多機能施設など複数の福祉事業を展開しています。

「ハコモノとか閉鎖的イメージのない、入居者が地域の一員という実感や、地域住民も入居者や高齢者といっしょに生活しているという実感が持てるような『街づくり』をイメージしています。誰もが地域と一体となって最後まで自分らしく、いきいきとくらしていける福祉をめざしています」(亀山専務理事)。


デイサービスぱる蕨に期待

パルシステム埼玉
専務理事 亀山 裕二さん

今回デイサービスを併設したのは、パルシステム埼玉発祥の地・蕨市でも、「街づくり」を積極的に進めていきたいという思いからです。福祉施設を通じ、無店舗事業と連携による地域全体の活性化に役立つ存在になっていきたいと考えています。

*本ページの内容は2011年10月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。