ブームで終わらせない!パルシステムが取り組むフェアトレード(社会貢献活動レポート|2010年11月)

2010年11月1日

フェアトレードは、購入という行動によって地域が継続的に商品をつくることにつながる活動です。地域は商品の対価として経済を成り立たせることになり、援助に頼らない自立した構造を構築できます。フェアトレードを目的とした商品は現在、代表的なものでバナナやエコシュリンプなどがあり、組合員からも高い人気を得ています。さらに2010年7月からは、インターネット注文限定の専門ショップをオープンしました。またパルシステム山梨では「エコ・リカーショップ」を中心に、フェアトレード商品の普及活動へ積極的に取り組んでいます。

ネパールのアイピローの生産者

洋銀のスプーンや装飾品を製作する
ネパールの生産者

インターネット上の「パルシステム フェアトレード
ショップ」(2010年9月4回企画の画面)

連合会コミュニケーション部
個人対応推進課
加藤 かおりさん

パルシステム山梨
エコ・リカーショップ
中込 愛美さん

関心がすぐ行動に
インターネットショップ

パルシステムのインターネット注文サービス「オンラインパルサービス」では2010年7月、フェアトレード商品の専門ショップを開設しました。「インターネットであれば、パルシステムで商品を購入するついでにショップへ訪れることができます。路面店の場合、関心はあってもわざわざ店を訪れる人は、それほど多くありません。少しでも関心を『購入』という行動に移すには、インターネットショップは有効です」と、ショップを運営するパルシステム連合会の加藤かおりさんは話します。

ショップでは2週間から4週間ごとにテーマを変え、食品や雑貨など毎回20品目程度を取り扱います。商品の生産地はバングラデシュ、ネパールといったアジアから、アフリカ、南米までさまざま。「商品の説明が一つひとつていねいにできるのは、インターネットならではの特徴です。買い物の楽しみといっしょに、フェアトレードの意義に触れていただけるとうれしいですね」(加藤さん)

商品のなかにはすぐに完売になり、「追加はないか」「ほかに取り扱っている店はないか」などの問い合わせが寄せられることも少なくありません。商品を取り扱ったフェアトレード団体からは、組合員がわざわざ店舗まで足を運んできたという連絡も入るといいます。

およそ1000点の品ぞろえ
パルシステム山梨のショップ

パルシステム山梨は2000年に店舗「エコ・リカーショップ」を開店、07年に現在地へ移転したことを機に、フェアトレードをメインとした店舗へとリニューアルしました。フェアトレード関連では現在、5団体の商品をおよそ1000点取り扱っています。取り扱いは衣料品を中心に雑貨、食品などさまざま。人気商品は、フェアトレードのカカオを原料にしたチョコレート、インドでつくられた山羊革の財布やバッグ、チリの楽器など、バラエティに富んでいます。

スタッフのみなさん

店舗

「大学生や学校の先生が勉強も兼ねて訪れる機会が増えています。先日は自由研究で組合員のお子さんが来店しました」と、エコ・リカーショップ担当の中込愛美さんは話します。

店舗のよさは、実際に商品に触れられること、そして店員との会話によるコミュニケーションです。「明るい性格の店員にめぐまれているので、和気あいあいとした雰囲気です。来店者すべてがフェアトレードに関心を持っているわけではないですが、商品説明や試食での会話の中で商品の背景を知り、フェアトレードへの関心を深めていくケースもあります」(中込さん)。

店内に並ぶ商品は、すべて手作りなので、まったく同じものはありません。ほかにない1点ものとして、プレゼント用に購入される方もいるそうです。また試食では、お母さんといっしょに来た子どもがばくばく食べてしまったことも。「でも、それはフェアトレードという考え方だけでなく商品のよさが伝わったということです。子どもは正直ですから」と中込さんは笑います。

ヤギ革のブックカバー

ペルーの民族楽器

人気商品『カレーの壺』

1針1針すべて手縫いで作られたバングラデシュのタペストリー「生命の木」

運動の発展はこれからです

パルシステム山梨の独自チラシでは、モノクロ印刷にもかかわらず見込みの3倍もの注文が殺到したこともありました。「そのときは調達が間に合わずご迷惑をかけましたが、反面、組合員の力も感じました」と中込さん。連合会の加藤さんも「組合員からの問い合わせ内容を見ると、ほかの商品とは違う重みを感じます。責任は重大です」と話します。

フェアトレードに取り組む団体は、その歴史も浅いことから規模もまだ小さいところがほとんど。それに対しパルシステムは、全体で120万世帯の組合員がおり、フェアトレードの意義を感じる人も数多く存在します。そのため、かなりの割合がパルシステムからの注文を占めるという団体もあります。近年、フェアトレードが各種メディアに登場することもありますが、加藤さん、中込さんとも「ただのブームでは終わらせたくない」と口をそろえます。

「組合員へ情報を伝えるためにも、勉強する必要を感じています。そうしなければ、フェアトレードの理解を社会へ広めることはできませんから」(中込さん)。

カンパは復興などへの支援としては有効ですが、一過性になりがちです。それに対しフェアトレードは、地域が生産に取り組み、経済的に自立した構造をつくることができます。しかし、ある調査では、フェアトレードの認知度は3%に満たないとの結果も出ています。歴史の浅い日本のフェアトレード、その運動を発展させるためにも、パルシステムの役割はさらに高まりそうです。

 

真っ黒で届いたバナナ いまでは人気商品に

パルシステムにおけるフェアトレードの活動で象徴的な商品といえば、まず、バナナが挙げられます。

フィリピン・ネグロス島で収穫された農薬不使用のバランゴンバナナが初めてパルシステムの組合員に届けられたのは、1988年。当時、さとうきびのプランテーション農業で「砂糖の島」とまで呼ばれたネグロス島は、国際価格の大暴落で地主が栽培を放棄し、大量の失業者を生み出しました。彼らを支援しようと全国の生協で協力して始めたのが、現地の人々があまり食べなかったバランゴンバナナの輸入です。

しかし、ネグロス島の生産者も輸入する生協職員、組合員もすべてが素人による出発。適正なバナナの収穫時期もわからず流通もままならなかったため、最初に届いたバナナは真っ黒で食べられるものではなかったそうです。それでも、輸入に関わった組合員はそのバナナを手にして涙したといいます。それから20年以上が経過し、産直バナナはパルシステムを代表する人気商品となりました。

*本ページの内容は2010年11月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。