もっといい明日へ 第1回「超えトーク」 世界的食料危機と日本の食の未来

2022年5月9日

パルシステム連合会は4月7日(木)、東京・東新宿本部で、第1回超えトーク「食料事情学習会」を開催。この間の商品値上げの背景や要因、何が起こっているのかなど理解を深めました。

パルシステムでは4月より、これまでの取り組みを進化させた「もっといい明日へ超えてく」を始動。パルシステムの2030年ビジョンの達成に向け、一人ひとりの行動で未来が楽しみになる新たなサステナブルアクションに取り組みます。

今回は㈱資源・食糧問題研究所の柴田明夫さんに、世界同時多発的な食料危機のなかで日本の食の安全・安心をどう確保するかについて語っていただき、組合員や役職員など約360名が参加しました。

司会の西村陽子さん(パルシステム東京常任理事)

開会にあたりパルシステム連合会商品委員会・樋口民子委員長(パルシステム埼玉理事長)は「この間、商品の値上げが続き、暮らしに影響が出てきていますが、値上げの背景、消費者にできることなど理解を深めていきたい」とあいさつしました。

メーカーだけに負担でなく、適正価格を追求

パルシステムは2月にカタログで原料高騰による価格改定のお知らせを行いました。商品開発本部副本部長の野津秀男はその理由について「小麦、油脂、原油、水産資源など原価高騰が要因ですが、背景には世界的な価格高騰がある」と言います。「パルシステムは作る人と食べる人がお互いに理解し合い、生産を維持できる価格が適正価格と考えています。メーカーだけの負担にせず、適正価格を追求していきたい」と語りました。

次元を超えた 世界同時多発的食料危機の連鎖

小麦の日本での価格高騰について柴田さんは、一過性ではなく、コロナ、砂漠とびバッタ発生、欧州やアメリカの干ばつ、洪水など天変地異の状況が相互に影響し合う複合的な危機だと話し、ウクライナ侵攻は追い打ちをかけたと説明。中国や中東、北アフリカ地域などの急速な人口増加や中国の食料不足に備えた食料確保戦略、世界の食肉需要が食生活の変化で1960年に比べ約6倍となり、飼料用穀物としての需要が増えたことも要因だと説明しました。また特定のもうかる作物の作付けが進み、それにより土壌の劣化や環境耐性が減り、対応のため農薬、遺伝子組換えが助長されていくことにも懸念を示しました。「肉1キロ生産に7倍の穀物が必要で、中国は膨大なトウモロコシを輸入するようになっています。また燃料としても穀物需要が拡大しており、危機を感じます」。

㈱資源・食糧問題研究所の柴田明夫さん

人のいのちも食も 農に支えられる

「日本はグローバリゼーションのもとで農業の外部化を進め、自給率37%、カロリーの6割以上が海外依存という構図です」(柴田さん)。柴田さんは、国内の農業基盤の強化に向けた改革、食料の安定供給をいかに確保するかが急務になっていると指摘します。「本来日本の農業は複合経営で、地域ごとに稲作や青果、畜産を行い、地域の産業や社会が回っていた。自然の力を最大限発揮、持続させ、地域の中小零細農家、山間地の条件が不利な農家も農地をフル活用し生産能力を拡大する、こういう方向に切り替えていくべき」と強調し、「食物は地域限定的な資源。原則は地産地消かなとつくづく思う」と付け加えました。

組合員からの「食料自給率をあげるには」という質問に柴田さんは、「農業の生産基盤を強化し国内生産を増やすことが重要ですが、利用がなければ担い手は育たない。ここは消費者も一役加わり、適正価格とは何かや値上がりの背景などを学んで国産のものをしっかりと買い支えていただく、そういう運動が必要なのではと思います」と答え、多くの組合員が共感していました。

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