「ほんもの実感!」連続講座 地域の伝統産業・食品を守ろう

2021年12月7日

パルシステム連合会は11月4日(木)、東京・東新宿本部で、第4回「ほんもの実感!」くらしづくりアクション連続講座―「地域の伝統産業・食品を守る」をオンライン開催しました。八丁味噌とGI問題から伝統産業や食品を守る意味について考えを深めました。パルシステムでは「私たちの“選ぶ”が社会を変える力に」と「ほんもの実感!」くらしづくりアクションに取り組み、手間と思いをかけ、文化や技の継承・発展をめざす国産のものづくりを応援しています。

2015年、農林水産省は生産業者の利益と地域ブランド保護を目的とする「地理的表示(GI:Geographical Indication)保護制度」を導入しましたが、登録製品の問題を指摘した「八丁味噌」の老舗がその名称を名乗れなくなる事態が起こっています。パルシステムはカタログやホームページなどでこの問題について発信し、組合員から多くの反響がありました。

今回、取引先でもある本場の本物ブランド推進機構の二瓶徹さん、まるや八丁味噌の石原友保さんを迎え地域の伝統食品の実態やGIと八丁味噌問題について学び、組合員や役職員など約130名が参加しました。

GIと私たちの食のあり方

開会にあたりパルシステム連合会商品委員会・樋口民子委員長(パルシステム埼玉理事長)は「効率や合理化、競争の追求はコロナ禍で課題が露見しました。くらしを本気で見つめ直す機会です。地域や環境、人に配慮しものをつくり、それを選び、大切に使うことは『ほんもの実感!』そのもの。GI問題も私たちの食のあり方の課題としてとらえていただけたら」とあいさつしました。

GIと八丁味噌の問題を広報した記事(2020年2月3回商品カタログにて)

ブランドを守りつつ、互いを高める認証制度を

二瓶さんは「ヨーロッパのGIにはトップブランドと少し基準の緩いセカンドブランドがあります。しかし日本ではひとつのブランドしか認めず、そこが課題」だと指摘します。「八丁味噌でいえば、江戸時代から製造地や製法などが継承されている本場の味噌と、それと異なる製法により愛知県全域で製造されている味噌が同じ八丁味噌と括られることで、今回後者が認証され、その他は認められないという問題を発生させました。ヨーロッパ同様にすることで解決が可能ではないかと考えています」。また、パルシステムの産直の3つのブランド(コア・フード、エコチャレンジ、それ以外)についても評価し、「トップとそれ以外との共存でブランドを守り、さらに互いを高めていくことができるのでは」と話しました。

二瓶さん(上段)と石原さん。「先人や使う人、ふるさとの人たちの思い、また岡崎の文化のバトンを繋ぐため主張を続けます。引き続き応援をお願いします」(石原さん)

伝統食品は使う人の思いもつなぐ

二瓶さんはさらに、「GIでぶれていけないのは製造地域や原材料、伝統製法、歴史的伝統性、生産者、作り手の哲学や思い、それらの価値をしっかり明確にしておくこと」と強調。組合員からは「発祥の本場のメーカーが八丁味噌を名乗れないだけでなく、消費者も本物の味を知ることができなくなることはすごく悲しいので応援しています」の声が上がりました。

組合員との意見交換。「さまざまな料理で食べ続けて守っていきたいと思う」と組合員から。

石原さんも、「八丁味噌は岡崎で約350年育まれてきました。私たちが携わる期間はわずかだが、先人の思いや文化、そして使う人、ふるさとの人たちの思いも繋ぐのが使命だと思っています。バトンが渡せず、岡崎に文化が途絶えれば大変苦しい。商工会議所、市役所など岡崎市全体で意義申し立てし、法の場で再考してもらうよう現在提訴しています」。署名活動はパルシステム組合員も協力し、9月時点で9万6千筆以上に。「消費者の応援はほんとうに心強い」と感謝が述べられました。

このままでは「八丁味噌」を名乗れなくなる!? 地理的表示(GI)は、地域の伝統食を守れるのか?|生協パルシステムの情報メディアKOKOCARA

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